76 / 450
目覚めない少女たち
試してみる方法
しおりを挟む
「あの、どうしてこんなことに? 私ちっともわからないんですが……」
「正直言いますと私も初めてのパターンです。しかし同時に対応にも悩みますね。少し同業者に相談でもしてみましょうか……」
考えるように九条さんが言った。私は少し首を傾げる。
「同業者、ですか?」
「こういった仕事をしていると、同じ職種の人間と繋がりができるようになりまして」
そういえば以前、マスコミにも知り合いがいると言っていたし、同じように視える知り合いもいると言っていたっけ……。
今までたった一人であらゆる事件を解決してきた九条さんだけれど、やっぱり全て一人でというわけではないのか。
私はまだ経験も浅いし知識も不足しているから、こういう時役に立てないのが非常に悔しいと思った。いつか二人で相談しながら仕事をこなすようになってみたい。
九条さんは決めたように一つ頷くと、私を見る。
「一旦退きましょう。知人に電話してみます」
「あ、はい」
「これ以上ここにいてまた入られては大変です。何とか脱出できましたが次もうまくいくとは限りませんからね」
「す、すみません……」
私が小さくなって謝ると、九条さんはきょとんとして言った。
「謝る必要はありませんよ。ちゃんと自力で戻って来れたのですし、何よりその経験のおかげで解決へ進みそうです。あなたの目撃証言がなくては間違いなくこんなにすぐに真相に辿り着けませんでした」
「あ……」
「さて服も濡れていますしとりあえず車に移動しましょう。立ち上がれますか? それとも」
「た、立てます!」
反射的に返事をした。先ほど抱っこされてたのは嬉しくもあったけれど最高に恥ずかしかった。これほどもう少しダイエットをしておけばよかったと後悔した日はない。意識がしっかりしているときにあんな体制、耐えられる自信がない。
私は急いで立ち上がる。しかし同時に、ゆらりと体が揺れてしまう。
「光さん」
すっと、九条さんが肩をささえてくれた。ただそれだけのことなのに、肩に伝わる彼の体温に顔が熱くなってしまう。
夢で見た甘い九条さん、偽物だったけど、やっぱり嬉しかったし今思えば恥ずかしい……! 私どんな夢見ちゃってたのよ……!
赤くなった顔を隠すように俯く。そんな私に気がついていないのか、九条さんは普段のトーンで言った。
「まだふらつきますね。つかまってください」
「あ、は、はい……」
おずおずと九条さんの肩に手を伸ばしつかまる。自分よりはるかに高い位置に戸惑いながら、倒れ込まないように必死に足に力を入れた。
たったこれだけ触れただけで真っ赤になってしまう。夢にまで見てしまう。
ああ、嫌だな。こんなはずじゃなかったのに。
車に戻った九条さんは、エンジンをかけ暖房を入れ、私が助手席に座ったのを確認すると、自分は車外ですぐに携帯を取り出して電話をかけ出した。思えばかなり遅い時間帯だというのに、彼はお構いなしに電話して悪びれる様子もなく話し出した。
相手の方ごめんなさい、と代わりに謝っておきながら、ガラス越しにその横顔を見る。
……やっぱり携帯、買おうかなあ。
恐らくほとんど鳴ることがない時計と化してしまうだろうけど、それでも仕事をしてる上で九条さんに電話したり、メッセージを送ったりできるかもしれない。それに普通に考えて、体調崩したりして伊藤さんに休みの連絡したい時とか困るじゃないか。
まだまだ生活に十分な余裕があるとはいえないんだけれど……古い型にして、一番安いプランならそこまで負担にはならないかも。
この調査が終わったら携帯ショップに行ってみよう。私はそう心に決めた。
しばらく話し続けた九条さんは、ようやく通話を終えたらしい。携帯をポケットにしまい、運転席へと戻ってくる。中に入り車のドアを閉めると、ふうと息をつく。
「どうでした?」
彼に尋ねると、腕を組んでどこかを眺めながら言う。
「やはり非常に珍しいパターンだとは言われました。とりあえず私たちにできそうな事を試してみます」
「何をすんですか?」
恐る恐る彼に尋ねる。九条さんはキッパリと言った。
「自殺を阻止します」
「正直言いますと私も初めてのパターンです。しかし同時に対応にも悩みますね。少し同業者に相談でもしてみましょうか……」
考えるように九条さんが言った。私は少し首を傾げる。
「同業者、ですか?」
「こういった仕事をしていると、同じ職種の人間と繋がりができるようになりまして」
そういえば以前、マスコミにも知り合いがいると言っていたし、同じように視える知り合いもいると言っていたっけ……。
今までたった一人であらゆる事件を解決してきた九条さんだけれど、やっぱり全て一人でというわけではないのか。
私はまだ経験も浅いし知識も不足しているから、こういう時役に立てないのが非常に悔しいと思った。いつか二人で相談しながら仕事をこなすようになってみたい。
九条さんは決めたように一つ頷くと、私を見る。
「一旦退きましょう。知人に電話してみます」
「あ、はい」
「これ以上ここにいてまた入られては大変です。何とか脱出できましたが次もうまくいくとは限りませんからね」
「す、すみません……」
私が小さくなって謝ると、九条さんはきょとんとして言った。
「謝る必要はありませんよ。ちゃんと自力で戻って来れたのですし、何よりその経験のおかげで解決へ進みそうです。あなたの目撃証言がなくては間違いなくこんなにすぐに真相に辿り着けませんでした」
「あ……」
「さて服も濡れていますしとりあえず車に移動しましょう。立ち上がれますか? それとも」
「た、立てます!」
反射的に返事をした。先ほど抱っこされてたのは嬉しくもあったけれど最高に恥ずかしかった。これほどもう少しダイエットをしておけばよかったと後悔した日はない。意識がしっかりしているときにあんな体制、耐えられる自信がない。
私は急いで立ち上がる。しかし同時に、ゆらりと体が揺れてしまう。
「光さん」
すっと、九条さんが肩をささえてくれた。ただそれだけのことなのに、肩に伝わる彼の体温に顔が熱くなってしまう。
夢で見た甘い九条さん、偽物だったけど、やっぱり嬉しかったし今思えば恥ずかしい……! 私どんな夢見ちゃってたのよ……!
赤くなった顔を隠すように俯く。そんな私に気がついていないのか、九条さんは普段のトーンで言った。
「まだふらつきますね。つかまってください」
「あ、は、はい……」
おずおずと九条さんの肩に手を伸ばしつかまる。自分よりはるかに高い位置に戸惑いながら、倒れ込まないように必死に足に力を入れた。
たったこれだけ触れただけで真っ赤になってしまう。夢にまで見てしまう。
ああ、嫌だな。こんなはずじゃなかったのに。
車に戻った九条さんは、エンジンをかけ暖房を入れ、私が助手席に座ったのを確認すると、自分は車外ですぐに携帯を取り出して電話をかけ出した。思えばかなり遅い時間帯だというのに、彼はお構いなしに電話して悪びれる様子もなく話し出した。
相手の方ごめんなさい、と代わりに謝っておきながら、ガラス越しにその横顔を見る。
……やっぱり携帯、買おうかなあ。
恐らくほとんど鳴ることがない時計と化してしまうだろうけど、それでも仕事をしてる上で九条さんに電話したり、メッセージを送ったりできるかもしれない。それに普通に考えて、体調崩したりして伊藤さんに休みの連絡したい時とか困るじゃないか。
まだまだ生活に十分な余裕があるとはいえないんだけれど……古い型にして、一番安いプランならそこまで負担にはならないかも。
この調査が終わったら携帯ショップに行ってみよう。私はそう心に決めた。
しばらく話し続けた九条さんは、ようやく通話を終えたらしい。携帯をポケットにしまい、運転席へと戻ってくる。中に入り車のドアを閉めると、ふうと息をつく。
「どうでした?」
彼に尋ねると、腕を組んでどこかを眺めながら言う。
「やはり非常に珍しいパターンだとは言われました。とりあえず私たちにできそうな事を試してみます」
「何をすんですか?」
恐る恐る彼に尋ねる。九条さんはキッパリと言った。
「自殺を阻止します」
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。