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3年1学期
94話: 夏星祭、吸血鬼との気まぐれな一夜③
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「ちょっと!そういうのやめてよね!」
「ごめんごめん、フレンが可愛くてつい……ね」
エリオ君と別れた後もジンは俺から手を離そうとしなかった。俺はいい加減暑いし鬱陶しいので振り解こうとしているんだけど中々うまくいかない。人が多くて大きく動けないのが厄介だ。そのまま少しの間格闘して、俺が諦めかけた時
「また変なのに絡まれてんのか?」
聞き慣れた、少し掠れた低い声が聞こえたと同時にジンの手が俺から離れた。
「カイ!今年も来てたんだ」
「夏星見ねぇだけで出店は見てぇからな」
「わかるー!色んなもの見れて楽しいもんね」
この広い会場でエリオ君と会ったのも偶然だったけど、カイとも会うなんて凄い確率だと思う。去年もカイとは約束してないのに会ったから行動範囲が似てるのかも?
「いたた、俺無視して話すのやめてくれないかなぁ」
「なぁ、こいつ不審者として突き出しとくか?」
カイに腕を掴まれているジンが大袈裟に訴えてくるけど、自業自得だと思う。俺は正直カイの提案に頷きたい気持ちもあったけど
「あー、そうして欲しいけど……今日は絡まれてたわけじゃないから大丈夫」
「は?どう見ても絡まれてただろ」
「その………ジンとは一応一緒に祭りを回ってて……」
「………は?」
うっ、カイの目線と沈黙が痛い。そうだよね。カイが言いたいことはわかるんだけど、ここまで露骨に引かれるときついものがある。
「今年はクロードから行けないって言われたところに、たまたま誘われて……」
「嘘だろ、お前……前から思ってたけど人選センス壊滅してねぇか」
「お、俺だって最初は他の人と行こうと思って色々誘ったけど、みんな都合悪かったから……」
カイからの鋭い指摘が胸に刺さり俺は早口で言い訳をした。だけどそれを聞いたカイの表情が一瞬固まり、そのまま少し寂しそうに
「それなら俺誘えよ……」
と呟いたのが聞こえたので俺は慌てて弁解する。
「最初にカイ誘おうって思ったけど、前に夏星苦手だって言ってたから……」
「音うるせぇけど別に見れねぇわけじゃねえよ、ただ一人で見る程興味ねぇってだけで」
その答えを聞いて、ここでいつもなら俺はカイも誘って一緒に祭りを回っていたと思う。
「じゃあ今度はカイにも声かけるから、次は一緒に見よ?」
「……お前こいつとこの後も回るつもりか?」
「まぁ、一応約束しちゃったしね」
だけど、俺はそれを次の約束に託す事にした。俺の言葉の意図を察したカイが怪訝な顔をする。
カイは俺がジンに絡まれてると思って助けてくれたわけだから少しだけ申し訳ない。俺だってカイと夏星を見たくないわけじゃない。ただ、まださっきのジンとの話が終わってなかったし、面倒だけどジンとの会話は他の人がいるとできないから。
「声かけてくれてありがとね、カイ」
「…………俺まだ祭り回ってっから、なんかされたら連絡しろよ」
少し強張った顔でカイがそう言うのを聞いて、俺はジンって本当に信用ないんだなって事を確信する。そのまま手を振って、何度かこちらを心配そうに振り返るカイの背中が小さくなっていくのを眺めながら俺はジンに声をかけた。
「……それで、ジンが見たいものって何?誤魔化さないでちゃんと答えて」
「さっきのも本当なんだけどなぁ」
「そういうのいいから」
ヘラヘラと笑うジンを促して俺が答えを待っていると不意にジンが真っ直ぐに俺を見つめて口を開く。
「フレンと2人で夏星が見てみたいな」
とても静かな声で返された言葉は、いつもみたいな軽さがなくて妙に耳に残る。
「俺、夏星祭に来るの初めてなんだよね。」
「え?そうなの?」
夏星祭はこの国だけでなく世界的に有名で人気な祭りだ。だからそんな人がいるなんて俺は信じられなかった。カイみたいに夏星が苦手とかそういうこと?
「俺達は一途なんだよ」
「なにそれ?」
俺は一途から一番遠いところにいそうな男が何を言ってるんだかと思ったけど、ジンはそれ以上説明をしなかった。いつもは頼んでなくても話すのに、こういう時に限って言葉数が少ないのはなんでだろう。
「まあ、それが見れるかは今後の行動次第だけど、夏星は綺麗だから見れるといいね」
これ以上聞いても埒が空かないと思って、俺は牽制の意味を込めてこう返す。調子に乗った事を言われたら即帰るつもり。
「一緒に見てくれる気があるんだね。嬉しいなぁ」
だけど、俺の言葉尻を捕まえていつも通りヘラヘラと笑うジンがあまりに嬉しそうだったから、何だか毒気が抜かれて帰る気もなくなってしまった。
「……まだ回れてない出店あるから、さっさとしてよね」
それには答えず、俺はジンの方を見ずに出店の方へ向き直る。そのまま足早に進み出店回りへ戻った。後ろから妙に嬉しそうな声でジンが追いかけてくるけど振り返るのはやめておく。
……なんだかこのままじゃ調子が狂ってしまいそうだったから。
「ごめんごめん、フレンが可愛くてつい……ね」
エリオ君と別れた後もジンは俺から手を離そうとしなかった。俺はいい加減暑いし鬱陶しいので振り解こうとしているんだけど中々うまくいかない。人が多くて大きく動けないのが厄介だ。そのまま少しの間格闘して、俺が諦めかけた時
「また変なのに絡まれてんのか?」
聞き慣れた、少し掠れた低い声が聞こえたと同時にジンの手が俺から離れた。
「カイ!今年も来てたんだ」
「夏星見ねぇだけで出店は見てぇからな」
「わかるー!色んなもの見れて楽しいもんね」
この広い会場でエリオ君と会ったのも偶然だったけど、カイとも会うなんて凄い確率だと思う。去年もカイとは約束してないのに会ったから行動範囲が似てるのかも?
「いたた、俺無視して話すのやめてくれないかなぁ」
「なぁ、こいつ不審者として突き出しとくか?」
カイに腕を掴まれているジンが大袈裟に訴えてくるけど、自業自得だと思う。俺は正直カイの提案に頷きたい気持ちもあったけど
「あー、そうして欲しいけど……今日は絡まれてたわけじゃないから大丈夫」
「は?どう見ても絡まれてただろ」
「その………ジンとは一応一緒に祭りを回ってて……」
「………は?」
うっ、カイの目線と沈黙が痛い。そうだよね。カイが言いたいことはわかるんだけど、ここまで露骨に引かれるときついものがある。
「今年はクロードから行けないって言われたところに、たまたま誘われて……」
「嘘だろ、お前……前から思ってたけど人選センス壊滅してねぇか」
「お、俺だって最初は他の人と行こうと思って色々誘ったけど、みんな都合悪かったから……」
カイからの鋭い指摘が胸に刺さり俺は早口で言い訳をした。だけどそれを聞いたカイの表情が一瞬固まり、そのまま少し寂しそうに
「それなら俺誘えよ……」
と呟いたのが聞こえたので俺は慌てて弁解する。
「最初にカイ誘おうって思ったけど、前に夏星苦手だって言ってたから……」
「音うるせぇけど別に見れねぇわけじゃねえよ、ただ一人で見る程興味ねぇってだけで」
その答えを聞いて、ここでいつもなら俺はカイも誘って一緒に祭りを回っていたと思う。
「じゃあ今度はカイにも声かけるから、次は一緒に見よ?」
「……お前こいつとこの後も回るつもりか?」
「まぁ、一応約束しちゃったしね」
だけど、俺はそれを次の約束に託す事にした。俺の言葉の意図を察したカイが怪訝な顔をする。
カイは俺がジンに絡まれてると思って助けてくれたわけだから少しだけ申し訳ない。俺だってカイと夏星を見たくないわけじゃない。ただ、まださっきのジンとの話が終わってなかったし、面倒だけどジンとの会話は他の人がいるとできないから。
「声かけてくれてありがとね、カイ」
「…………俺まだ祭り回ってっから、なんかされたら連絡しろよ」
少し強張った顔でカイがそう言うのを聞いて、俺はジンって本当に信用ないんだなって事を確信する。そのまま手を振って、何度かこちらを心配そうに振り返るカイの背中が小さくなっていくのを眺めながら俺はジンに声をかけた。
「……それで、ジンが見たいものって何?誤魔化さないでちゃんと答えて」
「さっきのも本当なんだけどなぁ」
「そういうのいいから」
ヘラヘラと笑うジンを促して俺が答えを待っていると不意にジンが真っ直ぐに俺を見つめて口を開く。
「フレンと2人で夏星が見てみたいな」
とても静かな声で返された言葉は、いつもみたいな軽さがなくて妙に耳に残る。
「俺、夏星祭に来るの初めてなんだよね。」
「え?そうなの?」
夏星祭はこの国だけでなく世界的に有名で人気な祭りだ。だからそんな人がいるなんて俺は信じられなかった。カイみたいに夏星が苦手とかそういうこと?
「俺達は一途なんだよ」
「なにそれ?」
俺は一途から一番遠いところにいそうな男が何を言ってるんだかと思ったけど、ジンはそれ以上説明をしなかった。いつもは頼んでなくても話すのに、こういう時に限って言葉数が少ないのはなんでだろう。
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これ以上聞いても埒が空かないと思って、俺は牽制の意味を込めてこう返す。調子に乗った事を言われたら即帰るつもり。
「一緒に見てくれる気があるんだね。嬉しいなぁ」
だけど、俺の言葉尻を捕まえていつも通りヘラヘラと笑うジンがあまりに嬉しそうだったから、何だか毒気が抜かれて帰る気もなくなってしまった。
「……まだ回れてない出店あるから、さっさとしてよね」
それには答えず、俺はジンの方を見ずに出店の方へ向き直る。そのまま足早に進み出店回りへ戻った。後ろから妙に嬉しそうな声でジンが追いかけてくるけど振り返るのはやめておく。
……なんだかこのままじゃ調子が狂ってしまいそうだったから。
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