【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら

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第2章

予知夢、そして執着 1

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 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 私が、のんびりと辺境の村で生活している頃、聖女の仲間たちは、レナルド様の屋敷に集まっていた。

「まさか、魔人がな……。少々早いな」

 盗賊のビアエルさんが、つぶやく。
 その手には、今日もエールの入ったジョッキが握られている。

「良く無事だった」

 珍しいことに、剣聖ロイド様も、彼にしては長めの言葉を発した。

「それで、レナルドは、これからどうする気なの? 聖女様の力は、その名と共に、失われてしまったのでしょう?」
「リサは、何があっても守ります。だが、歴史上、魔人が目撃された直後には、魔獣のスタンピードが起こっている。……今回も起こるでしょうね?」
「聖女様の力なしに、戦う気なの」

 ミルさんが、眉をひそめる。
 それは、たぶんレナルド様の覚悟を汲み取ってしまったからだ。

 聖女は、ただの象徴ではない。
 魔人が現れると、聖女の力は強くなる。
 その力で、人類は、魔人や魔獣との戦いに辛うじて勝利してきたのだ。

 そして、その戦いの中、最前線で戦った聖女は、そのほとんどが命を落とした。そして、聖女を守る存在である、守護騎士も。

 私の知識は、王族が用意してくれた講師や資料が元になっている。あとは、仲間や守護騎士であるレナルド様が教えてくれたものだ。

 けれど、誰一人として、そのことを私に教えてはくれなかった。

 象徴でしかない聖女が、恐れて逃げると困るから、王家は私に伝えなかったのだろう。
 そしてレナルド様や仲間たちが、中継ぎではない聖女が、ほとんど生き残れなかったなんて残酷なこと、私に言えるはずもない。

「……リサを聖女にはしない。聖女である限り、彼女は、王国の民を守るために戦うでしょうから。王家に利用されていると、分かっていても。そんなこと、俺は許さない」
「……それは事実だけれど。あなたの場合は、それだけじゃないでしょう? レナルドは、ずっと、聖女の称号を消す方法を探していたものね」
「…………スタンピードは、俺が処理します。リサを守ってくれませんか?」

 レナルド様が、テーブルを囲む仲間たちに目を向ける。複雑な表情のまま頷く、私の大事な仲間たち。

「でも、あなたも大事な仲間だわ。レナルド」

 部屋を出る時、ミルさんがつぶやいた言葉。
 たぶんそれは、レナルド様には届かなかった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


『おはよう、お寝坊さんだね。理沙は』
「……おはよう。シスト」

 目覚めると、私の頬を白い子猫が舐めていた。ザリザリとした感触が、少し痛い。

『夢を見た?』
「うん、仲間たちの夢」

 詳細は思い出せない。夢なのだから、仕方ない。
 でも、今回の夢は、聖女の称号を失う前には、良く見ていた予知夢に近い。

 過去だったり、未来だったりするけれど、それは私に何かを知らせてくれていた。

「レナルド様が、また無茶なことをしようとしている気がする」
『理沙が夢を見てそう思うなら、事実だろうね』
「もう、聖女じゃなくなったのに? そういえば、聖女じゃない私に、なんでシストはついてきているの?」

 聖女が描かれる時、左肩の上には必ず、封印の箱が浮かんでいる。……初代聖女を除いて。

『さあ、それは理沙が自分で考えて?』

 そう言われて、改めてシストのことを考える。

 魔人が現れたことを黙っていた。
 封印の箱のはずが猫の姿になってしまった。
 私が王都から逃げるのを手伝ってくれた。

「……シストは、敵じゃないよね?」
『そうだね。少なくとも、僕は理沙の敵じゃない』
「じゃあ、誰の敵?」
『……聖女の敵の敵』

 禅問答みたいな、シストの言葉。
 でも、あとから考えれば、それが答えだったというのは、良くあることだ。

 それ以上は、答えるつもりがないとでも言うように、シストは、ゴロリと寝そべる。

 だから私は、先ほどの夢に思いを馳せる。
 夢の中のレナルド様の声も瞳も、冷たく硬質で、私といる時とは違っていた気がした。
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