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それぞれのモヤ
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夜が明けて翌日。昨晩から朝まで、夏希から彩世に連絡はなかった。中学生の頃から思い返しても、こんなことは初めてだ。
昨日の話を分かってくれたとは思えないが、夏希がいつもと違うということは確かだった。それが良い方か悪い方かは定かではない。それが少し気がかりだが、ひとまず学校へ向かうことにした彩世。
気持ちとは裏腹にカラッとした暑さの中、到着して乗ってきた自転車を駐輪場へ停める。すると背後から「あっ」という声が聞こえてきた。周りにこんなに人がいて話し声も飛び交っているのに、その声はやけに彩世の耳にクリアに届く。
「おっ…」
「い、彩世先輩!おはようございます…!」
「ナツくん…。おはよう」
振り返ると、そこには少し息を切らして額に汗を浮かべた那月がいた。さすがに暑くなってきたのか、半袖のカッターシャツを着ている。健康的な肌色をしていながらも他の男子よりは白っぽく感じる那月の腕。袖から伸びるその長い腕と、薄いシャツのみでウエストインが目立つ腰の高さに今までとのギャップを感じてしまう。
「え、あ。大丈夫?息切れてるけど…」
「あっは、はい…。大丈夫です!さっき、校門入るとこで先輩かなと思って走ってきちゃって…」
「…えっ。そっか」
「はい…あ、暑いですね…!」
彩世らしき後ろ姿を見つけ思わず走ってきた那月は、今更ながら恥ずかしくなってきたようで手でパタパタと火照った顔を仰ぐ。それを見た彩世は少しホッとしたような笑みを浮かべて、那月の頭にポンポンッと優しく手を置いた。
「へっっ…!?」
「暑いからちゃんと水分摂って。夏夜行祭ももうすぐだから」
「は、はい…!」
「じゃあね」
那月の頭を撫でてから3年生の下駄箱の方へ歩いて行った彩世。那月は撫でられた頭を抑えながら、未だ冷めない顔の熱にのぼせそうになっているようだ。
ーーー先輩を見つけて追いかけて来ちゃったけど、迷惑じゃなかったかな…。でも頭ぽんぽんされた…。
前は触れられることに抵抗を感じていた那月も、今となっては彩世に指1本触れられるだけで心臓が高鳴っている。
一つ一つハッキリしていなかった気持ちに、だんだんと自分の中で答えが出てきたように思える。
「…もう中庭来てくれるのかな」
しかし、そんな那月にも少し引っかかることがひとつ。
「那月くん、おはよ」
「あっ…!相野く…あ!れ、蓮くん、おはよ!」
「あはは、なんかまだ慣れないね。ゆっくりでいいよ」
「うん…!」
昨日から名前で呼び合うようになった相野のことだ。慣れないと言っている相野だが、那月の名前を呼んでいることがしっくりきているよう。今までずっとそう呼んでいたかのように、滑らかに下の名前を呼んでいる。
それが逆に那月に違和感を覚えさせた。
一一一まさか、まさかだよね。名字も違うし…記憶の風貌とも違う。でももしそうだったら…?聞きたいけど怖くて聞けない…。
やっと克服できてきたのに、またあの時のことをクリアに実感したら元に戻っちゃうのかなって思ったら…。
「暑いねー。教室行こっか」
「う、うん!」
葛藤を心の中で抱えながらも、相野と下駄箱に向かい歩いていく那月。それを離れた所で見ていた彩世は、ボソッと低い声で1人呟く。
「…のんびりしてられない、かも」
その時、彩世のポケットに入れていた携帯が振動し始めた。取り出して画面をつけて見てみると、夏希の名前が出ている。
「…夏希!」
メッセージが入っていて、そこには「分かったよ。いろの気持ち」とだけ書かれていた。
「…っこれ」
「彩世~!おはよ!」
「あ…おはよ」
「何してんの?廊下で突っ立って」
「ううん…教室行こう」
昨日の話を分かってくれたとは思えないが、夏希がいつもと違うということは確かだった。それが良い方か悪い方かは定かではない。それが少し気がかりだが、ひとまず学校へ向かうことにした彩世。
気持ちとは裏腹にカラッとした暑さの中、到着して乗ってきた自転車を駐輪場へ停める。すると背後から「あっ」という声が聞こえてきた。周りにこんなに人がいて話し声も飛び交っているのに、その声はやけに彩世の耳にクリアに届く。
「おっ…」
「い、彩世先輩!おはようございます…!」
「ナツくん…。おはよう」
振り返ると、そこには少し息を切らして額に汗を浮かべた那月がいた。さすがに暑くなってきたのか、半袖のカッターシャツを着ている。健康的な肌色をしていながらも他の男子よりは白っぽく感じる那月の腕。袖から伸びるその長い腕と、薄いシャツのみでウエストインが目立つ腰の高さに今までとのギャップを感じてしまう。
「え、あ。大丈夫?息切れてるけど…」
「あっは、はい…。大丈夫です!さっき、校門入るとこで先輩かなと思って走ってきちゃって…」
「…えっ。そっか」
「はい…あ、暑いですね…!」
彩世らしき後ろ姿を見つけ思わず走ってきた那月は、今更ながら恥ずかしくなってきたようで手でパタパタと火照った顔を仰ぐ。それを見た彩世は少しホッとしたような笑みを浮かべて、那月の頭にポンポンッと優しく手を置いた。
「へっっ…!?」
「暑いからちゃんと水分摂って。夏夜行祭ももうすぐだから」
「は、はい…!」
「じゃあね」
那月の頭を撫でてから3年生の下駄箱の方へ歩いて行った彩世。那月は撫でられた頭を抑えながら、未だ冷めない顔の熱にのぼせそうになっているようだ。
ーーー先輩を見つけて追いかけて来ちゃったけど、迷惑じゃなかったかな…。でも頭ぽんぽんされた…。
前は触れられることに抵抗を感じていた那月も、今となっては彩世に指1本触れられるだけで心臓が高鳴っている。
一つ一つハッキリしていなかった気持ちに、だんだんと自分の中で答えが出てきたように思える。
「…もう中庭来てくれるのかな」
しかし、そんな那月にも少し引っかかることがひとつ。
「那月くん、おはよ」
「あっ…!相野く…あ!れ、蓮くん、おはよ!」
「あはは、なんかまだ慣れないね。ゆっくりでいいよ」
「うん…!」
昨日から名前で呼び合うようになった相野のことだ。慣れないと言っている相野だが、那月の名前を呼んでいることがしっくりきているよう。今までずっとそう呼んでいたかのように、滑らかに下の名前を呼んでいる。
それが逆に那月に違和感を覚えさせた。
一一一まさか、まさかだよね。名字も違うし…記憶の風貌とも違う。でももしそうだったら…?聞きたいけど怖くて聞けない…。
やっと克服できてきたのに、またあの時のことをクリアに実感したら元に戻っちゃうのかなって思ったら…。
「暑いねー。教室行こっか」
「う、うん!」
葛藤を心の中で抱えながらも、相野と下駄箱に向かい歩いていく那月。それを離れた所で見ていた彩世は、ボソッと低い声で1人呟く。
「…のんびりしてられない、かも」
その時、彩世のポケットに入れていた携帯が振動し始めた。取り出して画面をつけて見てみると、夏希の名前が出ている。
「…夏希!」
メッセージが入っていて、そこには「分かったよ。いろの気持ち」とだけ書かれていた。
「…っこれ」
「彩世~!おはよ!」
「あ…おはよ」
「何してんの?廊下で突っ立って」
「ううん…教室行こう」
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