お姉様は一途でいたいのに妖艶美魔女に狙われています

那須野 紺

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覚醒(梨々香SIDE)

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それぞれがパートナーの元へと戻り、私はマコさんに梢さんとの会話について尋ねてみた。

「お話してみたら、何でもパーソナルジムのトレーナーをしてらっしゃるって聞いて、是非一度教えてもらえないかと思って頼んじゃった」

マコさんは梢さんと話ができてすこぶる嬉しそうである。

「良かったね、マコちゃん」
「うん…あとね」

ほんの少しだけ逡巡してから、恥ずかしそうにマコさんが切り出した。

「さっきまで遠目にりりちゃんの事見てたけど…いつもよりずっと、大人っぽいと言うか、色っぽい感じがして、見てるだけでドキドキしちゃった。横に凄い美人が居るから尚更だったのかもしれないけど」
「……」
「それでちょっと、梢さんと二人の事見ながら盛り上がっちゃった」

私は、どう返せば良いのかわからず一瞬黙ってしまったけれど、素直に思った事を伝える。

「だったら、リリは嬉しい」
「うん」
「…マコちゃん、早く…二人きりになりたいよ」
「…え?」

アルコールが入っているし、佐藤晴香にあれこれ良くわからない話をされたのもあって、私の気持ちは落ち着かないままだ。
嘘なのか本当なのかわからない情報ごと、マコさんに触れられる事で全て忘れてしまいたいという気分だったのだと思う。

「りりちゃん帰りたいの…?」
「ううん、もっと、すぐに…」
「…?」

ここは単に「広い」という一言では足りないぐらいに広大なスイートルームである。
室内のレイアウトの全てが頭に入っている訳ではないが、この広さに比して招待客の数は10名程度とごく少数だ。

ほんの少し、キスだけでも良い。どこか人目を避ける事ができる場所ぐらいあるのではないか、と私は考えを巡らせる。

「マコちゃん、こっち」
「あの…」
「いいから」

先ほど佐藤晴香に連れ込まれたコネクティングルーム。
メインルームと内装は揃えてあるが、こちらは単独だとやや広めのツインルームという感じの部屋だ。

そこなら意図せず人が入ってしまうという事はないだろう。
その部屋の扉は開け放たれており、中に人の気配はなさそうだった。

「りりちゃん、本当にここで…するの?」
「キス、だけで良いから…お願い、マコちゃん」
「………」

扉を閉めてしまえば完全な個室にはなるけれど、それだとかえって不自然になるし、私達はそのコネクティングルームの扉のすぐ傍の、死角になりそうな壁際に身体を寄せ合って立っている。

…自分でも凄く不思議なのだが、マコさん相手になら、胸焼けするような甘えた台詞も、媚びるようなおねだりも、割と平気でできてしまうのだ。
今だって少し潤んだ瞳でマコさんを見つめながら、マコさんの両手を包むように自身の両手を重ねて握り、彼女に語りかけているのだから。

マコさんを困らせるのは不本意ではあるけれども、当のマコさんの視線にもまた、どこか高揚の色を感じてしまうし、非日常的なゴージャスな空間に充てられているというのもあって、無茶なおねだりも聞いてもらえるのではないかと思えてしまう。

容子様のお屋敷に住んでいる時には、この程度の空間に圧倒される事はなかったはずなのに、凝った店舗兼住宅とは言え絢爛豪華とは程遠い家に暮らしていると、こういう空間はどうもふわふわした感じになって落ち着かない。

「りりちゃん、そんな事したら…続きがしたくなっちゃうんじゃないの…」
「……」

マコさんは包まれた両手を振り払う事もせず、努めて冷静さを無くさないように注意深く尋ねてくる。
勿論、マコさんの言う事は間違ってなんかいない。

しかし涙目になっている私に我慢を強いるのが堪えられなかったのか、マコさんは躊躇する時間を惜しんだようだ。
黙っている私の身体が壁に押さえつけられるような体制に変わり、そっと唇が重ねられる。

…誰かに見つかってしまうかもしれない。
でも、その緊張感が私の中に言い知れぬ興奮をもたらした。

恰好こそ普段と全然違うけど、マコさんの匂いも、重ねた唇の間からほんの少し流れ込んでくる唾液の味も、すっかり馴染んだもので私は安心してしまう。

唇を合わせるだけのキスでは私が納得しないとでも思ったのか、マコさんは時間をかけてゆっくりと、その隙間に舌を差し込んで、私の唇の間を小さく左右に舐めて刺激してきた。
控え目な舌の動きがかえってもどかしく、もっと強引に求められたいという欲求が膨れ上がっていく。

けれども、私はマコさんの舌の動きに合わせるように自分も少しだけ舌先を出して、マコさんのそれと絡めた。
互いの唇の隙間で、クチュ…クチュッ…と控え目だがむしろ卑猥な、水音が奏でられていく。
そうするとマコさんの鼻から大きな吐息が漏れて、勢いこちらも身体の力が抜けてしまった。

私の、元々閉じていた瞼に更に力が入って、ぎゅっと閉じながらもマコさんの身体にすがりつくように腕を回す。
もっとも、既に壁とマコさんの身体の間に挟まれている状態なので、さして身動きは取れないのだけれど。

軽く仰け反りそうになった時、マコさんの手が私の後頭部に回されて、唇が離れた。
私は恨めしくなり思わず目を開けてマコさんと視線を合わせる。

「バレッタが、取れちゃいそうだから」
「……あ、うん」

マコさんの心配はありがたかったが、下手にヘアアクセが壁に擦れたりしたら、クロスに傷を付けてしまうかもしれない。
その事に私は全く気付いていなくて、少し申し訳ない気持ちになる。どれだけ自分本意に切羽詰まっているのかと反省もした。

…そうして改めてマコさんの顔を見つめていると、マコさんの唇に、一部私の口紅の色が移っているのが見て取れた。
つまり私もおそらく同様の状況なのだろう。

剥がれてしまうほど激しく擦り合わせた訳じゃないけど、私のリップは赤が濃い目で、マコさんはピンク系の色だったから、マコさんの方が色移りが目立っているのではないか。

「口紅、塗り直さないと目立っちゃうかも」と私が呟くと、マコさんははっとしながらも、自分の事などおかまいなしに私の唇を凝視している。
それがどうにも恥ずかしくて、私は視線を下げてしまうのだけれど、そうすればしたで非日常的な自分達の装いが目に入り、こんな場で一体何をしているんだろうと、冷水を浴びせられたような気分になった。

マコさんは少し焦ったような口調で「…大丈夫、私は持ってるから」と言いながら、スーツのポケットに入れていた口紅を取り出している。
その間に、私はマコさんの肩越しに見知った人の姿を見た。
開け放たれた部屋の入り口に立つ人影を、私だけが視認できている。

マコさんの方は部屋の入り口に背を向けている状態なので、まだその事には気付いていない。

「……りりちゃん?」
「……」

私が言葉を発するよりも先に、部屋に入りかけたその人物が声を発した。

「見ちゃったよ…狙った訳じゃないのに」

声の主はそう、佐藤晴香だった。
ご丁寧に連れの梢さんもセットで傍に立っている。

「あ…その、晴香たんがちょっと酔っちゃったからここなら休めそうかなと思って……」

苦笑混じりに言い訳する梢さんだが、つまり彼女も「見た」という事なのだろう。
振り返ったマコさんは、梢さん同様苦笑するばかりだ。

「し、失礼しました…お休みください」

私がマコさんの手を引いて部屋を出ようとするけれど、佐藤晴香が通せんぼするような恰好で入り口からどいてくれない。

「もう、元気になりました」と佐藤晴香。
梢さんは「大丈夫なの?」と気遣わしげに彼女に声をかけているが、本当にもう良いらしい。

「…ほんっとにとんでもないよね、人に見られるかもしれない場所でそんな事しちゃって。と言うか見られたくってやってたんじゃないでしょーね」

それは誤解だ。だが即座に否定する言葉が出てこない。
佐藤晴香と正対する立ち位置になったのが良くなかったのか、私はいきなり説教されてしまった。

…いや、見られたいなどとは思っていなかったのだが、実際にやってみると得も言われぬスリルがあっていつも以上に興奮したのは事実なのだけれども。

「わざとじゃ、ないです…」
私としてはそう答えるのが精一杯だった。
佐藤晴香は「どーだか」などと呟いている。
半ば暴言まがいの発言に、梢さんは「まあまあ」と彼女をなだめようとしていた。

何が面白くないのか、佐藤晴香は今度はマコさんに対して「貴女も」と言葉を投げる。

「いまいちわかってなさそうなので言っておきますけど、その人…ガチな羞恥マゾでしょ?」
佐藤晴香の、そんな言葉が終わらぬうちに思わず梢さんが「そこまでは…失礼だから…」と割り込んで来た。

マコさんは一瞬息を引いたけれども、「りりちゃんと、した事あるんですか」と、妙に客観的な質問で応じる。

「今のでわかったんじゃないですか」
「……」
「じゃしっかり見ときますんで、改めてキスしたらわかりますよ、多分」

私と佐藤晴香は、正真正銘今日が初対面である。
でも、どうやら彼女にははっきりと見えるものがあるらしい。

私自身、願望止まりで自覚していなかったけれども、確かにさっきのシチュエーションで変に興奮したのは事実なのだ。

佐藤晴香は「そういうの、無自覚って言うのは…罪だと思いますけど」と、若干トーンダウンしながらもはっきりと言葉にする。
おそらく勘の鋭い人間にとって、「わかってない」感じを目の当たりにするのはさぞかし苛立つものなのだろう。
わかっているならくれてやるかどうかだけの話だが、そうでない場合延々と同じ過ちを繰り返す事も予想される。そういう、頭の悪そうなやり取りを、彼女はすこぶる嫌悪しているような気がした。

「余計なお世話だとは思いますけど、」

とっくにそのラインは超えてしまっている、佐藤晴香。
もはや止めようとしていた梢さんも半ば諦めた様子である。

「その人が本当に欲しがってるもの、ちゃんとしてあげなくちゃ…本気で好きなんだったら」
「……」

何か思う所があるのだろうか、マコさんは押し黙っている。

「信じたくない?信じられない?…でも本当にその人が羞恥マゾだと思ったなら、言うでしょ…普通に。だから、知らないだけなんじゃないの」

そうするとついに「あの~~」と、彼女の言葉に被せるように梢さんが佐藤晴香の口元に掌を押し当てて、引っ張り出した。
佐藤晴香はさして抵抗もせずにそのまま引きずられて行く。

二人の姿が消えて静寂の戻った部屋に、マコさんと私だけが残された。

「…マコちゃん」
「りりちゃん、大丈夫?」

私は一旦頷いたが、自分の中にわだかまるもやもやとしたものの正体を、佐藤晴香に言い当てられた気がして、もじもじしているばかりの自分に若干呆れを感じた。

「ん…、でも、あの人の言う通りだから」
「……」

経験値の乏しさを気にしているマコさんを気遣い、これまでなんとなくごまかしていた気持ちは自分でもわかっている。
わかっているからこそ、私は冴子様との逢瀬を辞めようとしなかったのだ。

でも、佐藤晴香の言う通り、本当に欲しいものをマコさんにねだる事をせずして、与えてもらうのを待つだけでいるのが正しいのかどうかと自問すれば、間違っているのかもしれない。

確かに私は羞恥心を大きな官能に変換できるし、それをつい追い求めてしまう所がある。
勿論、誰彼構わず見られたいという訳ではない。それこそ非難したり、通報したりしない人でなくてはダメだろう。

でも、確かに、マコさんの攻めは凄く優しいのだ。それはそれで気持ち良いけれども、それだけじゃなくて、もっと…という気持ちが高まってしまう時もある。
正に今も、そうなんだと思う。

ただ、それ以降どんな言葉を続ければ良いのかわからなくなり、重苦しい沈黙ばかりが続いてしまった。

それを打ち破ったのは、賑やかなさっきの二人。
今度は梢さんの方が先にこちらに近付いて来る。

「あ、ちょっと確認してみたら、お部屋…泊まって、好きに使っていいみたいでした」
「え……」

「という訳で堂々とやれますよ」と、あっけらかんとした様子で梢さんは伝えてきた。

何をですか、とは言葉にできない。
特に反応できずにいると、佐藤晴香と梢さんが入室した状態で、コネクティングルームの扉が閉じられてしまった。

ついでにカチリと内側から施錠された音まで聞こえて、それと同時に私の中でかろうじて保っていた理性がわずかに崩れるような感覚を覚える。

とは言えこれから「やれ」と言われたら言われたで、始まるものもどう始めれば良いのかわからない。

どういう訳だか、マコさんは佐藤晴香に真性のサディスト要素を見出しているらしく、彼女を見つめてはいるけれども私に何かする素振りはなくなってしまった。

いや…まさかとは思うけど。

「いいんですか」とだけ佐藤晴香は呟いた。
マコさんは特に何も言わず頷く。

「…だってさ」

顎をしゃくりつつ佐藤晴香は私にそう告げて来る。
それを、どこか自分に起きた事ではないような心持で私は受け止めていた。

実際にはそうじゃないんだけど、何だか、マコさんに呆れられたような気分にもなっているし、別にさほど魅力的だとも思っていない佐藤晴香は、それでも苛立ちと同時に私に対する嗜虐心をちらつかせていて。
彼女のパートナーたる梢さんも、佐藤晴香が苛立つ事は即ち、相手に嗜虐本能が働いている時なのだと心得ているような気がした。

「…別に私は、晴香さんとしたい訳じゃないんですけど」
「あ、そう…私だってそうですよ」

強烈な上から目線。
マコさんの佇まいを見ればわかるはずだが、佐藤晴香はどう考えても私の好むタイプとは異なる。
傍若無人な小悪魔女子に身体を預けて、無事でいられるかどうかもわからないのだ。
そんなリスクを負うのは正直、気が進まない。

「カマトトぶってるつもりはないんだろうけど、彼女にちゃんと、わかってもらった方が貴女にとっても良いんじゃないですか」
「どういう、事ですか」

答えている間に、私は部屋に二つあるベッドのうちの一つに押し倒された。
そのままいきなりロングドレスの裾をめくり上げられて、下半身が露出する。
脚にはライトベージュのストッキングを履いているけれど、それは今日はガーターベルトで吊るという形で身に着けていた。ガーターベルトと、やや小さめのショーツはドレスに合わせて黒のものを着用している。

「…なるほどね、気分が乗ればここも触ってもらうつもりだった訳ですか」
「そうじゃ、ないです…」

佐藤晴香の言及に対して、私は嘘を吐いた。
じつはこの内覧会に来る前にも、ドレスを着る前の恰好でマコさんに軽く触られて小さな絶頂を味わった上で、二人一緒にここへやって来ている。
勿論ショーツは履き替えたが、もしかするとガーターベルトで吊ったストッキングの内腿付近には、その時の愛蜜の汚れが少し付着しているかもしれなかった。

「はい、じゃ自分で脱いで下さい…ショーツだけ脱いで」
「え……」
「早く」
「あ、はい…」

どうして彼女の指示に従っているのだろうか、私は。
そしてようやく、マコさんはどうしているのかと思って視線を泳がせ探してみると、使っていない方のベッドに梢さんと並んで腰掛けつつ、二人してこちらの様子を観察している。
梢さんの片手はマコさんの腰に回されているのか、二人の距離は近過ぎる気がした。

いちいち抵抗するのも面倒になり、私は上半身を起こしてドレスの裾で下半身を隠しつつ、ショーツだけを脱いでそれをベッドの上に投げる。

「あーちょっと待って、それ拾って」
「……」

投げた自分のショーツを拾い上げて佐藤晴香の方を見る。

「どれぐらい濡らしたのか、自分で説明してください」
「え……」
「ほらちゃんと見て」

クロッチ部分を裏返すようにして佐藤晴香が私のショーツを手に握らせる。

「ね、ちょこっとキスしただけでバッチリ濡らすぐらいではあるでしょ」

ショーツを私に握らせる時にその場所が少し見えたのか、佐藤晴香は居丈高に私に質問する。

「……」

目の前には佐藤晴香が仁王立ち宜しく突っ立っているが、その向こう側には梢さんも、マコさんも居るのだ。
…でも、ここに居る全員が、少なからず私のはしたない言動を期待し、見届けようとしている雰囲気に充てられたと言えば言い訳くさいかもしれないが、それよりも何よりも、私は彼女らに、あさましい自分の姿を晒してしまいたいという衝動の存在を明確に自覚しているし、もう、その衝動に負けたとしても特に傷つく事もない、その為の場は整っていると言える状況だった。

だからと言う訳じゃないけど、どうにでもなれという気持ちが芽生えて佐藤晴香の指示に従う形で、私は本性を徐々に晒し始める。

「……べたべた、してます」
「面積は?」
「……500縁玉、ぐらいかな…歪んでますけど」
「ふーん」

そのまま私は、佐藤晴香の指示を待つ。

「んじゃどんな味なのか、自分で舐めて確認してください」
「え…」
「できるよね?ってか頼まれなくてもやってそうだけど」
「……わかりました」

私はおずおずと緩慢な動きで、露わになったショーツのクロッチ部分を食むように咥えて、それからじっとりと濡れた部分に舌先をあてがう。
匂いこそ酸っぱいような感じなのに、味としてはうっすらとした塩味しか感じなかった。

「少し塩っぽい味が、します」

私はそう呟いてから再びショーツの濡れたクロッチを食んだ。
舌先をあてがうとその場所が更にぬめりを増して、まるで誰かの股間を舐め回しているかのような、そんな錯覚に陥りそうになる。

「ちょっと、もうその辺で良いですよ…どんだけ熱心に自分のパンツ食べてるんですか」
「……ごめんなさい」
「あーまあずっと咥えていたいなら好きにしたら良いですけど」
「平気です」

佐藤晴香は、私をベッドに押し倒す事こそしてきたが、それ以降ほとんど、言葉による指示しかして来ていない。
彼女の指示に私が従い行動する、そういう時間が継続していた。

「…で本体の方はどうなんですか」
「……?」
「そのパンツが当たってた場所の事ですよ、わかります?」
「わかります」
「自分で触って、確認して、彼女に教えてあげてください」

今の私はベッド上で膝だけを合わせた、正座に近い恰好でぺたりと座っている。
その体制から、膝の上に乗っているドレスの裾をたくし上げ、太腿の間に指先を差し入れてその場所をまさぐった。
空いた方の手には先ほど脱いだ自身のショーツを握ったままで。

「……ヌルヌルになって…指で触ったらまた、溢れてきて…」
「はー、キスだけで大変な騒ぎですね、良い事だとは思いますが」
「良いんですか…」
「そりゃ、そうなんじゃないですか」

佐藤晴香はマコさんを一瞥する。マコさんは何も言わないが、顔を赤くしながらも嬉しそうに見えた。

「はい、じゃ後は何がしたいのか、自分で言ってください」
「……」

佐藤晴香の言葉攻めは実に巧だ。と言うかこれは天性の素質なのかもしれないと思った。

「あるでしょ?本当にしたかった事、彼女にして欲しい事を言ってください」
「……マコちゃんに、りりのおまんこ、弄って欲しい…です」

「それだけ?」
「それから、いっぱい、激しく…中を、掻き回して欲しい」
「んー、以上ですか?」
「あの、それから…指だけじゃなくて、いろんなもの使って、おまんこ犯して欲しいです」
「……」

「あと…」
「ほっといたら永遠に続きそうなので、その辺でいいです」
「はい……」

言いながら、密かに指先で自身の花弁を弄っていたのだが、それを佐藤晴香に見とがめられてしまった。

「なんか自分で弄っちゃって…オナニーしろって言ってないのに、勝手に始める勢いじゃないですか」
「…ごめんなさい、でも…」

「…ったく、やっぱりドスケベじゃないですか、貴女」
「………はい…リリはドスケベなんです、」

ごく小さな声だったけれど、私がついそう口走ってしまった瞬間、佐藤晴香の表情が少し歪んだ気がする。

「ちょっと、この人天然のどMですよね」

誰に向かって言っているのかはわかる。尋ねている相手はマコさんだ。
でもマコさん自身は私としか経験がないのだから、比較論で程度を理解してはいないはずだろう。
案の定マコさんは佐藤晴香の問いに答えなかった。

「はぁ、何だかこっちも興奮して来ちゃった♪」
あらぬ方向から聞こえた声は、梢さんの発したもので。

「ちょっと梢ちゃんってば」
佐藤晴香はそちらをちらりと見はしたけれど、こういうシチュエーションに慣れているのか、特にそちらに近付くでもなく一応といった風情で言葉だけで窘める素振りを見せただけで終わってしまった。

「んー……勝手にオナニーしてるから、気にしないで」
「ったく…あっちもこっちもオナニー始める変態ばっかなの…?」

この状況は、半ば佐藤晴香本人がそのようにしむけている側面もあるのだが、本人は意図しているつもりがないらしく。
髪型やメイクこそばっちり決まっているが、服装はあえて外しを入れているであろう佐藤晴香の佇まいには、わずかながら人間味を感じる事ができたけれど。

でも、高圧的な小悪魔美少女お嬢様に罵られる事にとてつもない官能を見出してしまう者が、たまたまここに二人いるという、それだけの話なのかもしれなかった。

「あ、ちょうど良いや、マコ…ちゃんって呼んで良い?」
けだるいような表情でベッドに横ず割している梢さんがマコさんに語りかける。

「…良いですけど」
「じゃマコちゃん、りりちゃん以外の女のするオナニー、見て良いよ」
「え……」

私は佐藤晴香に対して「大丈夫なのか」と視線で訴えた。
佐藤晴香は、やれやれといった表情で溜め息を吐くだけで、彼女に対してはそれ以上何も言わない。
梢さんの方は見ずに「私が嫉妬して、後でめちゃくちゃお仕置きされるのも期待してるからタチが悪い」と呟いた。

お仕置き、されるのか。
佐藤晴香の施す仕置きは相当苛烈だろうなと想像するが、好きな人には堪らないのだろう。

やはりこういう状況に慣れているのか、佐藤晴香はさっとこちらに向き直ると指示を再開する。

「じゃ、はい、四つん這いになって」
「……」
「彼女じゃなくて不本意だろうけど、後ろから指で弄ってあげる」
「………はい」

何故私は、見ず知らずの彼女の、卑猥な命令に素直に従っているのだろうか。
私のあさましい一面を一瞬で見抜いた事に感謝でもしているのだろうか、わからない。

それでも私は、ベッドに両手と両ひざをついてショーツだけを脱いだ下半身を佐藤晴香の前に晒す。
彼女は私のお尻を軽く何度か撫でて、それから痛みこそないが軽くぺちんとお尻を一度だけ叩いた。

「……っ」
「あ、ついつい叩いちゃった、すいません」
「私、お仕置きはお願いしてないです」
「まードスケベなんで特に理由なく叩かれてもしょうがないと思いますけどね」

「あの、指…入れてもらえないんですか」
「改めて聞きますけど、それ私に頼んでるんですか…?」
「……マコちゃんのが、いいけど…もう…何でも、良いです」

何もかも面倒になり思いつくままに言葉を発すると、佐藤晴香はにやりと笑った。
正にそれは、小悪魔の微笑。

服装もメイクも髪も、何一つ崩れた所などない。
そんな彼女の、見た目的には清潔な指が、私の秘部をまさぐろうとしている。

一体どれだけ乱暴にされるのだろうかと思いきや、指が細いからなのか、当初それが秘部に一本挿入されているという事に私は気付けなかった。
ようやくその指が出し入れを始めた所で、私は指の存在を認識し、知らず腰をゆるゆると振ってしまう。

「彼女でもない人間にいきなりおまんこの中弄られてるのに…感じちゃう訳ですか」
「あ、あの…あふ、ん……」
「もうどうでも良さそうですね、エゴマゾって感じ」
「エゴマゾ…?」
「自己中って事ですよ」
「……っ」

私は少しだけ打ちのめされたような、悲しいような気持ちになってしまう。
なんとなくその表現が、自分には似つかわしいと思ってしまったから。

「はい、で…他にありますか?彼女に言うべき事とか」

煽られずともある。わかっていて佐藤晴香は促しているのだ。

「触るのが許されないのなら…マコ、様に…見ていて欲しいです」
「…だそうです」

もう良い。どうせマコさんとの関係は私のオナニーショーから始まったようなものなのだ。
私はマコさんの方を直視できなかった。だからマコさんがどんな表情をしているのかわからないし、あるいは梢さんのオナニー鑑賞に釘付けかもしれないと思うと、どこからともなく湧き上がる嫉妬心を自覚した。

だからなのか、過激な事を言ってマコさんの気を引きたくて仕方なくなる。

「リリ、晴香さんの指でイっちゃっても…許して、ください」
「そんなにすぐイっちゃう訳ですか」
「あの、多分…」

佐藤晴香は、全く興味なさそうに、機械的に指を出し入れしているだけなので、現時点で絶頂までには程遠い気しかしない。
だがこの状況を安易に許し、マコさんのみならず梢さんにまでその模様を晒している自身の内側から、燃えるように熱い羞恥と官能が湧き上がるのを私は感じている。

それがおそらく秘部の状況にも現れたのだろう。指での刺激は大した事ないのに、私の花弁の割れ目からはとろとろと新たな蜜がこぼれ落ちていく。

「あーもう」と佐藤晴香は呆れた口調でぼやいているが、それは私にとって興奮を冷めさせる言動にはならなかった。

「あ…っ、あんっ…気持ち、いい」
「指がですか?それともみんなに見られてるのが?」
「どっちも、いいです…っ、あぁん」
「マコさん見てあげて…凄い興奮してるから」

マコさんの声は聞こえないし、恥ずかし過ぎてそちらを見る気力もない。
でも、マコさんにはこの光景を、目を反らさずに見ていて欲しいと願ってしまう。

身体がガクガクと震えて、私は背中を反らせながら派手にオーガズムを迎えた。
…行為としては、ほとんど何もされていないのに、である。

「あぁ…イっちゃったのに…何も、言えなくて、ごめんなさい」
「じゃ今度はちゃんとイくって言いながらイきましょう」
「え、あ…っ、あん」

先ほどよりももう少し技巧的な指の動きを、膣内が感じ取っている。
先ほどの動きとは対して違わないのに、それでも指の動きの変化はきっちりと拾い、自動的に身体が官能に変換していく。

「あ、また…」
「イくの早過ぎでしょ」
「ん、でも…っ、イっちゃいそうで…あ、イくの…また…っ、あぁぁっ」

「今回は良くできました」
「はぁ、あ……」

その瞬間、全く予期しない感触が秘部に伝わり私は身震いする。
それは、佐藤晴香の唇が私の秘唇に重なり、淫蜜を吸っていたからだ。

「あ、ダメ…それ、は…はぁんっ」

マコさんの顔を汚すのにさえ抵抗があるのに、性格はともかく著しく美麗な顔面の持ち主である佐藤晴香のそこを汚すのには強烈な抵抗があった。
彼女は、それもわかった上であえてやっているのだろうけれど。

「申告通りりりちゃんのおまんこ汁はほんのりしょっぱい味ですね」
「や、恥ずかし…い、です…」
「そういう事をマコさんには毎日のようにやらせてる訳でしょ」
「そう、なんですけど…」

「じゃ恥ずかしがるの変でしょ」
「っあ、あん…、あぁぁ」

それまではさして刺激されずにいた私の、充血した萌芽。
そこを何の前触れもなく、佐藤晴香は舌先を躍らせて弾いてくる。

「ひぃあぁっ、あくぅ…!」

またも申告する暇もなく達してしまい、私は肘の力が抜けて枕に顔を埋めてしまった。

「興奮し過ぎでしょ…じゃんじゃん溢れさせちゃって、舐めるのが追いつかないんですけど」
「ごめんなさい…でも…ん、いやぁ…ん、ペロペロ、しちゃ…あぁ、ん…!」

佐藤晴香の舌の動きは容赦なく、萌芽と言わず花弁と言わず、膣口と言わず所かまわず舌を暴れさせて蹂躙してきた。
私はその目くるめく刺激に、我を忘れてしまう。

「マコ、ちゃ…ん、リリいっぱいイっちゃってる…見られて興奮してる…」

私の、半ば叫び声に合わせるかのように、佐藤晴香は私の秘部をズルズルと盛大に音を立ててすすり始めた。

「恥ずかしい、そんな…しちゃ…っ、あう、イくっ…!」

自分でも信じられないぐらいに短時間で何度も絶頂してしまっている。佐藤晴香の愛撫はまだ、花弁と萌芽、膣口だけに施されているだけなのに。
どうして…なんだろう。

そして隣のベッドからも、穏やかではあるが十分に熱っぽい空気が漂っているのがわかる。
密やかな吐息を漏らしながら自分を慰める、梢さんの放つものだ。

指先で派手に花弁を弄っているからか、彼女の秘部は私の耳にも聞こえてしまうぐらいにぴちゃぴちゃと軽やかな水音を立てていた。

…そう。本来佐藤晴香の口淫を欲しているのは梢さんなのだ。
彼女はおそらく、佐藤晴香の言葉攻めや口淫を受けている私に、感情移入しているのだろう。

「あ、あ……っ、あんっ」

彼女の恍惚とした表情が視界に入り、それと同時に私の秘部には華奢だが元気に動き回る、小悪魔の卑猥な舌が突き刺さっている。
今はその舌先が、膣口の中にまでぐりぐりと押し込まれて、更に指先で萌芽をしごかれ始めてしまい、私のオーガズムは一段深いものへと変わっていった。

「あ、ふぅ…ん、また、イっちゃうの…あぁぁっ」

あまりにも頻繁に、繰り返し達している私に対して、佐藤晴香は言葉ではなく私の太腿を軽くペチペチと叩く事で制してくる。

「ごめん…なさい…どうしても…んん」
「…まったく」

私ががくがくと身体を痙攣させ、泣きそうになるとようやく、佐藤晴香は私の秘部から顔を離した。

「個室とは言えここがどこだか、わかってるんですか…」
「……」
「貴女一人で盛大に、あんあん喘いでるんですけど」

私ははっとした。
その事を認識していない訳ではなかったのだが。
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その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

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