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男同士の対話
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「ポーネ先生!」
にこやかにほほ笑み、ネニュファールはポーネの腕をつかむと、城へ転移した。
バスティン王国の応接室である。
ぼさぼさの黒髪は顔が見えないが、視界も悪い。
顔をあげると、そこにはアムールと結婚したプリンシパルが座っていた。
「お座りください、先生。俺と男同士の話をしましょう。ヒストグラフ=マルコポーネ侯爵令息。」
「………知っていたのですね。いや、調べたのか。」
「ええ。優秀な弟が調べてくれました。言っておきますが、アムールに無理強いして結婚したわけではないですよ。」
「えっ。」
「俺がアムール先生の研究室に誤って入り込んでしまったのが、そもそもの始まりです。誓って、卒業までふしだらな関係になったことはありません。俺は、体が大きくて発育が良かったから、双子で生まれた小さな弟にかかりきりになりがちな両親に十分甘えられずに育ちました。アムール先生は、そんな俺を癒してくれたんです。王太子として、ゆくゆくは国を担う者として、緊張はつきもの。ですが、アムールの前では一人のプリンシパルになれる。いつしか、俺はアムールを愛するようになりました。一回り年上だろうが、関係なかった。」
「王家が………幼い王太子がアムールを見初めたからずっと縁談を邪魔して…。卒業を機に打診したのでは?」
「アムールの年齢もあるので、卒業後すぐに婚約し、短い婚約期間ですぐに結婚することが決まっていました。そういわなければ、俺たちの関係が卒業後から始まったのだということにしなければ、たとえ何も後ろめたいことはなかったとしても、勘ぐるやつがいるでしょう?一回りも年下の学生……しかも王太子を誑かした教師というレッテルを貼らせたくなかったんですよ。」
魔法で、ブリザード王国で笑って従妹たちと遊んでいるアムールの姿を映す。
なんだ…………。
ポーネの目からぽろぽろ涙がこぼれた。
「5歳の時…。父に連れられ、初めて行った神殿でアムールを見て。一目ぼれだった…。すぐに仲良くなって、いつも一緒に遊んでいたんだ。大きくなったら、僕のお嫁さんになって…って。だけど、11歳くらいの時かな。アムールが病気になって、帰ってきたら遊んでくれなくなって。壁を感じて…。人の顔を見るのが怖いって……。何があったのか分からないけど、それからアムールが教師になったから、私も追いかけて教師になったんだ。父には反対されたが…。領地の仕事もやるって…二重生活を受け入れて。」
「アムールさんが顔を怖がるから隠すために髪とひげを伸ばしたんですね。もっと何かやりようもあったでしょうに。」
ネニュファールは思っていたよりポーネ先生がまともだったので、ほっとしていた。
「愛してるって、結婚しようって何度も言ったけど、アムールはいつも断って来た。一生誰とも結婚する気はないんですって。でも、力なく笑うんだ。あんな笑顔じゃなかった。昔は。そう、さっき見せてもらった笑顔が、アムールの本当の…。私じゃ…なかったんだ…。」
「ポーネ先生。約束します。あなたの想いの分も、必ず俺がアムールを幸せにする。側妃は娶らない。子ができなくても、側妃は要らない。その時は弟たちに頑張ってもらって、1人養子にもらう。最悪、ブリザード王国からもらうでもいいと思ってる。」
「あぁ、あ…うっ。よろしくっ、おねがいしますっ…。」
男二人は硬い握手を交わした。
「さて、最後の仕事といきましょうかね。」
その様子を見て、ネニュファールは大人に変身する。
「なっ。おまえ、それ…。」
その姿は、プリンシパルに背丈も顔もよく似ている。
「研究成果だよ。すごいでしょ。心と体の年齢を18歳に引き上げました。ねえ、これで髪を染めたら。きっとお兄様だと間違っちゃうんじゃない?」
害虫の後始末をするから、お兄様がとどめを刺してね♡
にこやかにほほ笑み、ネニュファールはポーネの腕をつかむと、城へ転移した。
バスティン王国の応接室である。
ぼさぼさの黒髪は顔が見えないが、視界も悪い。
顔をあげると、そこにはアムールと結婚したプリンシパルが座っていた。
「お座りください、先生。俺と男同士の話をしましょう。ヒストグラフ=マルコポーネ侯爵令息。」
「………知っていたのですね。いや、調べたのか。」
「ええ。優秀な弟が調べてくれました。言っておきますが、アムールに無理強いして結婚したわけではないですよ。」
「えっ。」
「俺がアムール先生の研究室に誤って入り込んでしまったのが、そもそもの始まりです。誓って、卒業までふしだらな関係になったことはありません。俺は、体が大きくて発育が良かったから、双子で生まれた小さな弟にかかりきりになりがちな両親に十分甘えられずに育ちました。アムール先生は、そんな俺を癒してくれたんです。王太子として、ゆくゆくは国を担う者として、緊張はつきもの。ですが、アムールの前では一人のプリンシパルになれる。いつしか、俺はアムールを愛するようになりました。一回り年上だろうが、関係なかった。」
「王家が………幼い王太子がアムールを見初めたからずっと縁談を邪魔して…。卒業を機に打診したのでは?」
「アムールの年齢もあるので、卒業後すぐに婚約し、短い婚約期間ですぐに結婚することが決まっていました。そういわなければ、俺たちの関係が卒業後から始まったのだということにしなければ、たとえ何も後ろめたいことはなかったとしても、勘ぐるやつがいるでしょう?一回りも年下の学生……しかも王太子を誑かした教師というレッテルを貼らせたくなかったんですよ。」
魔法で、ブリザード王国で笑って従妹たちと遊んでいるアムールの姿を映す。
なんだ…………。
ポーネの目からぽろぽろ涙がこぼれた。
「5歳の時…。父に連れられ、初めて行った神殿でアムールを見て。一目ぼれだった…。すぐに仲良くなって、いつも一緒に遊んでいたんだ。大きくなったら、僕のお嫁さんになって…って。だけど、11歳くらいの時かな。アムールが病気になって、帰ってきたら遊んでくれなくなって。壁を感じて…。人の顔を見るのが怖いって……。何があったのか分からないけど、それからアムールが教師になったから、私も追いかけて教師になったんだ。父には反対されたが…。領地の仕事もやるって…二重生活を受け入れて。」
「アムールさんが顔を怖がるから隠すために髪とひげを伸ばしたんですね。もっと何かやりようもあったでしょうに。」
ネニュファールは思っていたよりポーネ先生がまともだったので、ほっとしていた。
「愛してるって、結婚しようって何度も言ったけど、アムールはいつも断って来た。一生誰とも結婚する気はないんですって。でも、力なく笑うんだ。あんな笑顔じゃなかった。昔は。そう、さっき見せてもらった笑顔が、アムールの本当の…。私じゃ…なかったんだ…。」
「ポーネ先生。約束します。あなたの想いの分も、必ず俺がアムールを幸せにする。側妃は娶らない。子ができなくても、側妃は要らない。その時は弟たちに頑張ってもらって、1人養子にもらう。最悪、ブリザード王国からもらうでもいいと思ってる。」
「あぁ、あ…うっ。よろしくっ、おねがいしますっ…。」
男二人は硬い握手を交わした。
「さて、最後の仕事といきましょうかね。」
その様子を見て、ネニュファールは大人に変身する。
「なっ。おまえ、それ…。」
その姿は、プリンシパルに背丈も顔もよく似ている。
「研究成果だよ。すごいでしょ。心と体の年齢を18歳に引き上げました。ねえ、これで髪を染めたら。きっとお兄様だと間違っちゃうんじゃない?」
害虫の後始末をするから、お兄様がとどめを刺してね♡
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