異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
67 / 93
第四章 森の精霊

第67話 戦士たちの語らい――信頼としきたりの狭間で

しおりを挟む
リーファが、ミルファの話題に触れたくなさそうな様子を見て、グラントが切り出した。

「……さて、そろそろ本題に入ろうかのぉ」

ルダルも頷く。

「グレオニウスの件から聞きたいのじゃが……おそらく、病気とかではないのであろう?」

グラントが核心からついてきた。

その目には、かつての”戦工”と呼ばれた男の深いまなざしが宿り、ルダルを貫く――。

「あぁ、その通りだ」

ルダルは、目を閉じて短く答える。

一瞬の静寂――そして、

「突如現れた魔獣に殺された……」

と静かに付け加えた。

「魔獣じゃと!?」

「っ!?」

グラントとリーファに戦慄が走る。

グラントの拳がわずかに震え、リーファの顔も強張る。

そして、グラントが席を立って怒鳴るように言った。

「お主たちの所にも出おったのか!?魔獣が!」

しかし、アマトたちは、驚きはしなかった。

すでに想定内だったのだ。

「やはり、ここにも現れていたか……」

ルダルが呟くと、言葉を続けた。

「私の村には三体の魔獣が現れた。その内の一体にグレオニウスがやられた……」

「グレオニウスともあろうものが魔獣ごときに……信じられん」

グラントが手を組み、石に座りながら呟くように発した。

「ここは、精霊に結界に守られていて魔素が豊富だからな。我々のエリアでは、魔素が枯渇していてな。本来の力を発揮できないまま、あいつは村を守るため単身魔獣と戦ったんだ。誇ってやってくれ」

すでに心の整理ができているのであろう。

ルダルは、意外にも淡々と話した。

「あ、あぁ。あいつは立派な奴じゃった」

冷静なルダルに少し驚きつつもグラントが言った。

そして、

「……その魔獣はどうしたんじゃ?」

と、グラントが問う。

「ここにいるアマト様と三人が、私の目の前で仇を打ってくれた」

ルダルが答えると、グラントの顔が驚きの表情となった。

「そればかりじゃない。三体目が現れたとき、アマト様が私に魔素を供給してくれたおかげで、魔獣を倒し村を救うことができた」

「なんと……我々を助けてくれたばかりか、グラントの仇、さらにはルダルの村まで救ってくれたということか。ありがとう……本当にありがとう」

グラントが両手を膝に置き、深々とアマト達に頭を下げた。

そして、その目には光るものがあった――。

グラントの傍ら、リーファはアマト達を見つめていた。

(あの”烈煌”のグレオニウスを殺した魔獣を倒したというの……?異世界人にスライム……そしてゴブリンが……)

グレオニウスは、魔素が枯渇していたとはいえ、ゼルヴァス十傑の一角。

その男を倒した魔獣をこの4人が凌ぐという事実を一人呑み込めずにいた。

そこへ、ルノアが切り込んだ。

「魔獣は、三体だけじゃないよ。オレの村にも二体現れたんだ」

「おぅ、俺もそのうちの一体と戦ったんだぜ。そん時は全然歯が立たなかったがな」

エメルダがなぜか得意げに言う。

「他に二体じゃと……」

グラントがその数の多さに驚きを隠せなかった。

「で、その二体ともアマト様がなんと、小石一投で倒しちゃったんだ」

ルノアも満面の笑みでグラントとリーファに言った。

「小石……?」

リーファが反応する。

「あぁ、そうさ。あん時のアマト様、最高にカッコよかったぜ……」

エメルダが天を仰ぎ、うっとりとした顔で言った。

ルノアも負けてない。

「さらに驚くなよ。最初の一体目はミィナしか見てないんだけど、ミィナ曰く、その一体が他の四体よりも大きくて強そうだったらしいよ」

ルノアとエメルダは矢継ぎ早にアマトをほめちぎり始めて、もう、この二人は止まらない。

グラントは目が点となり、ルダルは半ばあきれ顔であった。

「アマト様はな!……」

二人のアマト談議が続く。


――


そんな二人の自慢話(?)をよそに、リーファが考え込んでいた。

(信じられない……小石の一投で魔獣を二体も。しかもそのうちの一体がとてつもなく強い可能性があるなんて。もし、こんな力があったら私たちなんか到底かなわないわ……)

アマトの底知れぬ力を考えると、どうにも腑に落ちないことがあった。

(もし、この異世界人がさっき襲ってきたやつらと仲間であったとして、なぜ、こんな回りくどいことをするの?力があるんだから一思いに私たちを、ううん、違う、森と里をも滅ぼせるはず。だとすると・・・本当に敵ではないのかも)

そんな考えがめぐっていた。

――

「……で、アマト様がその手をかざすとだな!」

とエメルダが力を込めて次の言葉を発しそうになった時――

「いい加減、その辺でやめておけ」

苦笑しながらルダルが制止すると、二人ともピタリと固まって、流石に喋りすぎたと気づいたようだ。

そして、お互い顔を見合わせると、軽く笑い合った。

そしてルノアが、

「要するに、我を忘れてしまうくらい、オレたちはアマト様を信じてるってことさ」

と言って、リーファにウィンクをした。

途中から二人の話に圧倒されてしまっていたリーファが、そのウィンクに驚いて我に帰ると、

「そ、そうなのね」

と言って、目を逸らした。

ルダルとグラントが、リーファの様子を見て、顔を見合わせ、微笑んだ。

アマトも、少し笑みがこぼれる。

しかし、その顔を横から見つめるミィナは、まだ心配そうな表情を浮かべていた。

「それで私たちがここにいるのは、あまりにも不自然な魔獣の出現を調べようと思ったからだ」

とルダルが、話を戻した。

「なるほどの。確かに不自然じゃ」

グラントが顎髭を撫でた。

「それで……お前たちのところに現れた魔獣はどうしたんだ?」

ルダルが尋ねると、

「あぁ、魔獣はリーファが倒した」

グラントが答えた。

「スゲェじゃないか。お前」

エメルダが間髪入れず、感嘆した。

「じゃがぁ……」

と言葉を濁すグラント。

「魔獣を倒そうとした時、仲間を救うために……間違って精霊の結界から魔素を吸収してしまってのぉ」

とリーファを見た。

「結界の力が弱まってしまったのじゃ」

リーファは言葉を発しない。

「それで、結界の魔素を補充するための大量な魔素を含む魔石を探し出すまで戻ってくるなと……つまり追放されてしまったわけじゃな。ハッハッハッ」

とグラントが笑う。

「けど、森と里を守るためにしたことなんだろう?ちょっとひどいんじゃない?」

ルノアが不服そうに言った。

その言葉に、リーファが答える。

「仕方ないわ。私は、精霊の結界のしきたりを破った。守り人の資格がないのに結界に触れてしまったの……」

一瞬の静寂――

「まぁ、魔石が見つかれば戻れるからのぉ」

とグラントがその静寂を壊した。

「しかし……南側にそんな魔石はなかなかないかもしれないぞ」

ルダルが申し訳なそうに返す。

「やはりそうか……」

グラントには、わかっていたようであった。

「今や魔素の大半は、人間界のところに集まってしまっておる。それを防ぐための戦いが先の大戦だったわけだが……」

グラントの言葉が沈む。

そこへミィナが言った。

「あの、アマト様から魔素を分けてもらえたら……」

一同がミィナを見た。

一斉に注目を浴びて一瞬戸惑うもミィナが続ける。

「アマト様にお許しをいただけたらですけど……アマト様なら結界に十分な魔素を供給できるのでは?」

ルノアとエメルダが顔を見合わせると、

「そうだよ。アマト様ならなんとかしてくれるよ」

と言ってルノアが立ち上がる――。

「早まるな。アマト様のご意見を伺おう」

とルダルがルノアを制して、アマトを見た。

今度は、アマトに視線が集まる。

固唾を飲む一同。

「わかった。俺は構わない」

アマトが答えた。

一人を残し、一同の顔が笑顔になった。

「おぉ、それは助かりますわい」

とグラントが喜んだその時――。

「ダメよ!」

リーファは大声を張り上げる。

「異世界人から結界へ魔素を供給するなんて!絶対にダメ」

首を振り拒絶をするリーファ。

一瞬の静寂――。

その静寂を破ったのはミィナだった。

「リーファさん、アマト様をどうか信じて頂けないでしょうか……」

リーファは、唇を噛み締める。

「あ、あなた達が、そこの異世界人を信頼していることはよく分かったわ。多分、敵ではないことも」

ミィナの顔がパッと明るくなり、

「それなら……」

と言いかけるも……。

「しきたりなのよ。結界に触れるのが許されているのは守り人だけ……」

リーファが遮るように言った。

悲しそうな顔で黙るミィナ。

その様子を見てリーファがたまらず立ち上がると、

「ちょっと、頭を整理してくるわ……」

と言って、泉の方へ歩いて行ってしまった。

その後ろ姿を見つめ眼差しが二つ……。

一つは、アマトの眼である。

その眼差しは、再び、寂しげな様相を示していた。

そしてもう一つは――

ルクピーであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...