穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

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3年1学期

93話: 夏星祭、吸血鬼との気まぐれな一夜②

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 流石は夏の一大イベントの夏星祭。
 同伴者選択のミスも帳消しにするくらい楽しいことが目白押しで俺はわりと楽しく過ごしていた。
 ……いや、同伴者についても一概にミスとまではいえないのかもしれない。なぜかというと……

「今の人形劇、変わった話だったけど面白かった!」
「人魚族の古代の民話を元にアレンジが加えてあったね。演者の人は海洋系の種族かな」
「……へぇ、そうなんだ。元はどんな話なの?」

 こんな感じでジンは色んなことに造詣が深い上、話がとても上手いから。凄く癪だけど、この人形劇についての話も知識のひけらかしではなく、俺の疑問やストーリーの補足になっていた。そのおかげで一人で見るより確実に面白くなる手助けになっている。

 一緒にいてわかった事として、ジンは普段の性格の悪さと距離感のおかしささえなければ割と一緒にいるのが苦にならないタイプだった。俺の正体どころか、隠してる感情まで知っているジンの前では本音を取り繕わなくていいのも見方を変えれば楽ではある。まあ、欠点が大きすぎるから俺はジンのことが苦手なんだけど。

 (そういえばクリスフィアさんの誕生日会でも……)

 3月に招待されたクリスフィアさんの誕生日会。俺はそこで彼が、大勢の人に良い意味で囲まれていた事を思い出す。社交マナーとかはよくわからないけれど、ジンは素人目にも洗練された所作で淑女達と会話をしていた。その時のジンは俺の知ってる彼とは違って……変な言い方だけどちゃんとした紳士みたいだった。もし俺が本性を知らずにあの姿だけ見ていたら好感を持っていたかもしれない位には。

 (じゃあなんでジンはその姿で俺に接してこなかったんだろう?)

 ジンは変な奴だけど、頭は悪くない。それどころか多分かなり賢いと思う。だから俺とこんなに出かけたがるくらいならもっと人当たりのいい演技だってできる筈。なのになんで素のままで俺の前に現れたんだろう。

「フレン、あそこの出店興味ない?」
「え?氷魔法の細工屋さん?わぁ綺麗……」

 ジンの言葉に振り返ると、繊細な氷の花を売っているお店が目に入った。夏星祭は毎年回り切れないほどの出店が出る。だから面白い出し物でも見落とす事は少なくない。だけど今回はこうやってジンが俺の好みの物を見つけて教えてくれるから例年より沢山の物が見れていた。
 なんというか、ジンってセンスが良いんだよね。俺別に好きなものの話とかした覚えはないんだけど、冬月祭の髪飾りをはじめ、今回の出店紹介まで彼の選ぶものが外れた事がない。

 (だけど、これって俺だけが楽しいんじゃ……?)

 俺の好みの物が見れたら俺は楽しい。だけど、ジンはそうじゃないだろう。ジンには見たいものとかないのかな?

「……ねぇ、ジンが見たいものは無いの?」
「俺は見たいものを見てるよ?」
「でもさっきから俺の見たいものばっかり見てるじゃん。俺ジンと趣味一緒だとは思えないんだけど」

 返ってきたのは嘘をついてる様にも見えないけど本当だとも思えない答え。それに俺が怪訝な視線を送ると

「俺はフレンが楽しそうにしてるのが見たいから。今日はたくさん見れて嬉しいな」

ヘラヘラとした笑顔でこう返された。軽い台詞だけど、やっぱり嘘じゃなさそうなところが却ってやりずらい。
 なんて返せばいいか俺が少し迷っていた時、後ろから声をかけられて俺は振り返った。

「先輩?いらしてたんですね。」
「エリオ君?わぁー、すごい偶然!」

 声の主はエリオ君。彼も今日友達と来るとは言っていたけど、大勢の人が集まるこの会場で偶然遭遇するのはなかなかの確率だ。

「エリオ君はお友達と来てるんだよね?他の子はどこにいるの?」
「別に、友達ではないですけど……、各々食べたい物を買って再度合流になったので今は一人です。せ、先輩はお一人ですか?それだったら僕と……」
「フレンの知り合い?後輩かな?」

 エリオ君と話していたらジンが話に加わってきた。ただ入ってくるだけなら良いんだけど、やたらと距離が近い。会話するのにこんな近くに立つ必要ある?

「だ、誰ですか貴方……」
「俺はジン。今日のフレンのパートナー」
「ぱ、パートナー!?」
「何勝手なポジション名乗ってるの……ただの同伴者だから気にしないでね、エリオ君」

 ジンの妙な距離感に面食らったのか、いつもの弱い人なんか知らないモードも忘れて尋ねるエリオ君にジンは真紅の瞳を細めて笑いかける。全く、人の後輩に変な事言うのやめてくれないかな。

「え……、先輩、この人と二人でここに?」

 ジンの行動にため息をついていたら、何故かエリオ君が元気なく俺に聞いてくる。その顔は心なしか不安気にも見える。もしかしてジンの態度から俺の交友関係を誤解して引かれてるとか?可愛い後輩からそう思われるのは心外すぎるし辛いんだけど。

「た、たまたま誘われたからっていうか、俺から声かけたわけじゃないから!」
「……二人なのは、本当なんですね……」

 俺の必死の弁解にエリオ君は深緑の瞳を揺らし、小さな声で何か言ったんだけど、祭りの喧騒に掻き消えてよく聞こえなかった。

「あれお友達じゃないかな?呼ばれてるみたいだね」

 俺が聞き返す前に、ジンが遠くに目を向けて口を開く。ジンが指差す方向では男の子数人グループがエリオ君の名前を読んでキョロキョロと辺りを見渡していた。

「あ!本当だ。邪魔しちゃ悪いし、それじゃあまた学校でねエリオ君」
「えっ!?あ、はい……」

 こんな所で拘束するのも悪いし、俺達はそのまま解散することにする。

「わっ!?」

 離れていくエリオ君に手を振ってたらジンが俺の腰を勝手に抱き寄せたので、よろけてジンに寄りかかってしまった。まるで俺がジンに抱きついたみたいで恥ずかしい。エリオ君に見られてないと良いけど……。休み明け、エリオ君からの視線が生温かいものになってないといいな。
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