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目覚めない少女たち
顔だけは最高だからね
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それより、と、目の前のパソコンをみる。
友達がなかなかできなくて悩み、毎日が悲しい気持ちは実はよくわかる。私だって、まるで友達がいなかったからだ。
私の場合理由もよくわかっているし、自分から人を遠ざけたりすることもあったから致し方ないとは思っている。それでも、友達同士で楽しそうに笑う周りの子をみると悲しくて堪らなかった。
私も普通の生活がしたい。一人でも、友達がいれば全然変わるのに。
そう悩み抜いた学生時代、今もあまりいい思い出はない。
もう二度とは戻れない青春という時間は、取り返しがつかない。
話題を変えるように、九条さんが言った。
「そういえば、先ほど昨日きた澤井さんがまた来ました」
「……え?」
昨日首吊りの証言をしてくれた澤井さん。私とは無縁のキラキラグループにいそうな可愛らしい子だが、果たして今日はなんのためにきたのだろうか。
伊藤さんがバトンタッチするように答えた。
「なんか他にも首吊りの目撃者がいたらしくて連れてきてくれたみたいだったよ!」
「ああ、そういいえば昨日もそう言ってましたね……」
「まあ、あれは僕たちに協力したかったっていうか、完全に……」
伊藤さんは無言で九条さんを見た。ハムスターみたいにポリポリポッキーを食べている彼を見て、ああと理解する。
澤井さん、九条さん目当てできたのね。まあ、昨日もそんな感じだったけど。
当の本人は私たちの視線にまるで気づいていないようで平然と言う。
「証言は今までのものと大差なかったですね、夕方にある教室の真ん中で首吊りを発見、髪の長い女生徒の後ろ姿。新しい情報はありませんでした」
「そうでしたか」
「とりあえず生徒たちがいなくなるまではしっかり休息をとりましょう。夜は長いですよ」
そう言ってペットボトルの水を飲む彼を見て、私は無言でキャリーケースの中から九条さん用の着替えを取り出す。それを差し出した。
九条さんは黙って目の前の白い服を見ている。
「はい、九条さんもどうぞ」
「私は今から寝」
「どうぞ、九条さん」
にっこり笑顔でさらにずいっと差し出した。そんな私を見て、彼は悲しそうに眉を下げて受け取る。どうして着替えを勧めるだけでそんな悲しそうなの、澤井さんにこの姿を見せてやりたい。
九条さんは諦めたように無言で立ち上がり、スタスタと出口に向かっていく。
「では少し行ってきます」
「ごゆっくり!」
満面の笑みで手を振った。そんな私を見て、やっぱり九条さんは悲しそうに教室から出て行ったのだった。
教室の扉が閉まった瞬間、隣から大きな笑い声が響く。驚いて見てみれば、伊藤さんがお腹を抱えて笑っていた。目を線にして大口開けている。
「すっごいね、完全に九条さんの扱いに慣れてるじゃん!」
「い、いや……」
「あーおもしろ。最初はどうなるかと思ってたけど、いいコンビだねえ。てゆうかもうこれ九条さんの奥さんだね」
「どちらかといえば伊藤さんの方が九条さんの妻っぽいですけど」
「やめてよ僕ノーマルなんだから」
本当に嫌そうに伊藤さんが顔をしかめたもんだから、私もつい釣られて笑ってしまった。別にそういう意味で言ったんじゃないんだけど。
伊藤さんは私の机の上の差し入れを勧めてくれる。お言葉に甘え、ペットボトルのお茶を手に取り飲んでいると、彼は懐かしそうに周りを見渡した。
「しかし学校ってやっぱり懐かしい気持ちになるね~」
「伊藤さんの学生時代って想像つきます」
「え、どんな?」
「明るくて面倒見いいクラスの人気者くん」
「ははは、全然そんなんじゃないよー」
笑顔で否定したけど、私はこの言葉は絶対鵜呑みにしないと強く思った。私の予想は間違っていない、伊藤さんは謙遜してるか自覚がないだけだ。もし伊藤さんと同じクラスだったら、私みたいなボッチにも気を遣って話しかけてくれただろうなと思う。
「伊藤さん絶対モテますよね」
「いやいや全然だよ、全然」
「そんなわけないですって」
無自覚タイプなのだろうか。だって伊藤さんがモテないわけがないのに。顔もいいし、優しくて明るくてこれ以上ないお人。
しかし本人は首を振って困ったように言った。
「いやあ付き合っても振られるの僕だったりするし」
「ええ!? なんの不満があってこんな神様を!?」
「神様って! これは自覚あるんだけど世話焼きだからね、どうも色んな人に世話を焼くのは嫌みたいだね。わかってるんだけどこれだけは中々止められなくて」
はあーとため息をつきながら彼は言う。なるほど、私は大きく納得した。
つまりはモテる要素であり振られる要素でもあるのが彼の気がききすぎるという点か。困っている人に気軽に声を掛けられるのが彼のすごいところ。でも、彼女から見ればいろんな人に優しくていろんな人に愛されてるのって不安になるのかなあ。
難しい。
「確かに私にも色々気遣ってくれますもんね……今は彼女いないんですか?」
「うんいないねー」
「でもその気遣いは最高の長所だしモテる要素ですからね、無理に変える必要ないと思いますけど!」
「ありがとう。しかし結局最初モテまくるのは九条さんだよね。
さっききた澤井さんって女子高生も目キラッキラしてたよ」
呆れたように伊藤さんが言う。伊藤さんも十分外見は整っているけど、可愛らしいという感じで、男前、といえば九条さんはやっぱり別格だからなあ。女子高生がちやほやと騒ぐのも無理はない。
私はお茶を飲みながら答える。
「まあ、第一印象はね」
「最近の女子高生はすごいね。九条さんにLINE聞いてたよ」
「ぶほっ」
喉に流れていたお茶がむせて気管に入りそうになる。私は必死に苦しさと戦いながらも、今きいた言葉の衝撃に打ちひしがれる。
完全に九条さんを狙ってきていたのはわかっていたけれど、まさかそんな具体的な行動をしてくるとは思わなかった。行動力がすごい若さって怖い!
私すら知らない九条さんの連絡先を、そうも簡単に聞くなんて。
私は慌てて聞く。
「え、それで交換してたんですか!?」
「え? いやいや、『今日携帯持ってません』とか言って流してたよ」
「あ、そうなんですか……」
前のめりになってしまっていた体勢をゆっくり戻す。心の中で安堵した。私より先に二人が連絡先を交換してしまったらどうしようかと思った。
まあ、まず高校生とそんなことには普通ならないだろうけれど、それでも若くて可愛い女の子に言い寄られるのは気分悪くないはずなのに。
友達がなかなかできなくて悩み、毎日が悲しい気持ちは実はよくわかる。私だって、まるで友達がいなかったからだ。
私の場合理由もよくわかっているし、自分から人を遠ざけたりすることもあったから致し方ないとは思っている。それでも、友達同士で楽しそうに笑う周りの子をみると悲しくて堪らなかった。
私も普通の生活がしたい。一人でも、友達がいれば全然変わるのに。
そう悩み抜いた学生時代、今もあまりいい思い出はない。
もう二度とは戻れない青春という時間は、取り返しがつかない。
話題を変えるように、九条さんが言った。
「そういえば、先ほど昨日きた澤井さんがまた来ました」
「……え?」
昨日首吊りの証言をしてくれた澤井さん。私とは無縁のキラキラグループにいそうな可愛らしい子だが、果たして今日はなんのためにきたのだろうか。
伊藤さんがバトンタッチするように答えた。
「なんか他にも首吊りの目撃者がいたらしくて連れてきてくれたみたいだったよ!」
「ああ、そういいえば昨日もそう言ってましたね……」
「まあ、あれは僕たちに協力したかったっていうか、完全に……」
伊藤さんは無言で九条さんを見た。ハムスターみたいにポリポリポッキーを食べている彼を見て、ああと理解する。
澤井さん、九条さん目当てできたのね。まあ、昨日もそんな感じだったけど。
当の本人は私たちの視線にまるで気づいていないようで平然と言う。
「証言は今までのものと大差なかったですね、夕方にある教室の真ん中で首吊りを発見、髪の長い女生徒の後ろ姿。新しい情報はありませんでした」
「そうでしたか」
「とりあえず生徒たちがいなくなるまではしっかり休息をとりましょう。夜は長いですよ」
そう言ってペットボトルの水を飲む彼を見て、私は無言でキャリーケースの中から九条さん用の着替えを取り出す。それを差し出した。
九条さんは黙って目の前の白い服を見ている。
「はい、九条さんもどうぞ」
「私は今から寝」
「どうぞ、九条さん」
にっこり笑顔でさらにずいっと差し出した。そんな私を見て、彼は悲しそうに眉を下げて受け取る。どうして着替えを勧めるだけでそんな悲しそうなの、澤井さんにこの姿を見せてやりたい。
九条さんは諦めたように無言で立ち上がり、スタスタと出口に向かっていく。
「では少し行ってきます」
「ごゆっくり!」
満面の笑みで手を振った。そんな私を見て、やっぱり九条さんは悲しそうに教室から出て行ったのだった。
教室の扉が閉まった瞬間、隣から大きな笑い声が響く。驚いて見てみれば、伊藤さんがお腹を抱えて笑っていた。目を線にして大口開けている。
「すっごいね、完全に九条さんの扱いに慣れてるじゃん!」
「い、いや……」
「あーおもしろ。最初はどうなるかと思ってたけど、いいコンビだねえ。てゆうかもうこれ九条さんの奥さんだね」
「どちらかといえば伊藤さんの方が九条さんの妻っぽいですけど」
「やめてよ僕ノーマルなんだから」
本当に嫌そうに伊藤さんが顔をしかめたもんだから、私もつい釣られて笑ってしまった。別にそういう意味で言ったんじゃないんだけど。
伊藤さんは私の机の上の差し入れを勧めてくれる。お言葉に甘え、ペットボトルのお茶を手に取り飲んでいると、彼は懐かしそうに周りを見渡した。
「しかし学校ってやっぱり懐かしい気持ちになるね~」
「伊藤さんの学生時代って想像つきます」
「え、どんな?」
「明るくて面倒見いいクラスの人気者くん」
「ははは、全然そんなんじゃないよー」
笑顔で否定したけど、私はこの言葉は絶対鵜呑みにしないと強く思った。私の予想は間違っていない、伊藤さんは謙遜してるか自覚がないだけだ。もし伊藤さんと同じクラスだったら、私みたいなボッチにも気を遣って話しかけてくれただろうなと思う。
「伊藤さん絶対モテますよね」
「いやいや全然だよ、全然」
「そんなわけないですって」
無自覚タイプなのだろうか。だって伊藤さんがモテないわけがないのに。顔もいいし、優しくて明るくてこれ以上ないお人。
しかし本人は首を振って困ったように言った。
「いやあ付き合っても振られるの僕だったりするし」
「ええ!? なんの不満があってこんな神様を!?」
「神様って! これは自覚あるんだけど世話焼きだからね、どうも色んな人に世話を焼くのは嫌みたいだね。わかってるんだけどこれだけは中々止められなくて」
はあーとため息をつきながら彼は言う。なるほど、私は大きく納得した。
つまりはモテる要素であり振られる要素でもあるのが彼の気がききすぎるという点か。困っている人に気軽に声を掛けられるのが彼のすごいところ。でも、彼女から見ればいろんな人に優しくていろんな人に愛されてるのって不安になるのかなあ。
難しい。
「確かに私にも色々気遣ってくれますもんね……今は彼女いないんですか?」
「うんいないねー」
「でもその気遣いは最高の長所だしモテる要素ですからね、無理に変える必要ないと思いますけど!」
「ありがとう。しかし結局最初モテまくるのは九条さんだよね。
さっききた澤井さんって女子高生も目キラッキラしてたよ」
呆れたように伊藤さんが言う。伊藤さんも十分外見は整っているけど、可愛らしいという感じで、男前、といえば九条さんはやっぱり別格だからなあ。女子高生がちやほやと騒ぐのも無理はない。
私はお茶を飲みながら答える。
「まあ、第一印象はね」
「最近の女子高生はすごいね。九条さんにLINE聞いてたよ」
「ぶほっ」
喉に流れていたお茶がむせて気管に入りそうになる。私は必死に苦しさと戦いながらも、今きいた言葉の衝撃に打ちひしがれる。
完全に九条さんを狙ってきていたのはわかっていたけれど、まさかそんな具体的な行動をしてくるとは思わなかった。行動力がすごい若さって怖い!
私すら知らない九条さんの連絡先を、そうも簡単に聞くなんて。
私は慌てて聞く。
「え、それで交換してたんですか!?」
「え? いやいや、『今日携帯持ってません』とか言って流してたよ」
「あ、そうなんですか……」
前のめりになってしまっていた体勢をゆっくり戻す。心の中で安堵した。私より先に二人が連絡先を交換してしまったらどうしようかと思った。
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