本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら

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番と恋人 3

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 先ほどまでの甘い空気は、どこに消えたのか。
 そして、目の前のごちそうは、お腹のどこに消えているのか。

 どちらかといえば、小柄なミリアの胃に大量の食べ物が消えていく様は、不思議を通り越して衝撃的だ。

「どうして、こんなに食べられるのでしょう」
「竜人は、回復力を番に渡すと、その分のエネルギーを補給しようとする。食べたそばから、回復力に変換されているから、気にせず食べるといい」

 ーーーーそれにしても、並んだ食事が三日食べていなかった人間に用意される量と内容ではないと思っていたけれど、そんなわけがあったのね。

「でも、私は竜人ではないです」
「……いや、ミリアには竜人の血が流れている」

 淡いピンク色のマカロンを、どんな味かと摘まもうとしていたミリアの細い指先が止まる。

「え?」
「そうでなければ、説明がつかない」

 そういえば、ウェンライト男爵家のご先祖様は、ある日流星のように現れ、王の命を救い補佐した出自不明の騎士だという。
 その功績により爵位を賜り、今に至る。

「え、ではもしかすると」

 ウェンライト男爵家の先祖は、アーロンと同じ境遇だったのかもしれないと、ミリアは思った。
 同じようなことをアーロンも考えていたのだろう。ミリアを見つめると、小さく頷く。

「……でも、私には何の力もないです」
「そうかな?」

 アーロンは、小さくつぶやくとシャツをまくり上げた。そのまま器用に包帯をほどき、当てていたガーゼを剥がす。
 血のせいでこびりついていたけれど、剥がされたガーゼの下の傷は、すでに薄いピンク色になっていた。

「竜人の回復力ってすごいのですね」
「俺は、いまだかつてこんなに早く回復する竜人を見たことないな」
「えっ! では、アーロン様が特別なのですか?」
「いや、今までならば、よくても1週間は寝床にいただろう」

 椅子から立ち上がり、アーロンのそばに寄ったミリアは、指先でもう傷跡と言っても良いくらいの傷にそっと触れた。

「もう、痛くありませんか?」
「ああ、全く痛くない」

 ようやく空腹がみたされたあたりから、ミリアの左脇の痛みもいつの間にか消えていた。

「良かったです」

 再び抱きついてきたミリアを、少し戸惑った手つきでアーロンが抱きしめ返した。

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