異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第66話 泉にて名をかわす者たち

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グレオニウスの訃報を知らされたグラントは、何も言わず、泉への道をただ歩いていた。

誰も言葉を発しない。

ただ――どんよりした空気だけが一行を包み、時間の刻みさへも心に重くのしかかってくるようであった。

そんな中、リーファは、歩きながらある方向を見ていた。

その視線の先にあったのは、かつてゼルヴァス10傑の名を背負った大きな背中――

しかし今は、ただの小さな老人の背中そのものであった。

しばらくして、先頭を行くルノアの視界に水面のきらめきが映りこんできた。

ルノアは、目を閉じ息を深く吸い込むと、後ろを振り向き、大きな声を発した。

「泉があったよ!」

その声は、重く沈んだ空気を懸命に払いのけようとしてるかのようだった。

一行は、その声に導かれるように、ゆっくりと顔を上げた。

ほどなくして、一行は、ルノアが言っていた風通しが良い場所へたどり着く。

そこは、確かに話し合いにうってつけの場所だった。

いくつかの大きな石が転がっており、腰を下ろすにはちょうどいい。

それぞれが、その石に腰を下ろし、しばしの休息を味わった。

ルダルが、あたりを見回すと、口火を切った。

「アマト様、始めましょう」

アマトも一同を見渡し、

「あぁ」

と短く応じた。

「まずは、自己紹介からだな」

と言うと、左の方へ手を向け、

「アマト様だ。知っての通り異世界人だが、我々にとって大恩人の方だ」

と紹介を始めた。

リーファが心の中でつぶやく。

(異世界人が恩人!?)

俄かには信じがたい話だった。

エルフ族にとって、太古から異世界人は相まみえることのない存在。

それが恩人などと――。

思わず、リーファはアマトを睨みつける。

その視線にアマトが気づく。

そしてグラントも――。

「先ほどは、本当に命拾いをしましたわい。この歳になると、前みたいに斧をふるうのも億劫でしかたない。……いや、改めてお礼を言わせていただきたい。ありがとう」

頭を深く下げるグラント。

その芝居がかった仕草が、自分へのメッセージだと気づくと、

「ふん」

と短く息を吐き、リーファはそっぽを向いた。

その様子に、ルダルが苦笑し、

「私は……さっき挨拶したからいいな。次に……」

とアマトの隣に座っているミィナに左手を移す。

「この者は、ミィナ。スライム族だ」

「よろしくお願いします」

ミィナが、ルクピーを前に抱えたまま立つと、丁寧にお辞儀をした。

すると、そっぽを向いたリーファが、ゆっくりミィナの方へ顔を戻す。

(ミ、ミィナさんって言うのか……やっぱりきれいな人。い、いえ、違う!私は浮かれてなんかないっ!)

だが、耳がぴくつく。

ミィナが顔を上げると、

「この子はルクピー。ルクちゃんって呼んでます」

ルクピーの頭をやさしく撫でる。

「ルクルクッ」

ルクピーが気持ちよさそうに声をあげ、ミィナの手に頭をすり寄せた。

(か、可愛すぎるっ!ルクちゃんかぁ。呼んでみたいっ!い、いや、なに考えてるの私っ……)

リーファの耳はもはや羽ばたいていると言ってよかった。

それを見たルダルが、思わず小さく笑った。

(この娘《むすめ》、さっきまで憤慨していたかと思えば、心はもう笑顔か。確かに……子供かもしれんな)

と、そんなことを思いつつ、ルダルはミィナの左横の石に片膝を立てて腰かけているルノアを示す。

「ミィナの横に座っているのがルノア。同じくスライム族だ」

「よろしくな!」

とルノアは、軽くウィンクしてほほ笑んだ。

リーファの耳がピタッと止まる。

「最後に、エメルダ。ゴブリン族の女頭だ」

ルダルが右横に座っているエメルダを右手で紹介する。

「おう。大人の女とは俺のことだ」

と言って立ち上がると、再び胸を突き出す。

アマト、ルダル、ミィナが思わず絶句――。

(お前が、一番、子供っぽいぞ……)

心の中でアマトが突っ込んでいた。

リーファはというと……。

「こ、この二人ね。要注意は…‥いまに思い知らせてあげるわ」

と闘志をむき出していた。

――まったく忙しい性格のようで、確かに子供っぽいということは否定できない。

やれやれという表情のグラント。

「では、わしの番じゃな」

と言って立ち上がると、

「わしはグラント。見ての通り年老いたドワーフじゃ」

と自虐気味に話した。

そこへルダルが訂正するように言った。

「こう言ってはいるが、ゼルヴァス10傑の一人、”戦工”のグラントと呼ばれていた」

ルノアの顔がパッと明るくなる。

「へぇ、聞いたことがある!なんでも戦場で即座にものすごい武具を作って、幾度も戦局を逆転させたとか……」

グラントが照れ笑いをしつつも、どこか寂し気に返した。

「昔のことだ……いまは自分のことも守れない、ただの魔物じゃよ」

自分の言ったことに場を静まらせてしまったことに気づいたグラント。

「おぉ、すまんかったの。思わず愚痴が出てしまった」

と場を繕った。

「そして、こやつがエルフのリーファじゃ」

と言って隣に座るリーファの肩をたたく。

リーファは、挨拶をしない。

「これリーファ。挨拶をせんか」

とグラントがたしなめる。

すると

「よろしく」

と短く言って、頬を膨らませてそっぽを向いた。

その態度にグラントがあきれた顔をすると、

アマトたちに向き返って

「許してくれ。こう見えても、根は純粋な子なんじゃ」

と頭を下げた。

「じゅ、純粋な子って。子供扱いじゃない!」

リーファがグラントに向かって再び膨れる。

そんな様子をルノアとエメルダ、そしてルダルが微笑みながら見ていた。

「おぉ、そうだ。さっきグラントから聞いたが、リーファはミルファの、いや、”双光”のミルファの妹だそうだ」

ルダルが、リーファの気持ちを逸らすために付け加えると、エメルダが口笛を吹いて驚く。

「あのミルファの妹なのか。なんだ、お前、実はすごいじゃねえか」

しかし、

「……すごくないわよ」

と、リーファの反応は静かで、この話題は触れたくないような感じであった。

そんなリーファを、アマトもどこか悲し気な表情で見つめる。

さらにその横で、ミィナが、アマトを心配そうに見続けていた。

このミィナの視線に、アマトは気づきもしなかった――。
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