37 / 77
僕はLV99の勇者だからね!
しおりを挟む
「ルイーダ=バード。13歳というのは嘘で、本当の年齢は16歳。前公爵のマリオンとその夫を毒殺した犯人だな。」
王家のプライベートルームは断罪の場となる。
ミリオンを腕に抱え、カナリアは罪状を読み上げた。
「王家が管理する貴族の戸籍記録は、お前の出生は初め、16年前と刻まれていた。ところが、後日13年前と修正されている。そして、誰もがそう記憶してきた。お前の姿も……とても16には見えない。だが、マドンナ夫妻が公爵家に来る前にいた土地で、お前を取り上げた医者、周りに住んでいた者。全てに確認した。お前は確かに16年前に生まれている。そして、マドンナ夫妻が後を継いだ理由。マドンナは当主不適格の烙印を押されて永劫に当主となる権利をはく奪されている。その夫は血筋ではない。前公爵が亡くなり、一家が新しい公爵家になることが決まった時点で、血族にオメガ以外の人間がいるはずだ。マチルダはオメガ。だからその時、お前が生まれていなければおかしいのだ!」
「………お見事です。殿下。はは、僕はもう、僕にはもう何もない。おっしゃる通り。」
床にぺたりと座り込んだルイーダの目は涙があふれ、青白い顔になっている。
「ああああ、なんてこと。私!それなのに彼をミリオン様に近づけてしまった……!!私、王太子妃失格だわ。」
泣き崩れるバニラをアルカナは抱きしめた。
まだ終わりじゃない、落ち着いて。と人差し指で言葉をふさぐ。
「当時お前は2歳だ。まさか2歳の幼子が犯人だと誰も思わなかっただろう。お前は特別なアルファなんだな。そして、アリバイを強固にするために、夫妻の葬儀の時にでも参列した我々に記憶を消す薬を盛ったのだろう。故郷の者が言っていたよ。幼いのに薬草に詳しくて、びっくりしたと。修道院に薬も売っていたそうじゃないか。」
「…はい。僕は上位アルファ。そして鑑定スキルと生まれたときから膨大な薬学の知識がありましたから。僕と接点が少なければ一度薬を飲めば、記憶が戻ることはありませんが、接点が多い者は戻る可能性があります。だから、両親や姉には薬を定期的に飲ませていました。ああ、妊婦に影響はないですよ。そして、僕が幼く見えるのも……。成長を止める薬を飲んでいたからです。副作用はありますけどね。」
「ばか。」
カナリアの腕の中のミリオンが目を開けて、体を起こした。
「え?うそ?ああぁ、神様。致死量の毒だったのに……!!ああ、早く解毒を」
ルイーダが立ち上がるのを、カナリアは制止し、騎士に捕らえさせる。
「大丈夫だよ、僕、毒効かないんだよね。LV99の勇者だから!」
「あああ、ああ、よかっ」
「ねえ、教えてよ。僕の両親や僕を殺したいくらい僕のことを憎んでいたのに、どうして突然僕に毒を飲ませたくないって思ったわけ?止めようとしたよね。今更良心の呵責とかもないと思うんだけど。」
王家のプライベートルームは断罪の場となる。
ミリオンを腕に抱え、カナリアは罪状を読み上げた。
「王家が管理する貴族の戸籍記録は、お前の出生は初め、16年前と刻まれていた。ところが、後日13年前と修正されている。そして、誰もがそう記憶してきた。お前の姿も……とても16には見えない。だが、マドンナ夫妻が公爵家に来る前にいた土地で、お前を取り上げた医者、周りに住んでいた者。全てに確認した。お前は確かに16年前に生まれている。そして、マドンナ夫妻が後を継いだ理由。マドンナは当主不適格の烙印を押されて永劫に当主となる権利をはく奪されている。その夫は血筋ではない。前公爵が亡くなり、一家が新しい公爵家になることが決まった時点で、血族にオメガ以外の人間がいるはずだ。マチルダはオメガ。だからその時、お前が生まれていなければおかしいのだ!」
「………お見事です。殿下。はは、僕はもう、僕にはもう何もない。おっしゃる通り。」
床にぺたりと座り込んだルイーダの目は涙があふれ、青白い顔になっている。
「ああああ、なんてこと。私!それなのに彼をミリオン様に近づけてしまった……!!私、王太子妃失格だわ。」
泣き崩れるバニラをアルカナは抱きしめた。
まだ終わりじゃない、落ち着いて。と人差し指で言葉をふさぐ。
「当時お前は2歳だ。まさか2歳の幼子が犯人だと誰も思わなかっただろう。お前は特別なアルファなんだな。そして、アリバイを強固にするために、夫妻の葬儀の時にでも参列した我々に記憶を消す薬を盛ったのだろう。故郷の者が言っていたよ。幼いのに薬草に詳しくて、びっくりしたと。修道院に薬も売っていたそうじゃないか。」
「…はい。僕は上位アルファ。そして鑑定スキルと生まれたときから膨大な薬学の知識がありましたから。僕と接点が少なければ一度薬を飲めば、記憶が戻ることはありませんが、接点が多い者は戻る可能性があります。だから、両親や姉には薬を定期的に飲ませていました。ああ、妊婦に影響はないですよ。そして、僕が幼く見えるのも……。成長を止める薬を飲んでいたからです。副作用はありますけどね。」
「ばか。」
カナリアの腕の中のミリオンが目を開けて、体を起こした。
「え?うそ?ああぁ、神様。致死量の毒だったのに……!!ああ、早く解毒を」
ルイーダが立ち上がるのを、カナリアは制止し、騎士に捕らえさせる。
「大丈夫だよ、僕、毒効かないんだよね。LV99の勇者だから!」
「あああ、ああ、よかっ」
「ねえ、教えてよ。僕の両親や僕を殺したいくらい僕のことを憎んでいたのに、どうして突然僕に毒を飲ませたくないって思ったわけ?止めようとしたよね。今更良心の呵責とかもないと思うんだけど。」
139
あなたにおすすめの小説
白い結婚を夢見る伯爵令息の、眠れない初夜
西沢きさと
BL
天使と謳われるほど美しく可憐な伯爵令息モーリスは、見た目の印象を裏切らないよう中身のがさつさを隠して生きていた。
だが、その美貌のせいで身の安全が脅かされることも多く、いつしか自分に執着や欲を持たない相手との政略結婚を望むようになっていく。
そんなとき、騎士の仕事一筋と名高い王弟殿下から求婚され──。
◆
白い結婚を手に入れたと喜んでいた伯爵令息が、初夜、結婚相手にぺろりと食べられてしまう話です。
氷の騎士と呼ばれている王弟×可憐な容姿に反した性格の伯爵令息。
サブCPの軽い匂わせがあります。
ゆるゆるなーろっぱ設定ですので、細かいところにはあまりつっこまず、気軽に読んでもらえると助かります。
◆
2025.9.13
別のところでおまけとして書いていた掌編を追加しました。モーリスの兄視点の短い話です。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
婚約破棄されてヤケになって戦に乱入したら、英雄にされた上に美人で可愛い嫁ができました。
零壱
BL
自己肯定感ゼロ×圧倒的王太子───美形スパダリ同士の成長と恋のファンタジーBL。
鎖国国家クルシュの第三王子アースィムは、結婚式目前にして長年の婚約を一方的に破棄される。
ヤケになり、賑やかな幼馴染み達を引き連れ無関係の戦場に乗り込んだ結果───何故か英雄に祭り上げられ、なぜか嫁(男)まで手に入れてしまう。
「自分なんかがこんなどちゃくそ美人(男)を……」と悩むアースィム(攻)と、
「この私に不満があるのか」と詰め寄る王太子セオドア(受)。
互いを想い合う二人が紡ぐ、恋と成長の物語。
他にも幼馴染み達の一抹の寂寥を切り取った短篇や、
両想いなのに攻めの鈍感さで拗れる二人の恋を含む全四篇。
フッと笑えて、ギュッと胸が詰まる。
丁寧に読みたい、大人のためのファンタジーBL。
他サイトでも公開しております。
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語
サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。
ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。
兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。
受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。
攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。
※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
庶子のオメガ令息、嫁ぎ先で溺愛されています。悪い噂はあてになりません。
こたま
BL
男爵家の庶子として産まれたサシャ。母と二人粗末な離れで暮らしていた。男爵が賭けと散財で作った借金がかさみ、帳消しにするために娘かオメガのサシャを嫁に出すことになった。相手は北の辺境伯子息。顔に痣があり鉄仮面の戦争狂と噂の人物であったが。嫁いだ先には噂と全く異なる美丈夫で優しく勇敢なアルファ令息がいた。溺愛され、周囲にも大事にされて幸せを掴むハッピーエンドオメガバースBLです。間違いのご指摘を頂き修正しました。ありがとうございました。
【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる
古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる