異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
93 / 93
第四章 森の精霊

第93話 叫ばれた真実、裂かれた腕

しおりを挟む
「何の音!?」

拘留されているリーファが、外の爆音に気づく。

「……ただ事ではないの」

グラントはそう呟き、扉の方へと鋭く視線を向けた。

ミィナが息を呑み、リーファに声をかけた。

「リーファさん、ここから出ましょう」

リーファも頷く。

「二人とも、私の後ろに下がって……」

リーファが左腕を前に出すと、その周りに淡く光が集まり、次の瞬間、金色の弓がその手に形を成した。

「少し無茶をするわ」

そう言って右手を弓矢の弦に添えると、

「"光矢"」

と唱えた。



***



腹部を貫かれ、倒れ込むバルナック。

「バルナックさんっ!」

地に伏せながら叫ぶジルク。

バルナックの腹部から血が止めどなく溢れ出していた。

突如、目前に飛び込んできたセイラスタンに、ルーインとドルマは微動だにできなかった。

「さて……1匹目は片付いた。次はどいつにする?」

セイラスタンが笑みを浮かべながら目の前の三人を見回す。

はっと我に帰ったルーインとドルマは、すかさずセイラスタンから距離をとった。

ドルマが先ほど投げたトマホークを拾うと、セイラスタンに向かって構えた。

セイラスタンがドルマの方に向き直ると、剣を構える。

「ほう。ドルマが戦うところなど見たことないな。実に興味深い」

ドルマは冷や汗を流しながらバルナックの様子に目をやる。

(まずいな。手遅れになる……)

次にルーイン、ジルクに視線を走らせる。

ジルクはまだ腹を抱えて地に伏しており、ルーインはあまりの出来事に顔面蒼白となり、その場にへたり込んでいた。

「……どこまでやれるかわからんが、やるしかないだろう」 

と自分に言い聞かせるように呟くと、トマホークを握る手に力がこもる。

そして――

「うおぉぉーーっ」

と唸り声をあげてセイラスタンに向かって突進するドルマ。

その様子に、

「やれやれ、無鉄砲が次か。まぁ、いいだろ」

と、セイラスタンがこぼすように言って剣を構えたその時だった――。

ドカーン!

拘置所の方から爆音が響いた。

(なんだ?)

セイラスタンは、その音の方へ顔を向ける。

「いまだぁぁぁーーっ!」

ドルマが雄たけびと共にトマホークをセイラスタンへ投げ放つ。

その反動でドルマは、足元がもつれ、勢いのまま前方へ転がり込み、鈍い音を立てて頭を岩に打ちつけ気を失った。

だが、セイラスタンはそんなドルマの方を見ることもなく、そのトマホークを難なく剣で叩き落す。

まるで、そこにドルマなど存在しないかのように。

セイラスタンが拘置所の方を見ていると、そこから三人の人影が現れた。

そして、そのうちの二人が、瞬く間にセイラスタンの前へ躍り出た。

エルフ姿のリーファと、スライム姿のミィナである。

その後方からひょこひょこと後を追いかけてきていたのはグラントであった。

リーファの視線は瞬時に四人が倒れていることを捉えたが、そのとき彼女の意識は、ただ一人この場に立っていたセイラスタンに集中していた。

そして――

「何をしている……セイラスタン」

リーファの鋭い目つきがセイラスタンを捉える。

「ふっ、何をしているだと?」

リーファに向き合うセイラスタンが答えると、

「わからんのか?狩りだ。高尚な狩りをしているのだよ」

と言って、剣をリーファへ向けた。

その動作を見ていたミィナが、セイラスタンの左手につかまれているルクピーに気づき、息を呑んだ。

「ルクちゃんっ!?」

その声にルクピーが

「ルクルクーッ!」

と答え、ジタバタし始める。

だが、セイラスタンはルクピーを掴む手に力を込めると、

「おいおい、スライムのお嬢さん……こいつを興奮させないでくれないか。狩りに集中できなくなるのでな」

と静かに言い放った。

それに対し、

「ルクちゃんを離して!」

と、ミィナは怒った顔つきで言い返すと、右手を静かに突き出す。

そして、

「”光紡ぎし天杖”」

とミィナが唱えると、グラントにもらったアイテムの杖が右手に現れたのだった。

その姿に、かつてのミィナにあった怯えや迷いは、もう見られなかった。

「ほう?魔術師か……だが、私に対抗できるのかな?」

セイラスタンがミィナを見てニヤリと笑った。

そこへ――

「な、何をしておるのじゃ……」

グラントが到着すると、腰を屈めて両手を膝に当て、肩で息をしていた。

一服突くと、顔を持ち上げセイラスタンを見ようとする。

その時、バルナックが横たわる地面を広範囲に染める赤い血に目を奪われた。

「バルナック!?どうした!」

グラントが叫ぶと、リーファとミィナもその様子に気づく。

「まぁ、大変!」

ミィナが叫ぶと同時に、

「セイラスタン!貴様っ!」

と言ってリーファがセイラスタンへ飛び掛かる。

彼女の手には光り輝く矢が握られており、それを剣のように突き出した。

それに対しセイラスタンが後方へ飛び跳ね、リーファの攻撃をかわした。

その間、ミィナがバルナックの元へ駆け寄る。

その行動を横目で見たセイラスタンが

「ふははは。もう遅い。どんなヒールをかけてもバルナックは助からん!」

と嘲笑する。

そんな嘲を無視するかのようにミィナは杖を掲げてスキルを唱えた。

「"軽癒"」

すると、バルナックの傷が塞がり、みるみるうちに癒えて行った。

(なんだと!?)

バルナックの治癒速度に驚きを隠せないセイラスタン――。

その時、リーファの矢がルクピーを握るセイラスタンの左腕を貫く。

「チッ!」

セイラスタンがすかさず後方へ飛び跳ね、リーファとの距離を置く。

その傍には、地面に腰をつき驚いたままのルーインがいた。

するとセイラスタンが唱えた。

「"治癒ヒール"」

左腕の傷が瞬く間に回復していく中、セイラスタンはミィナを見つめていた。

(あのスライムの娘……何者だ?)

そんなセイラスタンの前にリーファがゆっくりと立つと静かに問いただす。

「セイラスタン……何が目的だ」

セイラスタンを睨みつけるリーファ。

それに対して笑みを浮かべるセイラスタン。

一瞬の静寂――だがその時だった。

リーファの後ろに突如扉が出現する。

そして、

バタンッ

とその扉が開くと、

「リーファ!ミオルネを殺したのはセイラスタンじゃ!!」

とエアデランの叫び声が響いた。

「えっ!?」

その叫び声に、リーファの意識が一瞬、真っ白になる。

「ふっ」

セイラスタンの口角が上がり、体を沈める。

その状況をルーインが見て即座に立ち上がり、

「リーファッ!!」

と叫ぶと同時に体を前へ乗り出す。

次の瞬間、セイラスタンがリーファ目掛けて飛び込んだ。

スパーーーン。

何かが裂かれる音が静寂な空間に鳴り響く。

そして、鮮血が宙を裂き――

片腕が、ゆっくりと宙を舞っていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...