【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍

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あなたしかいらない

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最初は可哀想。

ただ、それだけだった。

いくらでも見てきた可哀想な被害者の一人。


資料を読み込み、彼が落とし込まれた運命は、あまりにも酷くて、憤った。


彼は許されていいと思った。
だけど、彼は自分で自分を許さなかった。


寿命を削ってまで、危険な呪いの解除をしたり、残りの一生を人のために使いたいという。


神の前に跪く、敬虔な神父のようだった。


あんなに酷い目にあって、人生をめちゃくちゃにされ、それで、自分で許しを拒絶するなら、誰が彼を救うのだ。


守ってあげたい気持ちが、愛に変わるのには時間はかからなかった。




柱の影のミリーに向かって、ブラックは進んだ。

見えないように、今、身を隠したのは分かっている。


「ミリーさん。いたんだな。」


「何かあったときの………救護係。です。」


柱から、正装しているミリーが出てくる。

黒のスーツの下から、白いシャツを着て、小綺麗になって。救護係の腕章を右腕につけて。

ツェッペリンが捕らえられ、幾分か精神的にも落ち着いているのだろう、目の下の隈は消え、冴えなかった風貌は、日に日に回復して、元々の可愛らしさ、美しさが誰にも分る様になっていた。




自分じゃなくても、きっと誰かそのうち彼に愛を囁くだろう。

だが、この人は誰の手も取らない。

そんな気がする。



「……お願いだ、ミリーさん。寝ても覚めても君だけなんだよ。きっと、この気持ちは一生変わらない。こんなことは初めてなんだ。あなたしかいらない。俺のことを、少し考えてみてほしい。」


「きっと、あなたにはよい方が現れます。こんなどうしようもない、使い古しじゃなくても。」


「自分をそんなに粗末にするな!」


思わず大声が出て、周りが注目した。

「……すまない。」


「………俺にはそんな価値はありません。」


「なんで、なんでっ……。」


「お願いします。もう、俺のことは……っ。」

そういいながらも、ミリーの目が揺れていた。震える指先で、やっと拒絶して。



あなたを好きだから、

あなたを拒絶する。
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