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いいかげんにしろ!
しおりを挟む帰宅したフィーナを両親は温かく迎えてくれた。
書類はこちらで作成し、あちらに送る。
もろもろの手続きの書類も同封し、翌日にはオーレン家の侍従に直接持たせて届けてもらった。
これで、あちらが署名し、戻してもらう。それを教会に提出すれば終わりである。
「あっけないものね」
「そうね。でもよかったわ。早いうちにわかって」
「早いかどうかは微妙だぞ」
と母と父が言う。
「私もお父様に同意見よ。でも心配なのは使用人達ね」
「給金問題だったか?」
「ええ」
父は頭を捻った。
先代の伯爵からもそんな話は聞いていなかったらしい。
普通に伯爵家が使用人に給金も満足に払えないなどおかしいことだ。その割に使用人は多くて、教育もしっかりされていた。
全くもって不思議である。
もしや何か裏に隠していることがあるのではないか。そう考えるのは不思議ではなかった。
その翌日である。ビルドが突然尋ねてきたのは。
「先触れもなくなんですか!」
「それどころじゃない! 慰謝料ってどういうことだい!?」
それは送った手紙にしたためた、慰謝料の件についてだった。
「当然だろう、リンツハルト伯爵。家同士の取り決めを反故にしただけでなく、娘の経歴にも傷がついた。なにより娘のこころに大きな傷を与えたんだ。一般的にみて、慰謝料を請求するのは当然だ」
同席してくれた父がそういう。
熟年の貴族相手に、ビルドも強く出れないようで、言葉を詰まらせた。
「で、でも困るよ。実は彼女との結婚費用が足りなくて、それをオーレン伯爵家から借りようと思ってたんだ」
「はい!?」
さしもの父もびっくりしたらしい。変な声を漏らしていた。
「可能でしょう? オーレン家は豊富な資産があるんですから」
「そう言う問題ではない! 離婚を言い渡した身で、元妻から金をせびろうというのかね!」
「で、でも、元々は夫婦だったし、そのくらいは」
「あなたの浮気が原因で離婚するのに、その浮気相手との結婚費用を出せだなんて、普通の神経じゃ言わないわよ!」
思わずフィーナも叫んだ。
ビルドは困ったように視線を右往左往させている。
「でも……」
「大体、リンツハルト家にも資産はあるはずよ」
「無理だよ。借金がある」
――は?
「しゃ、借金だって?」
父が素っ頓狂な声を上げた。しまった。というようにビルドが口元をてで覆う。
――まって、借金?
「え、あの、聞いてないけど」
結婚した後もだが、普通結婚する前に言うだろう。
「な、なんの借金?」
「母の贅沢とか……結婚を前に、母の別荘も買ったし。父はいろんな商売に手をだしていたし。僕も色々と商売をしていたから」
――つまり家族揃って借金濡れと言うこと?
「き、君はそれを言わずに結婚して、それを言わずに結婚生活をするつもりだったのか!」
「で、ですから、そこもオーレン家と結婚することでなんとかするって父が」
「ふざけるな!!」
――ああ、もう最悪。
「お父様、もういいです。もう。ビルド。お願いよ」
「な、なに」
「もう二度と、二度と来ないでちょうだい。慰謝料も1年待って差し上げるわ。結婚なんて後にして、慰謝料返してね」
「む、無理だよ。彼女にすぐにでも結婚できるって言っちゃったし」
「私たち。もう他人よ。貴方の事情なんてしらないわ」
フィーナがそういうと同時に、父が使用人を呼んだ。屈強な使用人達によって、ビルドは屋敷の外に連行されて行った。
「なんてことだ。こんな阿呆だったとは」
項垂れる父を慰めるように背中を撫でた。
「もう仕方ないわ。それよりお父様、新しい使用人をやとってもいいかしら。使っていない別荘があるでしょう。私そこに住もうと思っていて、そこに使用人がほしいの」
「うん? ああ、構わないよ」
さすが金のある一家である。
フィーナはその答えを聞くと、筆を取った。
送り先はジョエルだ。
さて、どうなることやら。
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