最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する

竜鳴躍

文字の大きさ
2 / 77

勇者ミリオン

しおりを挟む
「ははあ、これだね?アンデッドドラゴン。」

陛下の依頼どおり、国境沿いの渓谷にアンデッドドラゴンが鎮座している。
確かにこれは危険だなー。

渓谷は行商だって通るのだし。
物流が止まったら困る。


アンデッドドラゴンにはアンデッドがついてくる。
腐臭と闇の気に次々と霊魂が実体を持つのだ。

少し離れた高台から様子を見る。


「いつもどおりアリカはここから僕の支援をしてね。」

「了解。」



ちまちまちまちま5歳のみぎり、スライム狩りからこつこつと!
レベルを上げまくった甲斐もあり、今では僕のレベルはMAXなのだ。

全属性習得済み、剣LVMAX、ステータスも言わずもがな。

僕は聖なる気を剣にまとわせ、高台から降りる。


レベル上げに付き合わせたアリカだってレベルMAXだ。

「速度上昇、ホーリーバリア、聖なる雨!」

アリカの詠唱に合わせて、僕は剣を振り下ろす!


「邪気滅殺斬!」


白い光に包まれた闇の者は、一瞬で霧散するのだ。







「きゃあ!!勇者様たちよ!」

「今日もなんて美しいんだ…。」

「陛下の命でアンデッドドラゴンとモンスターの群れをやっつけてくれたそうだよ!」

「この国に勇者様がいる限り、安心だ!」


口々にみんな僕をほめたたえる。


「ふふ、嬉しいですね、ミリオン様。」

「アリカのことも言って欲しいのになぁ。」

「いいんですよ、私は従者ですからね。」

「じゃあ、僕はアリカをいっぱい讃えるね!後で美味しいもの食べに行こ!」

「ありがとうございます。」



陛下に謁見し、いつものように報告の後、褒美に金銭をもらう。

一部は屋敷の費用に充て、大体は僕の独立資金で貯金している。


「よくやった。勇者ミリオン。さて、ミリオンよ。本当に爵位はいらないのかね?君なら特例で認めることができる。もうすぐであろう?」

王様は僕が誰なのか正しく知っている。

そりゃあ、5歳までは出入りしていたもの。

でも、あんなわずかな間だったのに、分かってくださってとても嬉しい。


「ええ。『勇者』となって、一生豊かに暮らせるだけの資金もありますし。平民が気楽ですよ。僕は料理も得意なので、別れたら店でも出そうかと思ってたりもします。」


前世の料理はウケるだろうから、僕の懐はがっぽがっぽだ。

「夫を持つ気もないのかい?」

「オメガですけど、僕は女の子が好きなので。男の嫁になるくらいなら、独り身がいいです。」

そうそう。BLは架空だからいいのであって、リアルとなると訳が違う。

「そうかね………。」

なんかがっかりされている。

かつては息子の嫁にと思っていた僕が落ちぶれて、気にされているのだろう。


良いご縁を僕に結ぼうと思ってくださったのかもしれない。申し訳ないなぁ。


心なしか、アリカをちらちらみているけど、僕とアリカがそういう仲だとでも思っているのかな?




そういえば、勇者になって城にまた来るようになったけど、一度もカナリア殿下を見てないな。

金髪碧眼の、可愛らしい顔をした男の子だったけど。
きっとかっこよく育っただろう。




「カナリアさまぁ~。カナリア様はどこにいらっしゃるのぉ?」



謁見室に不似合いの甘い声。

乱入者に陛下の顔がこわばり、騎士がまたか、と呆れた顔のまま警戒する。



ふわふわピンクブロンドの若い女だ。

「マチルダ=バード公爵令嬢。カナリアと其方に何の関係もない。謁見中ぞ。立ち去れ!」


あ。僕の従妹だった。義母の娘だ。

うん?確かに顔の造りは悪くない気はするけど、飛びぬけて可愛いとかきれいとかではないな。

可愛い方ではあるだろうけど。
頭が悪そうなのが最悪。


――――――そっか、カナリアは相手にしてないんだな。


なんとなくホッとする。


「あら。」

マチルダは僕を見た。


「このオメガは誰!?男のくせになかなかきれいじゃない!」

「失礼ですぞ、この方は『勇者』様です!」


「へえ、勇者。オメガでも強いのね。知らなかったわ。」



本当に叔母夫婦は何を考えているんだろう。
公爵家で王家と親族だから何やっても許されるとでも思ってるんだろうか。

不敬にもほどがあるし、オメガだってもう少し教育しないとろくなアルファには嫁げないぞ?
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

白い結婚を夢見る伯爵令息の、眠れない初夜

西沢きさと
BL
天使と謳われるほど美しく可憐な伯爵令息モーリスは、見た目の印象を裏切らないよう中身のがさつさを隠して生きていた。 だが、その美貌のせいで身の安全が脅かされることも多く、いつしか自分に執着や欲を持たない相手との政略結婚を望むようになっていく。 そんなとき、騎士の仕事一筋と名高い王弟殿下から求婚され──。 ◆ 白い結婚を手に入れたと喜んでいた伯爵令息が、初夜、結婚相手にぺろりと食べられてしまう話です。 氷の騎士と呼ばれている王弟×可憐な容姿に反した性格の伯爵令息。 サブCPの軽い匂わせがあります。 ゆるゆるなーろっぱ設定ですので、細かいところにはあまりつっこまず、気軽に読んでもらえると助かります。 ◆ 2025.9.13 別のところでおまけとして書いていた掌編を追加しました。モーリスの兄視点の短い話です。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。

零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。 鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。 ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。 「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、 「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。 互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。 他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、 両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。 フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。 丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。 他サイトでも公開しております。

ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。

夏笆(なつは)
BL
 公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。  ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。  そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。  初めての発情期を迎えようかという年齢になった。  これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。  しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。  男性しか存在しない、オメガバースの世界です。     改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。 ※蔑視する内容を含みます。

兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語

サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。 ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。 兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。 受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。 攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。 ※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

庶子のオメガ令息、嫁ぎ先で溺愛されています。悪い噂はあてになりません。

こたま
BL
男爵家の庶子として産まれたサシャ。母と二人粗末な離れで暮らしていた。男爵が賭けと散財で作った借金がかさみ、帳消しにするために娘かオメガのサシャを嫁に出すことになった。相手は北の辺境伯子息。顔に痣があり鉄仮面の戦争狂と噂の人物であったが。嫁いだ先には噂と全く異なる美丈夫で優しく勇敢なアルファ令息がいた。溺愛され、周囲にも大事にされて幸せを掴むハッピーエンドオメガバースBLです。間違いのご指摘を頂き修正しました。ありがとうございました。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...