眠れる石像の献身

音羽夏生

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石像、目覚める

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「感じてるんですね、可愛い……」
「やだっ、離せ、バーティー!」

 文字通り弱みを握られ、怒りを込めてアーネストが拒絶を叫ぶ。
 どこか弱々しい声になってしまったが、──望みは聞き届けられた。
 再び自らの意志に反して、ふわっと体が浮いたかと思うと、大人の体が一瞬で縮まる。見慣れた子供の手足──塞がれていた気の流れが元に戻ったのだ。
 ほっとしたのも束の間、アーネストの体はするすると宙を滑り、誰かの腕に抱き上げられていた。

「失礼、ギルバート。火急のこと、前触れもなく訪問する無礼を許してください」

 空間を破る歪みも生じさせず、その場に現れる魔力を持つ者など、魔法界広しといえども片手の指が余るほどしかいない。
 その一人である旧友の顔を、アーネストは抱き上げられた腕から見下ろした。悪趣味な弟子から逃れられたことを確信し、危うい状況から救ってくれた恩人の首に抱きつく。

「ありがとう。助かったよ、月読。百年ぶりだね」
「確かに私には百年ぶりの再会ですが、アーニーには一瞬だったでしょう」

 長い年月を経て、呼ぶ者が二人だけになってしまった名でアーネストを呼ぶ、耳に心地良い声。
 あやしく絡み合う師弟の姿を目撃しただろうに、その声音に動揺は見られない。
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