異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第67話 戦士たちの語らい――信頼としきたりの狭間で

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リーファが、ミルファの話題に触れたくなさそうな様子を見て、グラントが切り出した。

「……さて、そろそろ本題に入ろうかのぉ」

ルダルも頷く。

「グレオニウスの件から聞きたいのじゃが……おそらく、病気とかではないのであろう?」

グラントが核心からついてきた。

その目には、かつての”戦工”と呼ばれた男の深いまなざしが宿り、ルダルを貫く――。

「あぁ、その通りだ」

ルダルは、目を閉じて短く答える。

一瞬の静寂――そして、

「突如現れた魔獣に殺された……」

と静かに付け加えた。

「魔獣じゃと!?」

「っ!?」

グラントとリーファに戦慄が走る。

グラントの拳がわずかに震え、リーファの顔も強張る。

そして、グラントが席を立って怒鳴るように言った。

「お主たちの所にも出おったのか!?魔獣が!」

しかし、アマトたちは、驚きはしなかった。

すでに想定内だったのだ。

「やはり、ここにも現れていたか……」

ルダルが呟くと、言葉を続けた。

「私の村には三体の魔獣が現れた。その内の一体にグレオニウスがやられた……」

「グレオニウスともあろうものが魔獣ごときに……信じられん」

グラントが手を組み、石に座りながら呟くように発した。

「ここは、精霊に結界に守られていて魔素が豊富だからな。我々のエリアでは、魔素が枯渇していてな。本来の力を発揮できないまま、あいつは村を守るため単身魔獣と戦ったんだ。誇ってやってくれ」

すでに心の整理ができているのであろう。

ルダルは、意外にも淡々と話した。

「あ、あぁ。あいつは立派な奴じゃった」

冷静なルダルに少し驚きつつもグラントが言った。

そして、

「……その魔獣はどうしたんじゃ?」

と、グラントが問う。

「ここにいるアマト様と三人が、私の目の前で仇を打ってくれた」

ルダルが答えると、グラントの顔が驚きの表情となった。

「そればかりじゃない。三体目が現れたとき、アマト様が私に魔素を供給してくれたおかげで、魔獣を倒し村を救うことができた」

「なんと……我々を助けてくれたばかりか、グラントの仇、さらにはルダルの村まで救ってくれたということか。ありがとう……本当にありがとう」

グラントが両手を膝に置き、深々とアマト達に頭を下げた。

そして、その目には光るものがあった――。

グラントの傍ら、リーファはアマト達を見つめていた。

(あの”烈煌”のグレオニウスを殺した魔獣を倒したというの……?異世界人にスライム……そしてゴブリンが……)

グレオニウスは、魔素が枯渇していたとはいえ、ゼルヴァス十傑の一角。

その男を倒した魔獣をこの4人が凌ぐという事実を一人呑み込めずにいた。

そこへ、ルノアが切り込んだ。

「魔獣は、三体だけじゃないよ。オレの村にも二体現れたんだ」

「おぅ、俺もそのうちの一体と戦ったんだぜ。そん時は全然歯が立たなかったがな」

エメルダがなぜか得意げに言う。

「他に二体じゃと……」

グラントがその数の多さに驚きを隠せなかった。

「で、その二体ともアマト様がなんと、小石一投で倒しちゃったんだ」

ルノアも満面の笑みでグラントとリーファに言った。

「小石……?」

リーファが反応する。

「あぁ、そうさ。あん時のアマト様、最高にカッコよかったぜ……」

エメルダが天を仰ぎ、うっとりとした顔で言った。

ルノアも負けてない。

「さらに驚くなよ。最初の一体目はミィナしか見てないんだけど、ミィナ曰く、その一体が他の四体よりも大きくて強そうだったらしいよ」

ルノアとエメルダは矢継ぎ早にアマトをほめちぎり始めて、もう、この二人は止まらない。

グラントは目が点となり、ルダルは半ばあきれ顔であった。

「アマト様はな!……」

二人のアマト談議が続く。


――


そんな二人の自慢話(?)をよそに、リーファが考え込んでいた。

(信じられない……小石の一投で魔獣を二体も。しかもそのうちの一体がとてつもなく強い可能性があるなんて。もし、こんな力があったら私たちなんか到底かなわないわ……)

アマトの底知れぬ力を考えると、どうにも腑に落ちないことがあった。

(もし、この異世界人がさっき襲ってきたやつらと仲間であったとして、なぜ、こんな回りくどいことをするの?力があるんだから一思いに私たちを、ううん、違う、森と里をも滅ぼせるはず。だとすると・・・本当に敵ではないのかも)

そんな考えがめぐっていた。

――

「……で、アマト様がその手をかざすとだな!」

とエメルダが力を込めて次の言葉を発しそうになった時――

「いい加減、その辺でやめておけ」

苦笑しながらルダルが制止すると、二人ともピタリと固まって、流石に喋りすぎたと気づいたようだ。

そして、お互い顔を見合わせると、軽く笑い合った。

そしてルノアが、

「要するに、我を忘れてしまうくらい、オレたちはアマト様を信じてるってことさ」

と言って、リーファにウィンクをした。

途中から二人の話に圧倒されてしまっていたリーファが、そのウィンクに驚いて我に帰ると、

「そ、そうなのね」

と言って、目を逸らした。

ルダルとグラントが、リーファの様子を見て、顔を見合わせ、微笑んだ。

アマトも、少し笑みがこぼれる。

しかし、その顔を横から見つめるミィナは、まだ心配そうな表情を浮かべていた。

「それで私たちがここにいるのは、あまりにも不自然な魔獣の出現を調べようと思ったからだ」

とルダルが、話を戻した。

「なるほどの。確かに不自然じゃ」

グラントが顎髭を撫でた。

「それで……お前たちのところに現れた魔獣はどうしたんだ?」

ルダルが尋ねると、

「あぁ、魔獣はリーファが倒した」

グラントが答えた。

「スゲェじゃないか。お前」

エメルダが間髪入れず、感嘆した。

「じゃがぁ……」

と言葉を濁すグラント。

「魔獣を倒そうとした時、仲間を救うために……間違って精霊の結界から魔素を吸収してしまってのぉ」

とリーファを見た。

「結界の力が弱まってしまったのじゃ」

リーファは言葉を発しない。

「それで、結界の魔素を補充するための大量な魔素を含む魔石を探し出すまで戻ってくるなと……つまり追放されてしまったわけじゃな。ハッハッハッ」

とグラントが笑う。

「けど、森と里を守るためにしたことなんだろう?ちょっとひどいんじゃない?」

ルノアが不服そうに言った。

その言葉に、リーファが答える。

「仕方ないわ。私は、精霊の結界のしきたりを破った。守り人の資格がないのに結界に触れてしまったの……」

一瞬の静寂――

「まぁ、魔石が見つかれば戻れるからのぉ」

とグラントがその静寂を壊した。

「しかし……南側にそんな魔石はなかなかないかもしれないぞ」

ルダルが申し訳なそうに返す。

「やはりそうか……」

グラントには、わかっていたようであった。

「今や魔素の大半は、人間界のところに集まってしまっておる。それを防ぐための戦いが先の大戦だったわけだが……」

グラントの言葉が沈む。

そこへミィナが言った。

「あの、アマト様から魔素を分けてもらえたら……」

一同がミィナを見た。

一斉に注目を浴びて一瞬戸惑うもミィナが続ける。

「アマト様にお許しをいただけたらですけど……アマト様なら結界に十分な魔素を供給できるのでは?」

ルノアとエメルダが顔を見合わせると、

「そうだよ。アマト様ならなんとかしてくれるよ」

と言ってルノアが立ち上がる――。

「早まるな。アマト様のご意見を伺おう」

とルダルがルノアを制して、アマトを見た。

今度は、アマトに視線が集まる。

固唾を飲む一同。

「わかった。俺は構わない」

アマトが答えた。

一人を残し、一同の顔が笑顔になった。

「おぉ、それは助かりますわい」

とグラントが喜んだその時――。

「ダメよ!」

リーファは大声を張り上げる。

「異世界人から結界へ魔素を供給するなんて!絶対にダメ」

首を振り拒絶をするリーファ。

一瞬の静寂――。

その静寂を破ったのはミィナだった。

「リーファさん、アマト様をどうか信じて頂けないでしょうか……」

リーファは、唇を噛み締める。

「あ、あなた達が、そこの異世界人を信頼していることはよく分かったわ。多分、敵ではないことも」

ミィナの顔がパッと明るくなり、

「それなら……」

と言いかけるも……。

「しきたりなのよ。結界に触れるのが許されているのは守り人だけ……」

リーファが遮るように言った。

悲しそうな顔で黙るミィナ。

その様子を見てリーファがたまらず立ち上がると、

「ちょっと、頭を整理してくるわ……」

と言って、泉の方へ歩いて行ってしまった。

その後ろ姿を見つめ眼差しが二つ……。

一つは、アマトの眼である。

その眼差しは、再び、寂しげな様相を示していた。

そしてもう一つは――

ルクピーであった。
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