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10章 ※
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しかし、動揺する志貴を待ち受けていたのは、さらに想像もできない事態だった。
――ぬる
(えっ……)
「さすがに、これだけでは達かなかったようだな。次はお前が悦くなる番だ」
そう言いながらうつ伏せの腰を掲げさせ、一洋の指がひくつく後孔を押し開いたのだ。
慎重に潜り込んだ指の動きを助ける液体は、ぬめりがあり生温い。いつも使われる潤滑剤とはまるで異なる感触に、中の粘膜が戸惑うように男の指にすがりつく。
――ぬるっ、ぬるっ
(まさか、もしかして)
一洋は射精後もベッドを降りることなく、志貴の中を暴く行為を続けている。そもそも潤滑剤を取りに行っていないのだ。
――ぬる、ぬるぅっ
「あ、ぅあっ」
ぬめりに助けられた指が中まで勢いよく滑り込み、感じる場所を押し上げる。強い刺激に、堪らず声が上がった。
「――あっ! あぁ……んうっ、は、あぁうっ――……」
いつものように、『薬』の処方が始まる。
ただ、いつもと違うのは、滑らかな指の動きを助けているのが、たっぷりと塗り込まれた一洋の精液だということだ。
一月の間ほったらかしにされていた体は、うずうずとさらなる刺激を求めていた。会陰を通して前立腺を刺激され続け、すっかり熟れてしまったのだ。再度の解放を求め、男の指を拒むどころか、歓喜して受け入れている。
その従順さを愛でるように、一洋の手は、時間をかけて懇ろに中を拓いていく。傷つけないように、痛みを与えないように、志貴の尻に滴る自らの精を掬っては、穴を緩め、奥に届かせるように塗り込める。
男の精を、体内に受け入れる。
それは、歪な生殖行動なのではないか。――擬似受精ではないのか。
そう思った途端、強い嫌悪に、血が引くように頭の芯が冷めていった。それなのに、ぞくりと背筋がざわめき、何故か体は熱くなっていく。身代わりにされているのに、穴の中で蠢く指に粘膜が絡みつくのがわかる。
男の秘めた想いに志貴の体が呼応し、――興奮しているのだ。
(そんなに、好きなの……)
志貴と同じ顔とよく似た気性を持つあの人を――初恋の人を。
『薬』の処方を受け入れた時から、懇願しても快楽から逃れることを許さない怖い男の目が、志貴の痴態を通して誰を見ているのか、わかっていた。あの狂おしい視線の先には、寡婦となっても決して手の届かない、美しく誇り高い女性がいる。
(今も好きなの……母さんを)
十四になる直前の春、海軍兵学校に入る直前の一洋に、桜の下で唇を奪われた。
幼馴染の立派な旅立ちを誇りに思いながらも、大好きな兄としばらく会えなくなる寂しさに、志貴はつい目を潤ませていた。普段は弱みを見せない弟分が見せた涙に、くしゃっと慰めるように髪を梳き上げた一洋は、その手をうなじに滑らせ抱き寄せると、唇を押し付けてきたのだ。
――ぬる
(えっ……)
「さすがに、これだけでは達かなかったようだな。次はお前が悦くなる番だ」
そう言いながらうつ伏せの腰を掲げさせ、一洋の指がひくつく後孔を押し開いたのだ。
慎重に潜り込んだ指の動きを助ける液体は、ぬめりがあり生温い。いつも使われる潤滑剤とはまるで異なる感触に、中の粘膜が戸惑うように男の指にすがりつく。
――ぬるっ、ぬるっ
(まさか、もしかして)
一洋は射精後もベッドを降りることなく、志貴の中を暴く行為を続けている。そもそも潤滑剤を取りに行っていないのだ。
――ぬる、ぬるぅっ
「あ、ぅあっ」
ぬめりに助けられた指が中まで勢いよく滑り込み、感じる場所を押し上げる。強い刺激に、堪らず声が上がった。
「――あっ! あぁ……んうっ、は、あぁうっ――……」
いつものように、『薬』の処方が始まる。
ただ、いつもと違うのは、滑らかな指の動きを助けているのが、たっぷりと塗り込まれた一洋の精液だということだ。
一月の間ほったらかしにされていた体は、うずうずとさらなる刺激を求めていた。会陰を通して前立腺を刺激され続け、すっかり熟れてしまったのだ。再度の解放を求め、男の指を拒むどころか、歓喜して受け入れている。
その従順さを愛でるように、一洋の手は、時間をかけて懇ろに中を拓いていく。傷つけないように、痛みを与えないように、志貴の尻に滴る自らの精を掬っては、穴を緩め、奥に届かせるように塗り込める。
男の精を、体内に受け入れる。
それは、歪な生殖行動なのではないか。――擬似受精ではないのか。
そう思った途端、強い嫌悪に、血が引くように頭の芯が冷めていった。それなのに、ぞくりと背筋がざわめき、何故か体は熱くなっていく。身代わりにされているのに、穴の中で蠢く指に粘膜が絡みつくのがわかる。
男の秘めた想いに志貴の体が呼応し、――興奮しているのだ。
(そんなに、好きなの……)
志貴と同じ顔とよく似た気性を持つあの人を――初恋の人を。
『薬』の処方を受け入れた時から、懇願しても快楽から逃れることを許さない怖い男の目が、志貴の痴態を通して誰を見ているのか、わかっていた。あの狂おしい視線の先には、寡婦となっても決して手の届かない、美しく誇り高い女性がいる。
(今も好きなの……母さんを)
十四になる直前の春、海軍兵学校に入る直前の一洋に、桜の下で唇を奪われた。
幼馴染の立派な旅立ちを誇りに思いながらも、大好きな兄としばらく会えなくなる寂しさに、志貴はつい目を潤ませていた。普段は弱みを見せない弟分が見せた涙に、くしゃっと慰めるように髪を梳き上げた一洋は、その手をうなじに滑らせ抱き寄せると、唇を押し付けてきたのだ。
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