31 / 131
2年2学期
31話: 腹黒吸血鬼との最悪デート ③
しおりを挟む
この話を聞く前から本当は少しだけ気がついていた。ジンも俺と同じ孤独を知ってるんじゃないかって。ジンが俺の秘密――俺に夢魔の血が流れてることを知った時、彼は俺に夢魔らしい振る舞いを一切求めなかったから。
エロい。やらせてくれる。そういうことをしてもいい相手。
それが世の中に広がる俺達のパブリックイメージで、そういう事を語った商品なんかも当たり前の顔をして売られている。いくら俺達がそうじゃないって叫んでも、根付いたイメージは簡単に消えないどころか顔も見えない誰かが、夢魔でもない奴が、間違ったイメージの方を正しいと主張して俺達にそういう目を向ける。
(何を言っても、俺達の声は届かない)
そんな世界を変えるより、俺達がそれを隠した方が手っ取り早くて楽だから、だから俺は俺に流れる血のことを隠してる。クロードやルカみたいに俺の正体を知っても態度を変えない人の方が珍しい。
だって世界は変わらない。変えやすい方を変える方がずっとずっと楽だから。だけど、ジンはそんな目線で俺の事を見ることは一度もなかった。ナンパはしてきたけど俺の正体を知った後もその態度は変わらなかった。
今日1日過ごしてみて、俺はジンと話してて楽な理由がわかった。ジンの言葉は軽薄で、人の心を逆撫でたり、誘導したりするけれど、根底に俺と同じ孤独を抱えているから心の底からは無視できない。
そして、ジンの前で俺の弱さが出る理由もわかってしまった。俺の心の1番弱い所にある孤独が同胞を求めて顔を覗かせるから、俺はジンの前では孤独な俺として話ができる。
「俺言葉きついし、ジンにとって俺はいい奴じゃないと思うけど、それでもジンは嬉しいわけ?」
ジンの前での俺は、俺が隠したい弱くて醜い嫌な奴だと思う。笑いかける事もしないし、かける言葉も感情に任せた辛辣な物が多い。そうさせてるのはジンだけど、相手が誰であってもよくない態度ではある。種族的に、身体的に弱いのは仕方なくても心まで弱いのは俺の問題で、言い訳できない。この間のクロードへの八つ当たりと一緒だ。
だからそんな俺を知ってるジンが俺と一緒にいたがる理由がわからなくて、でもそんな俺を知ってるジンにだからこそ俺は聞いてみたくなった。
「それがフレンの良いところじゃない?俺は一緒にいれて嬉しいよ」
「どこが……」
軽い調子で返された答えは曖昧な上、全く納得できる物じゃなくて俺は聞き返す。
「フレンの言葉は、本当の相手を見てるってわかるから。思ってもない事は言わないでしょ?」
「本当の相手……?」
そんな目線で考えたことはなかった。もちろん人には本音と建前があるのはわかってるけど、ジンが言ってるのはそういう事じゃないだろう。
俺は本当の俺について考える事が良くあるけど、もしかして周りの人も同じ様に悩んでるのかな?夢魔じゃなくても、普通の人でも、種族を隠してなくても。
「うん、そう。フレンは多分それがわかるから、相手の前で相手が望むように振る舞っちゃうんじゃない?」
「そんなことは……」
ない、とは言い切れなかった。もちろん人に媚を売ってるとかじゃないけど、普段ならあの日のクロードの発言にだって俺は心の底で思ったあの言葉じゃなくて、クロードの言葉を素直に受け取れる俺で返していただろうから。ジンの言うような相手の望む姿ってのはわからないけど、俺は俺の弱いところが見えないように振る舞ってはいると思う。
「だって、そうしないと弱い俺の嫌なところが出るから……」
「でもそれも本当のフレンなんだから隠さなくてもいいんじゃないかなぁ。大事なのは伝え方じゃない?」
「伝え……方」
本当の俺、俺が知りたい答えをジンは難なく口にする。適当に言ってるのかもしれない。だけどジンとの会話で、ちょっとだけ俺は俺の中の弱さとの付き合い方が見えてきた気がしていた。
嫌われちゃうかもしれないけど、弱い自分を認めて伝えてみたら、少しは変われるのかな?弱い自分を受け入れられたらほんの少しマシな本当の自分になれるかもしれない。
自分では気がつけなかった、ジンだからこその提案。うまくいくかはわからないけど、俺はあの時俺が思った事をクロードに伝えてみたいと思えた。
「少しだけ、やってみようかな……その、参考になった、から……」
続く感謝の言葉は声に出せなかったけど、そう小さく呟いた俺に
「ね?俺たちもっと仲良くなれると思わない?」
脳を溶かすような甘い声でジンが笑い、手を伸ばしてくる。
最初は、ジンが俺の秘密を握った時、彼はそれを利用して強請ってくるのかと思った。だけど多分この男はそんなことしない。だってもし俺の秘密を暴露したらジンの求めてる孤独の同胞はいなくなるから。つまり今日のこれはものすごく回りくどい友達作りの一環というわけだ。非常にめんどくさくて、性格が悪いけれど悪意はない、彼はきっとそんな男なんだろう。
「けど俺はジンのこと好きじゃない」
差し出されたジンの手の上に、俺は勝手に買ってつけられた重い髪飾りを髪から外して乗せる。
「やっぱりフレンって最高……!またデートしようね」
目の前で思いっきり振られたにも関わらず心の底から嬉しそうに笑うジンを見て、誇張抜きにやばい男だなと思う。でもほんの少しだけ、今日ここで話せたことだけは悪くなかったんじゃないかなと、俺は口には出さないけどそう思った。
曇り空の切れ目からほんの少し覗く夕焼けの光は目の前の男の瞳と同じ、引き込まれるような赤色で周囲を静かに染めて夜の訪れを待っていた。それを眺めながら聞くジンの声ははじめて聞いた時よりほんの少しだけ心地よい様なそんな気がした。
エロい。やらせてくれる。そういうことをしてもいい相手。
それが世の中に広がる俺達のパブリックイメージで、そういう事を語った商品なんかも当たり前の顔をして売られている。いくら俺達がそうじゃないって叫んでも、根付いたイメージは簡単に消えないどころか顔も見えない誰かが、夢魔でもない奴が、間違ったイメージの方を正しいと主張して俺達にそういう目を向ける。
(何を言っても、俺達の声は届かない)
そんな世界を変えるより、俺達がそれを隠した方が手っ取り早くて楽だから、だから俺は俺に流れる血のことを隠してる。クロードやルカみたいに俺の正体を知っても態度を変えない人の方が珍しい。
だって世界は変わらない。変えやすい方を変える方がずっとずっと楽だから。だけど、ジンはそんな目線で俺の事を見ることは一度もなかった。ナンパはしてきたけど俺の正体を知った後もその態度は変わらなかった。
今日1日過ごしてみて、俺はジンと話してて楽な理由がわかった。ジンの言葉は軽薄で、人の心を逆撫でたり、誘導したりするけれど、根底に俺と同じ孤独を抱えているから心の底からは無視できない。
そして、ジンの前で俺の弱さが出る理由もわかってしまった。俺の心の1番弱い所にある孤独が同胞を求めて顔を覗かせるから、俺はジンの前では孤独な俺として話ができる。
「俺言葉きついし、ジンにとって俺はいい奴じゃないと思うけど、それでもジンは嬉しいわけ?」
ジンの前での俺は、俺が隠したい弱くて醜い嫌な奴だと思う。笑いかける事もしないし、かける言葉も感情に任せた辛辣な物が多い。そうさせてるのはジンだけど、相手が誰であってもよくない態度ではある。種族的に、身体的に弱いのは仕方なくても心まで弱いのは俺の問題で、言い訳できない。この間のクロードへの八つ当たりと一緒だ。
だからそんな俺を知ってるジンが俺と一緒にいたがる理由がわからなくて、でもそんな俺を知ってるジンにだからこそ俺は聞いてみたくなった。
「それがフレンの良いところじゃない?俺は一緒にいれて嬉しいよ」
「どこが……」
軽い調子で返された答えは曖昧な上、全く納得できる物じゃなくて俺は聞き返す。
「フレンの言葉は、本当の相手を見てるってわかるから。思ってもない事は言わないでしょ?」
「本当の相手……?」
そんな目線で考えたことはなかった。もちろん人には本音と建前があるのはわかってるけど、ジンが言ってるのはそういう事じゃないだろう。
俺は本当の俺について考える事が良くあるけど、もしかして周りの人も同じ様に悩んでるのかな?夢魔じゃなくても、普通の人でも、種族を隠してなくても。
「うん、そう。フレンは多分それがわかるから、相手の前で相手が望むように振る舞っちゃうんじゃない?」
「そんなことは……」
ない、とは言い切れなかった。もちろん人に媚を売ってるとかじゃないけど、普段ならあの日のクロードの発言にだって俺は心の底で思ったあの言葉じゃなくて、クロードの言葉を素直に受け取れる俺で返していただろうから。ジンの言うような相手の望む姿ってのはわからないけど、俺は俺の弱いところが見えないように振る舞ってはいると思う。
「だって、そうしないと弱い俺の嫌なところが出るから……」
「でもそれも本当のフレンなんだから隠さなくてもいいんじゃないかなぁ。大事なのは伝え方じゃない?」
「伝え……方」
本当の俺、俺が知りたい答えをジンは難なく口にする。適当に言ってるのかもしれない。だけどジンとの会話で、ちょっとだけ俺は俺の中の弱さとの付き合い方が見えてきた気がしていた。
嫌われちゃうかもしれないけど、弱い自分を認めて伝えてみたら、少しは変われるのかな?弱い自分を受け入れられたらほんの少しマシな本当の自分になれるかもしれない。
自分では気がつけなかった、ジンだからこその提案。うまくいくかはわからないけど、俺はあの時俺が思った事をクロードに伝えてみたいと思えた。
「少しだけ、やってみようかな……その、参考になった、から……」
続く感謝の言葉は声に出せなかったけど、そう小さく呟いた俺に
「ね?俺たちもっと仲良くなれると思わない?」
脳を溶かすような甘い声でジンが笑い、手を伸ばしてくる。
最初は、ジンが俺の秘密を握った時、彼はそれを利用して強請ってくるのかと思った。だけど多分この男はそんなことしない。だってもし俺の秘密を暴露したらジンの求めてる孤独の同胞はいなくなるから。つまり今日のこれはものすごく回りくどい友達作りの一環というわけだ。非常にめんどくさくて、性格が悪いけれど悪意はない、彼はきっとそんな男なんだろう。
「けど俺はジンのこと好きじゃない」
差し出されたジンの手の上に、俺は勝手に買ってつけられた重い髪飾りを髪から外して乗せる。
「やっぱりフレンって最高……!またデートしようね」
目の前で思いっきり振られたにも関わらず心の底から嬉しそうに笑うジンを見て、誇張抜きにやばい男だなと思う。でもほんの少しだけ、今日ここで話せたことだけは悪くなかったんじゃないかなと、俺は口には出さないけどそう思った。
曇り空の切れ目からほんの少し覗く夕焼けの光は目の前の男の瞳と同じ、引き込まれるような赤色で周囲を静かに染めて夜の訪れを待っていた。それを眺めながら聞くジンの声ははじめて聞いた時よりほんの少しだけ心地よい様なそんな気がした。
9
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中
油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。
背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。
魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。
魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。
少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。
異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。
今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。
激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる