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番外編 TRPG 反省会
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これで今回のセッションは終わりだと絢音が告げると、涼夏が「面白かった!」と満面の笑みで声を上げた。隣で奈都も犬のように首を振る。
いや、実際に犬がそういう動きをするかはよく知らないが。
もちろん、私も大いに楽しんだ。絢音から今回の冒険の経験点をもらって、キャラクターをレベルアップさせる。精霊スキルも上げていきたいが、今回の冒険で戦士スキルの必要性を痛感したので、そっちを上げた。水の上を歩くのはしばらくお預けだ
「最後、設定を詰め込んできたね」
苦笑しながらそう言うと、絢音が「聞かれたから」と微笑んだ。
「私が頑張って作ったハークゲルトの設定が、日の目を見ずに終わるところだった」
「結局、アヤネはデラリーの娘なの?」
涼夏が何気なくそう言うと、絢音が「それはね」と目を輝かせて口を開いた。慌てて言葉を遮る。
「いや、それはセッションの中で語って。これ、キャンペーンだよね?」
単発のセッションではなく、同じキャラを成長させながら、いくつものセッションを重ねて物語を紡ぐのをキャンペーンという。せっかくレベルアップさせたし、トリノアとは仲良くなったし、「紫の森」も気になる。是非続きをプレイしたい。
作中のキャラクターはマナ使いの勘違いで済ませたとしても、プレイヤーからしたらデラリーのくだりは明らかに伏線だった。それを回収せずに物語を終わらされたらたまらない。
そう訴えると、絢音が紙をヒラヒラさせた。
「じゃあ、今から設定を一つずつ説明するね」
「違うから!」
思わず悲鳴を上げると、奈都と声がかぶった。涼夏が笑いながらお菓子に手を伸ばした。
「さらっと流したけど、エルフとの確執とか、昔のことを話したがらない村人とか、最初から不穏だったよね。今思えば」
「まあ、プレイヤーとしては、アヤネはデラリー王女の娘で、デラリーは事情があって偽名を使ってアヤネを育ててた。古くからいる村人はそれを知ってるって考えるのが妥当だよね」
私がまとめると、絢音が「すごいぞ、アヤネ」と楽しそうに拍手した。こういう絢音はとても可愛い。
「すごく影が薄いNPCになってたけど、最後に持っていったね」
奈都がアヤネのキャラクターシートを見ながら笑った。実際、セッション中はアヤネは空気だった。NPCだから仕方ない。
最後に次に繋げてきたのはさすがだと褒めると、絢音が可愛らしく肩をすくめた。
「だから、聞かれたから答えただけだって。私はあの設定をひけらかすつもりはなかった」
「最後にみんなで戦ったの、なんかすごく良かった」
奈都が声を弾ませる。絢音は「ありがとう」と言ってから、疲れたように息を吐いた。
「あの5人組、まったくシナリオにないアドリブキャラだったから、出しておいてどうしようかと思った」
「えっ? アドリブだったの?」
涼夏が驚いたように眉を上げた。私も同感だ。このシナリオは、明らかにあの5人組と張り合うように作られていた。しかし、そうではなかったらしい。確かに、5人中3人も名前がなかった。
「なんとなく、川波君と江塚君みたいなのを出して絡ませたら、よくわかんないことになった。チサトたちよりレベルの高いパーティーが物語を引っ張る形になって、私としてはかなり反省してる」
「言われてみると、猫の方から飛び出してきて、エルフに来いって言われて行って、マナ使いの方から出てきて戦って倒しただけだったね」
奈都が納得したように頷いた。振り返ればそうなのだが、プレイ中はあまり誘導されているようには感じなかった。
今後のネタバレにならない程度にGMの苦悩を聞くと、絢音は珍しく饒舌に語った。
「猫が魔物に追われてるところまではシナリオ通りだったけど、その後に出した敵が強すぎた。っていうか、スズカの眠りの魔法もチサトの攻撃魔法も失敗して、どうにもならなかった」
「あー」
そればかりはダイス運なので仕方ない。いざとなればGMはスクリーンの裏で調整できるが、プレイヤーは常にオープンダイスだ。涼夏が4を振ったのに、あれで敵がバタバタ眠ったら拍子抜けである。
結局エルフに助けられたが、そもそもあのエルフの存在自体がアドリブで、一体いつあの5人組が別の3人組に依頼をしたのかとか、細部が曖昧だった。
その辺りはプレイ中はまったく気にならなかったが、シナリオ通りのドワーフやトリノアのくだりと比較すると、確かに不自然な点が多かった。
「ぶっちゃけ、この紙に書いてある9割は、ユナとデラリーとハークゲルトの設定で、肝心なシナリオは甘かったかな。敵のデータはちゃんと作ってあったんだけど、PCと同じくらいのレベルにしたら強すぎた」
「戦闘はヒリヒリして良かったよ。絶妙のバランスだと思った」
「まあ、うん」
私の言葉に、絢音が困ったように笑った。一瞬言いかけた言葉を飲み込んだのは、次回のためだろう。たぶんスクリーンの裏で、だいぶ出目を低くしていたのだ。実際、最後のマナ使いはチートだった。
それにしても面白かった。奈都も涼夏も上機嫌でプレイを振り返っている。この反省会のトークも含めて、一つのセッションだろう。
チサトたちはしばらくチェスターに留まって、「紫の森」の散策をすることになった。もし次回のシナリオを作るとしたら、そんな毎日に事件を絡ませるのか、それとも「赤の森」での半年みたいに、次にやる時はもう「紫の森」を出ているのか。
後者ならトリノアが寂しがるだろうなぁと呟くと、奈都が「すっかり物語に入り込んでるね」と明るく笑った。小説もマンガもあまり楽しめない私にしては珍しい。
TRPGはボードゲームと併せて、休日の屋内の遊びの一つとして定番化しそうである。もっとも、GMの負荷は重々承知しているので、絢音には無理のない範囲で、また面白いシナリオを作ってもらえたらと思う。
いや、実際に犬がそういう動きをするかはよく知らないが。
もちろん、私も大いに楽しんだ。絢音から今回の冒険の経験点をもらって、キャラクターをレベルアップさせる。精霊スキルも上げていきたいが、今回の冒険で戦士スキルの必要性を痛感したので、そっちを上げた。水の上を歩くのはしばらくお預けだ
「最後、設定を詰め込んできたね」
苦笑しながらそう言うと、絢音が「聞かれたから」と微笑んだ。
「私が頑張って作ったハークゲルトの設定が、日の目を見ずに終わるところだった」
「結局、アヤネはデラリーの娘なの?」
涼夏が何気なくそう言うと、絢音が「それはね」と目を輝かせて口を開いた。慌てて言葉を遮る。
「いや、それはセッションの中で語って。これ、キャンペーンだよね?」
単発のセッションではなく、同じキャラを成長させながら、いくつものセッションを重ねて物語を紡ぐのをキャンペーンという。せっかくレベルアップさせたし、トリノアとは仲良くなったし、「紫の森」も気になる。是非続きをプレイしたい。
作中のキャラクターはマナ使いの勘違いで済ませたとしても、プレイヤーからしたらデラリーのくだりは明らかに伏線だった。それを回収せずに物語を終わらされたらたまらない。
そう訴えると、絢音が紙をヒラヒラさせた。
「じゃあ、今から設定を一つずつ説明するね」
「違うから!」
思わず悲鳴を上げると、奈都と声がかぶった。涼夏が笑いながらお菓子に手を伸ばした。
「さらっと流したけど、エルフとの確執とか、昔のことを話したがらない村人とか、最初から不穏だったよね。今思えば」
「まあ、プレイヤーとしては、アヤネはデラリー王女の娘で、デラリーは事情があって偽名を使ってアヤネを育ててた。古くからいる村人はそれを知ってるって考えるのが妥当だよね」
私がまとめると、絢音が「すごいぞ、アヤネ」と楽しそうに拍手した。こういう絢音はとても可愛い。
「すごく影が薄いNPCになってたけど、最後に持っていったね」
奈都がアヤネのキャラクターシートを見ながら笑った。実際、セッション中はアヤネは空気だった。NPCだから仕方ない。
最後に次に繋げてきたのはさすがだと褒めると、絢音が可愛らしく肩をすくめた。
「だから、聞かれたから答えただけだって。私はあの設定をひけらかすつもりはなかった」
「最後にみんなで戦ったの、なんかすごく良かった」
奈都が声を弾ませる。絢音は「ありがとう」と言ってから、疲れたように息を吐いた。
「あの5人組、まったくシナリオにないアドリブキャラだったから、出しておいてどうしようかと思った」
「えっ? アドリブだったの?」
涼夏が驚いたように眉を上げた。私も同感だ。このシナリオは、明らかにあの5人組と張り合うように作られていた。しかし、そうではなかったらしい。確かに、5人中3人も名前がなかった。
「なんとなく、川波君と江塚君みたいなのを出して絡ませたら、よくわかんないことになった。チサトたちよりレベルの高いパーティーが物語を引っ張る形になって、私としてはかなり反省してる」
「言われてみると、猫の方から飛び出してきて、エルフに来いって言われて行って、マナ使いの方から出てきて戦って倒しただけだったね」
奈都が納得したように頷いた。振り返ればそうなのだが、プレイ中はあまり誘導されているようには感じなかった。
今後のネタバレにならない程度にGMの苦悩を聞くと、絢音は珍しく饒舌に語った。
「猫が魔物に追われてるところまではシナリオ通りだったけど、その後に出した敵が強すぎた。っていうか、スズカの眠りの魔法もチサトの攻撃魔法も失敗して、どうにもならなかった」
「あー」
そればかりはダイス運なので仕方ない。いざとなればGMはスクリーンの裏で調整できるが、プレイヤーは常にオープンダイスだ。涼夏が4を振ったのに、あれで敵がバタバタ眠ったら拍子抜けである。
結局エルフに助けられたが、そもそもあのエルフの存在自体がアドリブで、一体いつあの5人組が別の3人組に依頼をしたのかとか、細部が曖昧だった。
その辺りはプレイ中はまったく気にならなかったが、シナリオ通りのドワーフやトリノアのくだりと比較すると、確かに不自然な点が多かった。
「ぶっちゃけ、この紙に書いてある9割は、ユナとデラリーとハークゲルトの設定で、肝心なシナリオは甘かったかな。敵のデータはちゃんと作ってあったんだけど、PCと同じくらいのレベルにしたら強すぎた」
「戦闘はヒリヒリして良かったよ。絶妙のバランスだと思った」
「まあ、うん」
私の言葉に、絢音が困ったように笑った。一瞬言いかけた言葉を飲み込んだのは、次回のためだろう。たぶんスクリーンの裏で、だいぶ出目を低くしていたのだ。実際、最後のマナ使いはチートだった。
それにしても面白かった。奈都も涼夏も上機嫌でプレイを振り返っている。この反省会のトークも含めて、一つのセッションだろう。
チサトたちはしばらくチェスターに留まって、「紫の森」の散策をすることになった。もし次回のシナリオを作るとしたら、そんな毎日に事件を絡ませるのか、それとも「赤の森」での半年みたいに、次にやる時はもう「紫の森」を出ているのか。
後者ならトリノアが寂しがるだろうなぁと呟くと、奈都が「すっかり物語に入り込んでるね」と明るく笑った。小説もマンガもあまり楽しめない私にしては珍しい。
TRPGはボードゲームと併せて、休日の屋内の遊びの一つとして定番化しそうである。もっとも、GMの負荷は重々承知しているので、絢音には無理のない範囲で、また面白いシナリオを作ってもらえたらと思う。
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