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目覚めない少女たち
顔
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半開きになっている目は濁って瞳孔が散大している。
重力に負けてポカンと開いている口からは、動くことのない赤い舌が垂れていた。
「あな、たは…………」
自分の口から言葉が漏れる。
すぐ目の前にあるその顔に、唖然とした。
どうして、この子が———
脳内が疑問符でいっぱいになり混乱する。
しかし次の瞬間、半開きだった瞳がカッと見開かれた。その瞳は白目をほとんど確認できない、生きてるものの瞳ではなかった。
「 ! 」
驚きで声すら上がらない。そして更に、彼女の開いていた口から声が漏れる。乾燥してヒビの入った真っ白な唇から不気味な音が響いた。
「アアア……アアアア……」
痰が喉に絡んでいるような、不快感を感じる声だった。
ついに、自分の喉から悲鳴が飛び出した。体のバランスを崩し、そのまま背後に倒れ込んでいく。机の上に乗っていたため、中々の高さから落下し背中を強く打った。
痛みに顔を歪めながらも慌てて首吊りを見上げる。だがしかし、その一瞬の間にぶら下がっていたあの子は消えていた。
「……あ。れ」
消えた?
額からじんわりと汗をかく。至近距離で見てしまったさっきの顔を思い出し身震いしながらもほっと息をついた。よかった、消えたなら……
「アアアアああああ」
耳元で、声が聞こえる。
叫び声を上げて無我夢中で立ち上がろうとする。振り返る余裕などなかった、だがしかし足がもつれてうまく立ち上がれない。
近くの机にしがみつきながら起きようとして共に倒れ込む。ガタンと派手な音が鳴り響いた。
「く、九条さ……!!」
何度も叫んだその名を呼ぶ。必死に教室から出ようと、もはや四つん這いになりながらズルズルと這いつくばっていく。立ち上がることもままならない。それでも、この教室からとりあえず出なくてはという思いだけが強く働いた。手足を不恰好に運びながら必死に出口へ向かう。
その瞬間、ぐん、と右足が引っ張られる感覚に陥った。
はっとして全身が一瞬止まる。
足首に冷たい手の感触を感じた。肉に食い込んでしまいそうなほどの強い力で、それは私の足首を強く握っている。
そして次の瞬間、握られた右足がものすごい速さで引っ張られていく。出口に向かっていたこの体は、なんのすべもなくずるずると後ろに引っ張られていく。床を滑る摩擦で、体が熱い。
「い、いやあああ!」
必死に爪を床に立てるも、それは小さな抵抗だった。
「光さん!!」
はっと目を開ける。
視界に入ってきたのは、眉を顰めた九条さんだった。彼の黒髪が垂れている。それを呆然と見上げた。
「あ、く、じょうさん……?」
唖然と呟く。私の顔を見て、彼はほっと息を吐いた。
「よかった……気を失ったままずっと起きなかったので……」
「あ、私……?」
また、入られたの??
いつかのように、九条さんに抱き抱えられている状態だと気がつく。だがいまは、すぐに起き上がる気力すら湧いてこなかった。全身ぐったりと脱力している。
「ずっと起きなかったら……どうしようかと」
苦しそうに九条さんが呟いた。その表情は苦痛で満ちていて、彼のこんな顔を見たのは初めてだった。
「大丈夫、です。私は……」
温かなその腕に支えられ、安心感に包まれる。さっき見たことを報告しなきゃ、でも、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
母に抱かれた子のように、不思議な安らぎがそこにはあった。
「九条さん、なんか……珍しく焦ってますね」
私が少し笑って言うと、彼も口角を上げた。その優しい微笑みに、つい胸がぐっとなる。
「あなたに何かあったらどうしようかと」
「何か、って」
「光さん、私は気が気でなかったですよ。狼狽える情けない自分に呆れました」
なんだか普段と違ったセリフに、私は慌てた。こんな柔らかい表情で、こんなセリフを言う人なんかじゃないのに。
「だ、大丈夫ですよ、九条さん。九条さんが狼狽えるだなんて珍しいですね……」
そんな可愛げのないことを言いながら、私は頬が緩んでいる自覚があった。まさか九条さんが、ここまで私を心配してくれるなんて、なんだか夢みたいだ。
そう言った私を、彼はさらに腕に力を込めて抱き締めた。突然のことに、私はぎょっとする。
あれ? 何、どうしたの、今どうなってるの??
「くく九条さん?」
彼の熱い手が伝わる。突然の奇行に、ただ私は唖然とするばかりだ。九条さんどうしちゃったの、入られるなんて私初めてってわけでもないのに。
少し経って九条さんがゆっくり離れる。近くで見える顔に、痛いほどに心臓が鳴り響いた。こんな近くで九条さんを見たことなんて未だかつてない。
彼は優しく微笑みながら言った。
「光さん。あなたが好きです」
「………………」
ただただ目を丸くした。息をするのも忘れ、今しがた聞こえた言葉が頭の中でこだまする。好き?
好きとは、どういう意味だったっけ?
完全に脳内が停止している私にさらに追い討ちをかける。
「ようやく気づけました。あなたがとても大事な存在だということを」
「く、九条さん……」
「私のそばをもう離れないでください」
叶うわけないと思っていたのに。
まさか、九条さんが、私を想ってくれていた??
一気に恥ずかしさと喜びが湧き上がって全身を駆け抜けた。衝撃がすごすぎて、髪の毛も逆立っているんじゃないかと思う。それくらい、私にとって予想外の告白だった。
だってまさか。信じられない。
重力に負けてポカンと開いている口からは、動くことのない赤い舌が垂れていた。
「あな、たは…………」
自分の口から言葉が漏れる。
すぐ目の前にあるその顔に、唖然とした。
どうして、この子が———
脳内が疑問符でいっぱいになり混乱する。
しかし次の瞬間、半開きだった瞳がカッと見開かれた。その瞳は白目をほとんど確認できない、生きてるものの瞳ではなかった。
「 ! 」
驚きで声すら上がらない。そして更に、彼女の開いていた口から声が漏れる。乾燥してヒビの入った真っ白な唇から不気味な音が響いた。
「アアア……アアアア……」
痰が喉に絡んでいるような、不快感を感じる声だった。
ついに、自分の喉から悲鳴が飛び出した。体のバランスを崩し、そのまま背後に倒れ込んでいく。机の上に乗っていたため、中々の高さから落下し背中を強く打った。
痛みに顔を歪めながらも慌てて首吊りを見上げる。だがしかし、その一瞬の間にぶら下がっていたあの子は消えていた。
「……あ。れ」
消えた?
額からじんわりと汗をかく。至近距離で見てしまったさっきの顔を思い出し身震いしながらもほっと息をついた。よかった、消えたなら……
「アアアアああああ」
耳元で、声が聞こえる。
叫び声を上げて無我夢中で立ち上がろうとする。振り返る余裕などなかった、だがしかし足がもつれてうまく立ち上がれない。
近くの机にしがみつきながら起きようとして共に倒れ込む。ガタンと派手な音が鳴り響いた。
「く、九条さ……!!」
何度も叫んだその名を呼ぶ。必死に教室から出ようと、もはや四つん這いになりながらズルズルと這いつくばっていく。立ち上がることもままならない。それでも、この教室からとりあえず出なくてはという思いだけが強く働いた。手足を不恰好に運びながら必死に出口へ向かう。
その瞬間、ぐん、と右足が引っ張られる感覚に陥った。
はっとして全身が一瞬止まる。
足首に冷たい手の感触を感じた。肉に食い込んでしまいそうなほどの強い力で、それは私の足首を強く握っている。
そして次の瞬間、握られた右足がものすごい速さで引っ張られていく。出口に向かっていたこの体は、なんのすべもなくずるずると後ろに引っ張られていく。床を滑る摩擦で、体が熱い。
「い、いやあああ!」
必死に爪を床に立てるも、それは小さな抵抗だった。
「光さん!!」
はっと目を開ける。
視界に入ってきたのは、眉を顰めた九条さんだった。彼の黒髪が垂れている。それを呆然と見上げた。
「あ、く、じょうさん……?」
唖然と呟く。私の顔を見て、彼はほっと息を吐いた。
「よかった……気を失ったままずっと起きなかったので……」
「あ、私……?」
また、入られたの??
いつかのように、九条さんに抱き抱えられている状態だと気がつく。だがいまは、すぐに起き上がる気力すら湧いてこなかった。全身ぐったりと脱力している。
「ずっと起きなかったら……どうしようかと」
苦しそうに九条さんが呟いた。その表情は苦痛で満ちていて、彼のこんな顔を見たのは初めてだった。
「大丈夫、です。私は……」
温かなその腕に支えられ、安心感に包まれる。さっき見たことを報告しなきゃ、でも、ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
母に抱かれた子のように、不思議な安らぎがそこにはあった。
「九条さん、なんか……珍しく焦ってますね」
私が少し笑って言うと、彼も口角を上げた。その優しい微笑みに、つい胸がぐっとなる。
「あなたに何かあったらどうしようかと」
「何か、って」
「光さん、私は気が気でなかったですよ。狼狽える情けない自分に呆れました」
なんだか普段と違ったセリフに、私は慌てた。こんな柔らかい表情で、こんなセリフを言う人なんかじゃないのに。
「だ、大丈夫ですよ、九条さん。九条さんが狼狽えるだなんて珍しいですね……」
そんな可愛げのないことを言いながら、私は頬が緩んでいる自覚があった。まさか九条さんが、ここまで私を心配してくれるなんて、なんだか夢みたいだ。
そう言った私を、彼はさらに腕に力を込めて抱き締めた。突然のことに、私はぎょっとする。
あれ? 何、どうしたの、今どうなってるの??
「くく九条さん?」
彼の熱い手が伝わる。突然の奇行に、ただ私は唖然とするばかりだ。九条さんどうしちゃったの、入られるなんて私初めてってわけでもないのに。
少し経って九条さんがゆっくり離れる。近くで見える顔に、痛いほどに心臓が鳴り響いた。こんな近くで九条さんを見たことなんて未だかつてない。
彼は優しく微笑みながら言った。
「光さん。あなたが好きです」
「………………」
ただただ目を丸くした。息をするのも忘れ、今しがた聞こえた言葉が頭の中でこだまする。好き?
好きとは、どういう意味だったっけ?
完全に脳内が停止している私にさらに追い討ちをかける。
「ようやく気づけました。あなたがとても大事な存在だということを」
「く、九条さん……」
「私のそばをもう離れないでください」
叶うわけないと思っていたのに。
まさか、九条さんが、私を想ってくれていた??
一気に恥ずかしさと喜びが湧き上がって全身を駆け抜けた。衝撃がすごすぎて、髪の毛も逆立っているんじゃないかと思う。それくらい、私にとって予想外の告白だった。
だってまさか。信じられない。
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