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第67話 奈都 4(2)
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* * *
「要点をまとめると、奈都は私のことを、アイドル的に好きなんじゃないかって」
「まとめすぎて意味を理解できない。チサがアイドル級に可愛いのは確かだけど」
「見てるだけで満足っていうか、むしろ見てる以上のことは求めてない的な」
だから奈都は自分から誘って来ないし、他の友達とばかり遊んでいる。そう結論付けると、奈都は私の胸を揉みながらうっとりと微笑んだ。
「ずっとこうしていたい」
「これは私の想定する遊びと違う。アイドル的な好きの延長でしょ」
「意味の解釈が難しい」
「容姿や体が好きなだけ。奈都、私の人間性にはあんまり興味ないでしょ」
言葉にすると思ったよりきつい響きになってしまったが、奈都は気を悪くした様子もなく、「そんなことはない」と静かに否定した。
「私はチサの隅から隅まで愛してる」
「そうかなぁ。一番好きなのは?」
「顔」
ダメだこの人。私がため息をつくと、奈都がお尻や太ももを撫でながら言った。
「先週たくさん友達と遊んだけど、今日の方が面白かったね。帰宅部はいい場所だ」
「言動の不一致」
「することが決まってないのに、先の予定は押さえないから。私も別に、三週間も前からやりたいことはないけど、それは遊びたくないわけじゃない」
つまり、私に何をするのかを求めるのと同じように、奈都ももし自分から声をかけるなら、何をするかを重視する。しかし、これと言ってやりたいことがあるわけでもないから、自分から声をかけることもない。
私よりしたくないことが多いだけで、遊べたらなんでもいいというのは、本質的には私と同じスタンスだ。それでも、特に趣味があるわけでもないが、私は遊びを考えてみんなに声をかけている。奈都はその努力をしていない。
「もしこの先友達が増えて、どんどん誘われて、全然遊べなくなったらどうするの? 断られてばっかりだったら、私も声をかけなくなるよ?」
「それは困る」
「奈都しかいなかった時とは違うし、私たちの関係も変わってきてるんだから、奈都ももうちょっと積極的に行動して」
お願いベースでそう言うと、奈都はしばらく唸ってから「わかった」と絞り出した。いかにも言いたいことがありそうだったが、わかったのならこれ以上の追及はやめておこう。
もっとも、奈都にもっと自分から動いてほしいと要求するのも、今回が初めてではない。私が全然遊べずに不満をこぼして、今みたいに奈都がもう少し頑張ると約束して、しかし何も変わらないところまでが一連の流れだ。
奈都は鼻息を荒くしてあっちこっちを揉んでいる。そういう意図ではないだろうが、マッサージの続きだと思うとそれなりに気持ちいい。
午前の疲れで眠たくなってきたので、奈都を抱きしめたまままどろんでいると、いつの間にか奈都もすぐ隣にいて大人しくなっていた。
ちらりと時計を見たら1時間くらい経っていたので、私の睡眠力も大したものだ。奈都も寝ていたのでお尻を撫で回すと、奈都はくすぐったそうに身をよじってから、目を閉じたまま口を開いた。
「さっきさぁ」
「起きてたんだ」
「チサの香りを楽しんでた」
「五感で楽しむ野坂千紗都」
自分でそう言うと、奈都はくすっと笑ってから、言いかけていた続きを口にした。
「さっき、私がチサの人間性には興味がないって言ってたけど、ちょっとひどくない?」
「えっ? 今?」
思わず体を起こすと、奈都が私を見つめて拗ねたように唇を尖らせた。
確かに言ったし、私も言い過ぎたと思ったが、さらっと流してくれたので気にしていないと思っていた。
「だって、容姿は褒めてくれるし、嬉しそうに触ってるけど、遊びには誘ってくれないし、電話もかけてこないし、むしろ私を不安がらせてる奈都こそ謝るべき」
「誰に対しても一緒だって」
「私は他の友達とは違うでしょ? 同じだって言うなら、奈都は涼夏と絢音より一段落とさざるを得ない」
均衡ここで崩れたり。私が残念だと息を吐くと、奈都が芝居がかった調子で悲鳴を上げて抱き付いてきた。
「だから、頑張って声かけるから」
「嫌々ならいいけど」
「チサを誘うこと自体がもう喜びだから」
「どうだか」
このやり取り自体は何度もしているが、ここまで踏み込んだのは初めてだ。もしかしたら、自分で思う以上に、自分から誘って来ない奈都に対して不安や不満が溜まっていたのかもしれない。
涼夏の言う通りクラスも違うし、部活にも入っている。だから、あの二人と同じようにはいかないのは承知している。
言いたいことを言ってすっきりしたので、今日のところはこの話題はこれくらいにしておこう。これ以上は堂々巡りだ。
一方的に言いまくったが、奈都は相変わらず嬉しそうに私の体を撫で回している。大丈夫なのは有り難いが、もう少し本気で考えて欲しいものだ。
今日は疲れた。そして楽しかった。これから寒くなるので、屋外での活動は減るかもしれないが、こういう運動系の遊びも取り入れていきたい。
* * *
「要点をまとめると、奈都は私のことを、アイドル的に好きなんじゃないかって」
「まとめすぎて意味を理解できない。チサがアイドル級に可愛いのは確かだけど」
「見てるだけで満足っていうか、むしろ見てる以上のことは求めてない的な」
だから奈都は自分から誘って来ないし、他の友達とばかり遊んでいる。そう結論付けると、奈都は私の胸を揉みながらうっとりと微笑んだ。
「ずっとこうしていたい」
「これは私の想定する遊びと違う。アイドル的な好きの延長でしょ」
「意味の解釈が難しい」
「容姿や体が好きなだけ。奈都、私の人間性にはあんまり興味ないでしょ」
言葉にすると思ったよりきつい響きになってしまったが、奈都は気を悪くした様子もなく、「そんなことはない」と静かに否定した。
「私はチサの隅から隅まで愛してる」
「そうかなぁ。一番好きなのは?」
「顔」
ダメだこの人。私がため息をつくと、奈都がお尻や太ももを撫でながら言った。
「先週たくさん友達と遊んだけど、今日の方が面白かったね。帰宅部はいい場所だ」
「言動の不一致」
「することが決まってないのに、先の予定は押さえないから。私も別に、三週間も前からやりたいことはないけど、それは遊びたくないわけじゃない」
つまり、私に何をするのかを求めるのと同じように、奈都ももし自分から声をかけるなら、何をするかを重視する。しかし、これと言ってやりたいことがあるわけでもないから、自分から声をかけることもない。
私よりしたくないことが多いだけで、遊べたらなんでもいいというのは、本質的には私と同じスタンスだ。それでも、特に趣味があるわけでもないが、私は遊びを考えてみんなに声をかけている。奈都はその努力をしていない。
「もしこの先友達が増えて、どんどん誘われて、全然遊べなくなったらどうするの? 断られてばっかりだったら、私も声をかけなくなるよ?」
「それは困る」
「奈都しかいなかった時とは違うし、私たちの関係も変わってきてるんだから、奈都ももうちょっと積極的に行動して」
お願いベースでそう言うと、奈都はしばらく唸ってから「わかった」と絞り出した。いかにも言いたいことがありそうだったが、わかったのならこれ以上の追及はやめておこう。
もっとも、奈都にもっと自分から動いてほしいと要求するのも、今回が初めてではない。私が全然遊べずに不満をこぼして、今みたいに奈都がもう少し頑張ると約束して、しかし何も変わらないところまでが一連の流れだ。
奈都は鼻息を荒くしてあっちこっちを揉んでいる。そういう意図ではないだろうが、マッサージの続きだと思うとそれなりに気持ちいい。
午前の疲れで眠たくなってきたので、奈都を抱きしめたまままどろんでいると、いつの間にか奈都もすぐ隣にいて大人しくなっていた。
ちらりと時計を見たら1時間くらい経っていたので、私の睡眠力も大したものだ。奈都も寝ていたのでお尻を撫で回すと、奈都はくすぐったそうに身をよじってから、目を閉じたまま口を開いた。
「さっきさぁ」
「起きてたんだ」
「チサの香りを楽しんでた」
「五感で楽しむ野坂千紗都」
自分でそう言うと、奈都はくすっと笑ってから、言いかけていた続きを口にした。
「さっき、私がチサの人間性には興味がないって言ってたけど、ちょっとひどくない?」
「えっ? 今?」
思わず体を起こすと、奈都が私を見つめて拗ねたように唇を尖らせた。
確かに言ったし、私も言い過ぎたと思ったが、さらっと流してくれたので気にしていないと思っていた。
「だって、容姿は褒めてくれるし、嬉しそうに触ってるけど、遊びには誘ってくれないし、電話もかけてこないし、むしろ私を不安がらせてる奈都こそ謝るべき」
「誰に対しても一緒だって」
「私は他の友達とは違うでしょ? 同じだって言うなら、奈都は涼夏と絢音より一段落とさざるを得ない」
均衡ここで崩れたり。私が残念だと息を吐くと、奈都が芝居がかった調子で悲鳴を上げて抱き付いてきた。
「だから、頑張って声かけるから」
「嫌々ならいいけど」
「チサを誘うこと自体がもう喜びだから」
「どうだか」
このやり取り自体は何度もしているが、ここまで踏み込んだのは初めてだ。もしかしたら、自分で思う以上に、自分から誘って来ない奈都に対して不安や不満が溜まっていたのかもしれない。
涼夏の言う通りクラスも違うし、部活にも入っている。だから、あの二人と同じようにはいかないのは承知している。
言いたいことを言ってすっきりしたので、今日のところはこの話題はこれくらいにしておこう。これ以上は堂々巡りだ。
一方的に言いまくったが、奈都は相変わらず嬉しそうに私の体を撫で回している。大丈夫なのは有り難いが、もう少し本気で考えて欲しいものだ。
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