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憧れの人
愚かな人
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「麗香」
そう九条さんが声をかけると、ずっと背筋を伸ばして立っていた麗香さんは、ふらふらとしながら近くのソファに倒れ込んだ。伊藤さんが慌てて駆け寄る。
「朝比奈さん!」
「ああ、もう、ちょっと寝込んでただけで体力ガタ落ち。ヘロヘロよ、もう」
私も慌てて立ち上がり、麗香さんの側へ寄った。改めて見てみれば、着ているものは病衣。メイクもしておらず、病院で会ったままの麗香さんだったのだ。
「麗香さん! あ、ありがとうございました、でもどうしてここに?」
私が疑問をぶつけると、ううんと唸りながら上半身を起こす。眉を顰めて言った。
「ねえ、なんか飲み物ちょうだい。お腹も空いてるけど普通のもの食べたら吐きそう」
伊藤さんが慌てて仮眠室から水を取ってきた。麗香さんはそれをゆっくり飲むと、一息ついてから言った。
「抜け出してきたの、病院」
「ひ……ひええ! 何してるんですか麗香さん!」
今頃病院では大騒ぎになっているんじゃないだろうか。すかさず伊藤さんがスマホを取り出し、どこかへ電話を掛け出す。多分、病院に麗香さんの所在を報告しているんだろう、仕事が早い人だ。
麗香さんはため息をついて言った。
「私、現実では眠ってたけどずっと見てたのよ、あなたたちの流れ」
「え、そんなことあるんですか?」
「なかなか目が開かなかったけど、少し前にようやく体が動いて」
さすがは一流除霊師、とんでもないことができるもんだ。一体どんなふうに見えていたというのだろうか。
麗香さんはゆっくりと視線を下ろす。未だ気を失ったままの影山さんをみて、小さくつぶやいた。
「愚かな人ね……」
九条さんが尋ねる。
「影山さんのこと、いつ気付いた?」
「正直、初めて向かい合った時、なんだか見覚えのあるオーラだなっていうのは思ったの。彼の後ろの方にもう一人誰かいることも気づいてた。でも、影山さんだって思い出せなかった。
さすがに、あの影山さん相手じゃ上手く行かなかった。依頼主と自分の命を守るのに精一杯だったのよ」
どこか寂しそうに麗香さんが言った。
家族がいない麗香さんにとって、家族がわりのような人だった。そんな人が、まさかあんな恐ろしいことをするなんて、普通なら考えつかないだろう。
「悔しいわね、一度負けたんだから。
でも、ナオたちが影山さんの方を何とかしてくれたから助かったわ。ありがと」
乾いた笑みで言う。私は慌てて言った。
「お礼を言うのは私の方です! 麗香さんが来てくれなかったら死んでました……もしかして、途中何度か力が緩まったのも麗香さんのおかげだったんですか? あれで時間が稼げたというか」
「ああ、それは私じゃないわね」
そう言い、ちらりと下の方をみた。私たちは驚いて影山さんを見る。
「意識がない中でも……あなたを死なせたくない、って思いはあったんでしょうね。鏡に入ってた彼の力が、何とかしてくれたのよ」
「影山さん……」
そうだったのか、彼の力もあって、麗香さんがなんとか間に合った。やっぱり、優しい部分もあるんだ影山さん。
不思議でならない。なぜ人を救いたいと思う気持ちと、殺したい気持ちが共存できるのか。
世の中には他にも……そんな人がいるのだろうか。
そう九条さんが声をかけると、ずっと背筋を伸ばして立っていた麗香さんは、ふらふらとしながら近くのソファに倒れ込んだ。伊藤さんが慌てて駆け寄る。
「朝比奈さん!」
「ああ、もう、ちょっと寝込んでただけで体力ガタ落ち。ヘロヘロよ、もう」
私も慌てて立ち上がり、麗香さんの側へ寄った。改めて見てみれば、着ているものは病衣。メイクもしておらず、病院で会ったままの麗香さんだったのだ。
「麗香さん! あ、ありがとうございました、でもどうしてここに?」
私が疑問をぶつけると、ううんと唸りながら上半身を起こす。眉を顰めて言った。
「ねえ、なんか飲み物ちょうだい。お腹も空いてるけど普通のもの食べたら吐きそう」
伊藤さんが慌てて仮眠室から水を取ってきた。麗香さんはそれをゆっくり飲むと、一息ついてから言った。
「抜け出してきたの、病院」
「ひ……ひええ! 何してるんですか麗香さん!」
今頃病院では大騒ぎになっているんじゃないだろうか。すかさず伊藤さんがスマホを取り出し、どこかへ電話を掛け出す。多分、病院に麗香さんの所在を報告しているんだろう、仕事が早い人だ。
麗香さんはため息をついて言った。
「私、現実では眠ってたけどずっと見てたのよ、あなたたちの流れ」
「え、そんなことあるんですか?」
「なかなか目が開かなかったけど、少し前にようやく体が動いて」
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麗香さんはゆっくりと視線を下ろす。未だ気を失ったままの影山さんをみて、小さくつぶやいた。
「愚かな人ね……」
九条さんが尋ねる。
「影山さんのこと、いつ気付いた?」
「正直、初めて向かい合った時、なんだか見覚えのあるオーラだなっていうのは思ったの。彼の後ろの方にもう一人誰かいることも気づいてた。でも、影山さんだって思い出せなかった。
さすがに、あの影山さん相手じゃ上手く行かなかった。依頼主と自分の命を守るのに精一杯だったのよ」
どこか寂しそうに麗香さんが言った。
家族がいない麗香さんにとって、家族がわりのような人だった。そんな人が、まさかあんな恐ろしいことをするなんて、普通なら考えつかないだろう。
「悔しいわね、一度負けたんだから。
でも、ナオたちが影山さんの方を何とかしてくれたから助かったわ。ありがと」
乾いた笑みで言う。私は慌てて言った。
「お礼を言うのは私の方です! 麗香さんが来てくれなかったら死んでました……もしかして、途中何度か力が緩まったのも麗香さんのおかげだったんですか? あれで時間が稼げたというか」
「ああ、それは私じゃないわね」
そう言い、ちらりと下の方をみた。私たちは驚いて影山さんを見る。
「意識がない中でも……あなたを死なせたくない、って思いはあったんでしょうね。鏡に入ってた彼の力が、何とかしてくれたのよ」
「影山さん……」
そうだったのか、彼の力もあって、麗香さんがなんとか間に合った。やっぱり、優しい部分もあるんだ影山さん。
不思議でならない。なぜ人を救いたいと思う気持ちと、殺したい気持ちが共存できるのか。
世の中には他にも……そんな人がいるのだろうか。
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