穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ

文字の大きさ
92 / 131
3年1学期

92話:夏星祭、吸血鬼との気まぐれな一夜①

しおりを挟む
 夏季休暇も半分が過ぎ、夏の色が一層濃くなった今日この頃。俺はこの時期の一番のイベントである夏星祭にクロードを誘うためにメッセージを送った。

 クロードは今、四年生の特別クラスで開催されてる夏季合宿に参加していて忙しい時期なので、俺はゆっくり返信を待つ事にする。

『すまない。夏星祭の時期は合同演習があって今年は行けそうにない』

 夜遅くに返ってきた返事は結構長文だったけど要約するとこんな感じだった。

 忙しい四年生であっても基本的に夏星祭のあたりは休みになっている。なんだけど、なんとクロードは剣聖が主催する国の合同演習に誘われて参加する事になったらしい。
 なんでも剣聖から直々に声がかかったんだというから凄過ぎるよね。だってこれは学生向けの訓練とかじゃなくて、実際に国で働いてる第一線の人達が参加するものらしいし。そもそも普通学生が参加できるものなのかな?流石にそんなすごい機会の邪魔はできないから俺は気にしないでとだけ送って携帯を閉じる。
 
 今年はクロードが忙しくてなかなか会えなかったから、夏星祭でゆっくり話したり遊んだりしたかったけど仕方ない。俺が気分を切り替えて誰を誘おうか考え直していたところでもう一度携帯が鳴る。

 クロードからの追加のメッセージかな?なんて開いた画面には

『夏星祭フレンと一緒に行きたいな』

と、俺が連絡先を消そうと思ってるランキング堂々の一位に君臨している男、ジンからの誘いが表示されていた。

 ◇

「やっぱりやめとけばよかったかも」

 夏星祭の会場入り口で、俺は本日何度目かわからない言葉を口にした。
 目の前には俺のどんよりした表情を一切気にせずにジンが笑顔を浮かべて立っている。

「今日も可愛いね、フレン。でも今日は髪を下ろしてるんだ……それも似合うけど、上げたのも見たかったな」

 流れるような動きで俺の腰に手を添え、へらへらと軽い言葉を口にするジンをあしらいながら俺は自分の選択の間違いを確信した。

(俺の馬鹿……何で返事しちゃったんだろう……)

 今考えるとありえない事だけど、俺はジンからの誘いに了承の返事を送ってしまったのだ。

 一つ言い訳させてもらうと、色々考えた上での返事ではある。クロードから行けないって返事をもらった後、俺が最初に誘おうと思ったのはカイだった。だけど前にカイが夏星祭は夏星の花火が上がる前に帰るって言ってたのを思い出したから候補から外したんだよね。俺は夏星が見たいけど無理に付き合わせるのは違うから。

 次にルカのことを誘おうかとも思ったんだけど、ルカは携帯持ってないからすぐには連絡が取れなかったんだよね。一応寮まで行ってみたんだけど不在で会えなかったし、伝言を頼んでも返事がいつくるかわからないから諦めた。

 そしてルカ繋がりで思いついたエリオ君。彼にも夏星祭の予定を聞いたんだけど、既にクラスメイトに誘われてるって返事が返ってきた。それなら俺が誘うのは違うなって事で誘う前に辞めたって感じ。

 (たまたまだけど、なんかタイミングが合わなかったんだよね)

 こんな感じで俺が誘いたい相手はことごとく都合が悪かった。ここで一人で行くって選択肢もあったけど、誰かと夏星祭に行きたいって気持ちだったのと、体育祭での一件が頭によぎり、一回くらい付き合ってあげてもいいかななんて魔が刺した結果がこれだ。

「変な事したら帰るから」

 夏星は見たいけど、ストレスを我慢するのは違うので俺は先手を打つ事にした。まあ夏星見ずに帰るならカイを誘ったほうが何倍もマシだったから本末転倒ではあるんだけど。

「俺はいつもフレンの為になることしかしないよ?」

 俺の辛辣な言葉に対して、冗談か本気かわからない口調でジンが笑いかけてくる。俺はそれに、どこがと言いかけたけど、先日の体育祭のことを思い出して口を閉じた。今考えると事件の前にジンがかけてきた言葉は正しく注意喚起だったから。だけどそれを肯定するのもなんか癪なので言葉にはしない。

「……はぐれたら置いてくから」
「俺はフレンから目を離したりしないから大丈夫」

 折角の祭りの時間をこんな所で無駄にしたくないので俺はジンを置いて会場に足を踏み入れる。今更選択を後悔しても仕方ないし、来てしまったからには思いっきり楽しまないと損だしね。

 ◇

「お嬢ちゃん可愛いからおまけね!」
「ありがとうおじさん!けど俺男だよ?」

 目についた出店でこんなやり取りをして買った氷菓子を俺が食べていると、横にいる真紅の瞳と目が合った。

「……何?」
「美味しそうに食べてるなと思って。前もアイスを贈ってくれたしフレンはそういうのが好きなんだね」

 ジンが言ってるのは、俺がジンに返した冬月祭のプレゼントの事だ。考えてみると俺はジンと全然仲良くないのにもう3回も一緒に出かけてることになる。全部俺の意思ではなく、ジンによってそうなるように仕向けられた不本意極まりないものだけど。

 (ていうかジンはなんで俺を誘ったんだろう)

 俺は勿論ジンと出かけたいと思ったことはないけれど、ジンが俺を誘う理由もよくわからない。今だって俺はほぼ1人で祭りを満喫してるわけだし、俺からジンに話題を提供したりもしてない。ジンから話しかけられた時に受け答えしてるだけだ。

 前に文化祭の後、無理矢理誘われて一緒に出かけた時に、俺はジンが俺の中に自分と同じ孤独を見てるから仲良くなりたいんじゃないかって思った。だけど、よく考えるとそれって俺である必要あるかな?確かに夢魔は珍しい種族だけど探せば他にもいるだろうし、俺よりジンに優しく接してくれる人もいるはずだよね。わざわざジンが彼に冷たい態度をとる俺と出かけたい理由って何?

「ねぇ、ジンって俺といて楽しいの?……友達いないとか?」
「可愛い子の隣を歩くのってそれだけで凄く楽しいよ?それに……」
「それに、何?」

 ジンに気を遣う必要なんてない筈だけど、なんとなく1人だけ楽しんでる事への罪悪感を感じて口に出した疑問。それに対して思わせぶりな口調で返して来るところがまた、やりずらいと思う。

「こうやって俺の事が気になって話しかけてきちゃう所とか凄く可愛いと思う」
「なっ……うるさい!もう知らない!!」

 こっちが少し気を遣ったらこれだ。ジンは俺がジンの事を無視しようとして過ごしてるのを分かった上で、こう言ってくるから性格が悪い。本当に置いて帰っちゃおうかな。

「怒った顔も可愛いけど、笑顔の方が見たいな?あっちにフレンが好きそうなお店あったから行こう?」
「誰のせいだと思って……」

 言い返してる途中で、ちょっとだけ気になって俺はジンの指差す方向を見る。

「……!!」

 そこには俺が好きなスイーツ系の出店が並んでいた。何あれ凄く美味しそう。

「フレンはベリー系好きだよね?あのお店のとか美味しそうじゃない?」

 その言葉に返事は返さず、俺は1番気になった出店に並ぶ。まあ、帰ることはいつでもできるし、折角の美味しそうな出会いをふいにするのは勿体無いしね。夏星祭は有名なお菓子屋さんが出店してる事も多くて見逃して後から後悔したことも少なくない。俺は隣で話しかけてくるジンを無視しながら、誰に言うでもなく心の中で言い訳をして注文の順番を待った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。 ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は未定 ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い ・本格的に嫌われ始めるのは2章から

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...