5 / 21
5 親を脅す気か
しおりを挟む
この時、私の心は決まった。
もう遠慮はしない。
私は母のロザリオをまた握り締めた。
「何だと……」
父は怒りに震えながら手を振り上げる。
「なに? 打つの? 打つなら打てば良いわ! でもその代わり、覚悟はしておいてね! もうすぐお祖父様とお祖母様がこの屋敷にやって来るのよ? 私はもう遠慮なんてしない! 今日が最後だもの。二人に今までの事を洗いざらいぶち撒けてやる! 私に暴力を振るったなんて知られたら、お父様、王宮での立場を失う事になるわよ!! その覚悟があるのならやれば良いわ!!」
私は父にそう啖呵を切った。侯爵家当主である祖父の王宮での発言力は強い。父が宰相の筆頭補佐官と言う重職に就けたのも父自身の努力は勿論だが、実際には祖父と言う強力な後ろ盾があったからに他ならない。
「お前……。親を脅す気か! そんな脅しに私が怯むとでも思っているのか!? もう一度だけ言う。二人に直ぐに謝りなさい!!」
今まで大人しく従順だった私が自分に歯向かった事に余程腹が立ったのか、父は怒りに目を血走らせながら私を威嚇するかの様に更に高く手を振り上げた。
その時だ。
「でも、アイリスが言った事は事実でしょう? 男性の貴方が娘を思い切り打つ。恐らくアイリスの顔は腫れ上がるでしょうね。それを侯爵夫妻が許すと伯爵、貴方本気でそう思われているのですか?」
一人の男性が歩み出て父にそう問いかけた。
実は柱の影に隠れていたのは私一人ではなかった。その男性は先程プレゼントを運んで来た侯爵家からの使いの中に紛れ込んでいた。そして、それからずっと私を守るためにこの屋敷に留まってくれていたのだ。
何と言ってもあちらは3人、こちらは1人だ。私だってたった1人で父達3人に喧嘩を売る様な馬鹿な事はしない。行動を起こすと決めた以上、味方は必要。
それもその味方には力が有ればある程良い。
そう考えた時、真っ先に頭に思い浮かんだのが彼だった。
今回の誕生日会、祖父母はデビュタントで身に付ける物一式を私に贈ると言い、父はそれを渋々ながらも了承した。
だが、ドレスを贈るとなると採寸が必要だ。その為祖父は今日に先立ち、我が家に侯爵家御用達の商人を寄越してくれた。私はその商人にこっそりと祖父への言伝を頼み、彼へ宛てた私からの手紙を届けてくれるよう託した。祖父を通じて私からの手紙を受け取った彼は、侯爵家からの使いに紛れ込み、屋敷まで来てくれたと言う訳だ。
その男性の顔を見た父とメラニアが瞬時に顔色を変える。
父が声を震わせながら問い掛けた。
「セフィール殿下……何故……此処に……?」
「え? 殿下?」
父の言葉を聞いたラデッシュが、その場に漂う空気も読まずに目をキラキラさせ、父に嬉しそうに問い掛けた。
その顔から既に涙は消えていた。
さっきのが嘘泣きだった事がバレバレだ。
そんなラデッシュに父は慌てて、咎めるような荒い口調で答えた。
「第二王子殿下だ!」
父とラデッシュのこのやり取りを側で見ていたセフィール殿下が苦笑いを浮かべる。
そして彼もまた、先程の父からの問いに答えた。
「何故……ですか? 実はアイリスから誕生会への招待を受けたからですよ。貴方も知っているでしょう? 母とアリア様は親友同志。そして私とアイリスは幼馴染だ。今日はそのアイリスが成人を迎える記念すべき日です。彼女が誕生日会に私を招待してくれていても不思議ではないでしょう?」
もう遠慮はしない。
私は母のロザリオをまた握り締めた。
「何だと……」
父は怒りに震えながら手を振り上げる。
「なに? 打つの? 打つなら打てば良いわ! でもその代わり、覚悟はしておいてね! もうすぐお祖父様とお祖母様がこの屋敷にやって来るのよ? 私はもう遠慮なんてしない! 今日が最後だもの。二人に今までの事を洗いざらいぶち撒けてやる! 私に暴力を振るったなんて知られたら、お父様、王宮での立場を失う事になるわよ!! その覚悟があるのならやれば良いわ!!」
私は父にそう啖呵を切った。侯爵家当主である祖父の王宮での発言力は強い。父が宰相の筆頭補佐官と言う重職に就けたのも父自身の努力は勿論だが、実際には祖父と言う強力な後ろ盾があったからに他ならない。
「お前……。親を脅す気か! そんな脅しに私が怯むとでも思っているのか!? もう一度だけ言う。二人に直ぐに謝りなさい!!」
今まで大人しく従順だった私が自分に歯向かった事に余程腹が立ったのか、父は怒りに目を血走らせながら私を威嚇するかの様に更に高く手を振り上げた。
その時だ。
「でも、アイリスが言った事は事実でしょう? 男性の貴方が娘を思い切り打つ。恐らくアイリスの顔は腫れ上がるでしょうね。それを侯爵夫妻が許すと伯爵、貴方本気でそう思われているのですか?」
一人の男性が歩み出て父にそう問いかけた。
実は柱の影に隠れていたのは私一人ではなかった。その男性は先程プレゼントを運んで来た侯爵家からの使いの中に紛れ込んでいた。そして、それからずっと私を守るためにこの屋敷に留まってくれていたのだ。
何と言ってもあちらは3人、こちらは1人だ。私だってたった1人で父達3人に喧嘩を売る様な馬鹿な事はしない。行動を起こすと決めた以上、味方は必要。
それもその味方には力が有ればある程良い。
そう考えた時、真っ先に頭に思い浮かんだのが彼だった。
今回の誕生日会、祖父母はデビュタントで身に付ける物一式を私に贈ると言い、父はそれを渋々ながらも了承した。
だが、ドレスを贈るとなると採寸が必要だ。その為祖父は今日に先立ち、我が家に侯爵家御用達の商人を寄越してくれた。私はその商人にこっそりと祖父への言伝を頼み、彼へ宛てた私からの手紙を届けてくれるよう託した。祖父を通じて私からの手紙を受け取った彼は、侯爵家からの使いに紛れ込み、屋敷まで来てくれたと言う訳だ。
その男性の顔を見た父とメラニアが瞬時に顔色を変える。
父が声を震わせながら問い掛けた。
「セフィール殿下……何故……此処に……?」
「え? 殿下?」
父の言葉を聞いたラデッシュが、その場に漂う空気も読まずに目をキラキラさせ、父に嬉しそうに問い掛けた。
その顔から既に涙は消えていた。
さっきのが嘘泣きだった事がバレバレだ。
そんなラデッシュに父は慌てて、咎めるような荒い口調で答えた。
「第二王子殿下だ!」
父とラデッシュのこのやり取りを側で見ていたセフィール殿下が苦笑いを浮かべる。
そして彼もまた、先程の父からの問いに答えた。
「何故……ですか? 実はアイリスから誕生会への招待を受けたからですよ。貴方も知っているでしょう? 母とアリア様は親友同志。そして私とアイリスは幼馴染だ。今日はそのアイリスが成人を迎える記念すべき日です。彼女が誕生日会に私を招待してくれていても不思議ではないでしょう?」
1,782
あなたにおすすめの小説
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
両親に溺愛されて育った妹の顛末
葉柚
恋愛
皇太子妃になるためにと厳しく育てられた私、エミリアとは違い、本来私に与えられるはずだった両親からの愛までも注ぎ込まれて溺愛され育てられた妹のオフィーリア。
オフィーリアは両親からの過剰な愛を受けて愛らしく育ったが、過剰な愛を受けて育ったために次第に世界は自分のためにあると勘違いするようになってしまい……。
「お姉さまはずるいわ。皇太子妃になっていずれはこの国の妃になるのでしょう?」
「私も、この国の頂点に立つ女性になりたいわ。」
「ねえ、お姉さま。私の方が皇太子妃に相応しいと思うの。代わってくださらない?」
妹の要求は徐々にエスカレートしていき、最後には……。
【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
【完結】手紙
325号室の住人
恋愛
☆全3話 完結済
俺は今、大事な手紙を探している。
婚約者…いや、元婚約者の兄から預かった、《確かに婚約解消を認める》という内容の手紙だ。
アレがなければ、俺の婚約はきちんと解消されないだろう。
父に言われたのだ。
「あちらの当主が認めたのなら、こちらもお前の主張を聞いてやろう。」
と。
※当主を《兄》で統一しました。紛らわしくて申し訳ありませんでした。
こんな婚約者は貴女にあげる
如月圭
恋愛
アルカは十八才のローゼン伯爵家の長女として、この世に生を受ける。婚約者のステファン様は自分には興味がないらしい。妹のアメリアには、興味があるようだ。双子のはずなのにどうしてこんなに差があるのか、誰か教えて欲しい……。
初めての投稿なので温かい目で見てくださると幸いです。
これで、私も自由になれます
たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる