穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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2年2学期

20話:文化祭、騎士と邪竜の共同演目 ②

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 クロードとルカを巻き込んだ、文化祭演目の打ち合わせで発表されたガネマルの提案はこうだった。
 うちの国の有名な伝説に出てくる偉人である騎士と魔術師。その彼等が激闘を繰り広げた場面を再現した魔法剣舞を学園で1番広い校庭で披露したいのだという。

 この伝説は、のちに建国に携わる騎士と魔術師が初めて出会い、ぶつかり合い、その後和解し絆を深めるという内容でうちの国でも人気が高いものだ。子供からお年寄りまでみんなが知ってる内容を題材にして、剣技と魔法のレベルの高さで魅せるというのは、わかりやすく集客が見込めるいい案だと思う。ただ……

「……興味ない」

 ガネマルの渾身のアイデアはルカのお眼鏡にはかなわなかったみたいで、話がそこで途切れてしまう。ルカの機嫌は相変わらず悪いし、流石にこれ以上の説得は難しそうだ。ゴリ押ししてルカがもっと不機嫌になるよりは、去年と同じ騎士コースの演舞中心で何かできないか考える方が建設的なんじゃないかと思い俺がそう提言しようとした時

「僕は、ルナソールに、ルナソールの学園演劇に勝ちたいんです!!」

ガネマルの熱意のこもった一言が中庭に響いた。

「……ルナソール」

 その言葉を受け、ルカの視線が少しだけ上を向いたのを俺は見逃さなかった。ルカは無口な分行動がわかりやすい。これは、ほんの少しだけ興味を持ってる顔だ。

「確かにこれが実現できたらあの演劇よりすごいかも?俺見てみたいな」

 すかさず俺は本心も込めつつガネマルのアシストをする。

「勿論お二人に丸投げはしません、僕達文化祭実行委員が全力でアシストしますから、きっと最高の演目になります!!」

 ガネマルもそれに続く。

「……フレンが、そう言うなら……やってもいい」
「あ……」

 俺達の言葉を受けて、深緑の瞳が真っ直ぐ俺を見つめ判断を委ねてくる。一見全てがうまくいきそうなこの流れ、だけど俺は少しだけその流れに身を任せることを躊躇した。
 なぜかというと、ルカはいつもこうだから。何かを決める時、俺の意見を聞きたがる。俺は少し前から、ルカのその癖に気がついていた。そして、それはルカを利用しているみたいで俺には居心地が悪い関係だった。

「……確かに、見たいって言ったけど、ルカがやりたくないならしなくていいよ。ルカの気持ちで答えて」

 だから、俺はあえて流れを止める一言を口に出す。
 ガネマルには悪いけど、このまま俺がやりたいことにただルカがついてきてくれるって状態はきっとどっちにとっても良くない。だから話がまとまりかけた段階ではあるけど俺はルカにそう問いかけた。

「……俺、は」

 俺の言葉にルカの瞳が僅かに泳ぐ。
 いきなり突き放すような事を言ってしまったかもしれない。だけど、俺はルカがやりたい事を自分で決めて欲しかった。

「…………わからない……けど」

長い沈黙の後、ルカが辿々しくゆっくりと言葉を紡いでいくのを俺は静かに聞いていた。

「……ルナソールには勝つ」
「ルカ……」

 勝負事が苦手な俺には文化祭の勝ち負けという尺度はない。だから、ルカが初めて選んだその選択は……厳密にはやりたい事とは違うかもしれないけど……確かにルカの心から出てきたものだった。

 ◇

「それじゃあ、詳しい話はまた後ほど!」

 色々あったけど、打ち合わせは無事終わり、クロードとルカに協力をとりつけられたガネマルは笑顔で教室に戻って行った。

「クロード、ルカ、話聞いてくれてありがと。準備は俺も手伝うからいい文化祭にしようね」

 俺は左右に視線をやり、2人に声をかける。

「ああ」
「……うん」

 クロードはまっすぐ、ルカは少し間を置いて返事をしてくれた。

「それにしても、ルカもルナソールの事気になってたんだ?やっぱり学園演劇がすごかったから?」

 正直ルカが承諾するとは思ってなかったので、俺はその驚きも込めつつ言葉をかけた。

「……あいつは嫌いだから」

 俺の言葉に答えながらルカの眉間に皺がよる。

「あいつって?」
「……監督」

 なるほどね、俺はルカの言葉で先日の他校交流会の日のことを思い出す。俺をナンパして、ルカを挑発した銀髪赤目の男、ジン。確かにルカはジンのことが嫌いそうだったし、実際あのときイラついてたしね。
 ふと横を見るとクロードもなんとも言えない顔をしていた。あの日の事はクロードにも共有してるから思うところがあるのかもしれない。

 ルカのこれはあんまりプラスなモチベーションではないかもしれない。だけど、何はともあれルカが文化祭に参加してくれるのは悪いことじゃないと思う。

「俺たちも教室戻ろっか」

 少し冷たい秋風が頬を撫でる中庭で、俺は2人にそう声をかけ、席を立った。

 ◇

「なんで俺まで出ることになってるの??」

 文化祭準備初日、黒板に張り出されたキャスト表を見て、俺はガネマルに詰め寄った。

「頼むよフレン君!建国の姫の役は君しかいないんだ!!」
「いや、他に女の子いくらでもいるじゃん!!」

 前にも言ったけど俺は可愛い。それは公然の事実で俺自身も自負してる。去年の文化祭のミスコン……色んな種族のいるうちの学校では性別じゃなくて優美部門(可愛さ、綺麗さ)と精悍部門(逞しさ、かっこよさ)で開催してる……に副賞のギフト券目当てで応募したところ

「最初から結果が見えてると盛り上がらないので」

というなんとも言えない理由で参加を断られ勝手に殿堂入りさせられるレベルには自他共に可愛い自覚があるわけだけど……

「俺女装とかしたくないし、人足りないのかもだけどよりによってなんで姫役なの??」

 そう、俺は俺の可愛さを誇ってはいるけど女の子になりたいわけではないのだ。女の子みたいに可愛いって言われるのは別にいいけど、スカートが履きたいわけではない。

「最高の出し物にする為には、姫役も妥協できないんだ!ルナソールで僕は学んだ……ヒロインは時に主役より人を惹きつける!!」

 確かにルナソールの学園演劇では主役の暴君邪竜もかなりかっこいい人だったけど聖女役のひとがものすごく綺麗な人で、彼女には俺も見とれた。きっとガネマルもそうなんだろうけど、でもうちの学校可愛い子多いしわざわざ俺を選ぶ理由がわからない。

「一応、めぼしい女子に声はかけたんだが、皆一様に『フレン先輩差し置いて出る度胸ない』『クロード先輩と共演は最高だけどフレンに勝てる気しない』と、君を理由に断られてもう候補がいないんだ!」

 なかなかの苦労が伺えるその台詞に、ガネマルも勝手に俺をキャスティングしたわけではなく、色々考えた結果だという事は伝わる。というか断る理由の大半が俺ってどういうこと?普通こういうのって演技に自信がないとかそういう理由じゃない?

 まさか自分の可愛さが仇になり、窮地に追い込んでくるとは……もしかして可愛いは正義じゃなくて罪なのかも?なんて俺が現実逃避をしても目の前のキャスト表は変わらない。

「俺、演技とかできないし魔法も得意じゃないから役に立てないよ」

 この演目は魔法演舞だ。演技経験もなく、魔力量も普通で成績も平均な俺にできることなんてない。情けない意見ではあるけどこれを材料に俺は精一杯の反論を試みる。

「建国の姫の出番はラストだけ、それも魔法演出は補助術師がやるから立っているだけでいいんだ!……だから頼む!!」

 うーん、衣装を着てたった数分立ってるだけの役ときたか。無理難題をふっかけられたら逆に断りやすいけど、ここまでお膳立てされた物を断れる理由は中々ない。立つのがやだとか言うのは流石に気が引けるしね。

「……本当に立ってるだけでいいんだよね……?」
「勿論だ!!あとは全てこちらでサポートする体制ができてる!!」

 結局俺はガネマルの熱意と周りの用意周到さに負けて姫役を引き受けることになったのだった。こうなるんだったら打ち合わせの時にルカに断ってもらった方が良かったんじゃないかな?なんて後悔してももう遅かった。こうなったらやるしかないよね。
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