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10章 ※
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不意に目の前に迫った一洋の顔と、唇に感じる熱。驚きのあまり、されるがままで何もできず目の前の幼馴染を見つめるだけの志貴に、一洋は我に帰ったように唇を離した。そして後悔をにじませながら目を逸らすと、呟いたのだ。ただ一言、「ごめん」と。
その時、志貴は気がついた。一洋が口づけたかったのは、自分ではなく、同じ顔をした彼の憧れの人だということに。
その証拠に、一洋は二度と、想い人にするように志貴に触れようとはしなかった。過保護な甘やかしは変わらず続いたが、それは衛藤家の家芸のようなもので、身体的接触が多いのもいつまでも子供扱いしてくるのも、一洋だけではない。
志貴も、その春の日の一瞬の出来事を、蒸し返すことも誤解することもなかった。
スマートな海軍の士官候補生は、女学生の憧れの的だ。兵学校の休みで帰省する一洋は、外で見掛ける時は大抵女性を連れていた。エリートな上に色男で、近隣の若い女性に大変な人気があったのだ。顔が同じだからといって、男の幼馴染を相手にしなくても、叶わぬ想いを密かにぶつける相手に不自由することはなかったのだろう。
だから未熟な少年なりに、一洋は親元を離れる兵学校での新生活を前に気の迷いが生じたのだろう、と納得したのだ。それをぶつけられた自分は災難だったが、よく知る幼馴染の、まったく知らずにいた一面を垣間見て、深く暗い洞窟を覗き込んだような胸のざわめきを感じていた。
それがその夜、志貴にもたらしたものは――。
『薬』を処方されるようになってからは、欲望を曝し乱れることを強いられるたびに、感じていた。志貴の痴態を射抜く眼差しに込められた愉悦と、昏い情熱――彼の初恋は今も鮮やかに燃え続けており、意固地な年下の幼馴染の肉体からの救済は、叶わぬ想いの捌け口にもなっていることを。
そうと知りつつ、それでもひとときの安らぎになるのならと、この歪な関係を受け入れてきたが、彼の想いは志貴の想像を超えて生々しく、欲望を伴ったものだったのだ。母をその対象とされ、また身代わりにされた息子として糾弾してもいい立場なのに、そうしないのは、完璧な保護者を演じる幼馴染の、制御できない人としての弱さと欲を垣間見たからだ。
想う女の代わりにされ、その劣情を目の当たりにすることで、ただ守られるだけの存在だった自分が、一洋と対等になっている――その弱さを受けとめる存在になっている。そう思うと、身代わりという被虐的な立場に心が竦んでも、体は昂ってしまうのだ。
「いつもより感じてるな……。ワセリンよりいいか? 俺の精液は」
背後から聞こえる一洋の声も熱を帯びているように感じたが、気のせいかもしれない。
ぬちゅ、くちゅ、と深いところまで濡らされ、捏ねられる音が耳を打つ。体内を行き来する指は何度も尻に滴る白濁を掬い、中に塗り足し潤わせる。粘膜に染み込ませるように、男の精が擦り付けられていく。
その時、志貴は気がついた。一洋が口づけたかったのは、自分ではなく、同じ顔をした彼の憧れの人だということに。
その証拠に、一洋は二度と、想い人にするように志貴に触れようとはしなかった。過保護な甘やかしは変わらず続いたが、それは衛藤家の家芸のようなもので、身体的接触が多いのもいつまでも子供扱いしてくるのも、一洋だけではない。
志貴も、その春の日の一瞬の出来事を、蒸し返すことも誤解することもなかった。
スマートな海軍の士官候補生は、女学生の憧れの的だ。兵学校の休みで帰省する一洋は、外で見掛ける時は大抵女性を連れていた。エリートな上に色男で、近隣の若い女性に大変な人気があったのだ。顔が同じだからといって、男の幼馴染を相手にしなくても、叶わぬ想いを密かにぶつける相手に不自由することはなかったのだろう。
だから未熟な少年なりに、一洋は親元を離れる兵学校での新生活を前に気の迷いが生じたのだろう、と納得したのだ。それをぶつけられた自分は災難だったが、よく知る幼馴染の、まったく知らずにいた一面を垣間見て、深く暗い洞窟を覗き込んだような胸のざわめきを感じていた。
それがその夜、志貴にもたらしたものは――。
『薬』を処方されるようになってからは、欲望を曝し乱れることを強いられるたびに、感じていた。志貴の痴態を射抜く眼差しに込められた愉悦と、昏い情熱――彼の初恋は今も鮮やかに燃え続けており、意固地な年下の幼馴染の肉体からの救済は、叶わぬ想いの捌け口にもなっていることを。
そうと知りつつ、それでもひとときの安らぎになるのならと、この歪な関係を受け入れてきたが、彼の想いは志貴の想像を超えて生々しく、欲望を伴ったものだったのだ。母をその対象とされ、また身代わりにされた息子として糾弾してもいい立場なのに、そうしないのは、完璧な保護者を演じる幼馴染の、制御できない人としての弱さと欲を垣間見たからだ。
想う女の代わりにされ、その劣情を目の当たりにすることで、ただ守られるだけの存在だった自分が、一洋と対等になっている――その弱さを受けとめる存在になっている。そう思うと、身代わりという被虐的な立場に心が竦んでも、体は昂ってしまうのだ。
「いつもより感じてるな……。ワセリンよりいいか? 俺の精液は」
背後から聞こえる一洋の声も熱を帯びているように感じたが、気のせいかもしれない。
ぬちゅ、くちゅ、と深いところまで濡らされ、捏ねられる音が耳を打つ。体内を行き来する指は何度も尻に滴る白濁を掬い、中に塗り足し潤わせる。粘膜に染み込ませるように、男の精が擦り付けられていく。
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