異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第92話 創り手を踏みにじる者

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「なに!?」

セイラスタンの視界から、ジルクの姿が消えた。

次の瞬間、前方――曲がり角の向こうから、

「うわぁぁぁーーーっ! 腕がちぎれそうだ!」

という悲鳴が響いた。

ジルクは蔦にしがみついていた。

それを軸にして、無理やり前方の角を曲がり切ろうとしていたのだ。

一方、スピードを出しすぎていたセイラスタンは、曲がり角でいったん足を止めた。

そして、遥か前方を行くジルクを、冷ややかに見据える。

この先は、エルシアの森とドルマの里を結ぶ中央広場へ続く一本道だった。

「ちっ……そういうことか」

セイラスタンは、ジルクの狙いを悟った。

ジルクは、最後の高起魔力装置で得た爆発的な脚力のまま地面を蹴り、一挙に中央広場へ飛び込むつもりだった。

しかし、セイラスタンは不気味にほくそ笑むと、少し脇道に逸れて、その先にある岩盤へたどり着く。

そこで――

「”幻航”」

とスキルを唱えると、目の前に扉が浮かび上がったのだった。



一方、ジルクは一本道を真っすぐ飛び続けていた。

そして彼の視界に、中央広場に立つ何人かの人影が見えた。

「よし……あの岩の間を抜ければなんとかなる!」

だが、ジルクが思わず笑みをこぼしたその時だった――。

「!?」

前方左の岸壁に、黒い穴が浮かび上がった。

ジルクがハッとする。

「まずい!」

その黒い穴から、セイラスタンが姿を現した。

ジルクは、渾身の力で地面を蹴り、前方の上空へと飛び上がった。

すると、空中の最高点でジルクは失速した。

その様子を、セイラスタンはまるで獲物を見るような笑みで見上げていた。

その時――

「助けてくれぇぇぇーーーっ!」

ジルクの声が空を裂き中央広場へ走る。



その声に、真っ先に反応したのはドルマだった。

「なんだ?あれは……ジルクか?」

その声につられてルーインとバルナックが声の方を見る。

「何をしてるんだ。あいつは?」

バルナックが呟くように言うとルーインが続く。

「あれは族長か?」

目を凝らして岩壁の横に立っている人影を見る三人。

「確かに、セイラスタンだな」

ドルマが確認するように言うと前方へ走り出していた。

他の二人も顔を見合わせると、その後に続いた。



叫び終えた直後、ジルクは地面へ叩きつけられ、そのまま動けなくなった。

「三人だけか……であれば問題あるまい」

セイラスタンは、中央広場からかけてくる人物を見定めると、倒れているジルクの方へゆっくりと歩み始める。

そしてジルクの足元へ来ると、セイラスタンが発した。

「小僧、いよいよおしまいか?」

ジルクは振り向き、セイラスタンを睨みつけてほくそ笑む。

「今、ルーインさんたちが来る。お前の悪事もここまでだ」

だがセイラスタンは動じない。

「ほう、お前のたわごとをあいつらが信じるとでも思うのか?それに……」

そう言って、剣を天高く掲げる。

「死人に口はない」

そして、剣がジルク目掛けて振り下ろされたその時――。

ガンッ!

金属がぶつかり合う鈍い音。

振り下ろしたセイラスタンの剣を、どこからともなく飛来したトマホークが弾いていた。

だがセイラスタンは、ためらいもなくジルクの腹を蹴り上げていた。

「うっ!」

声を出せずうずくまるジルク。

その直後、

「何をしている。セイラスタン」

ドルマの声が響いた。

「何をしているだと?わかるだろう。この小僧を殺そうとしていたのだ」

セイラスタンの表情に焦りはない。いや、感情がなかった。

その表情にルーインが生唾を飲み込む。

「なぜだ?小僧が何をした?」

苛立ったバルナックが問いただす。

バルナックを睨み返すセイラスタン。

「なぜか?それは、私の偉業を邪魔しようとしたからだ」

「偉業……だと?」

セイラスタンの威圧に思わず後ずさるバルナック。

「ミオルネさんを殺して何が偉業だ!」

ジルクが腹を押さえながら叫んだ。

「な……に!?ミオルネさんを殺した?」

ルーインが驚愕する。

「おいおい。ルーイン、まさか小僧の話を信じるのではないだろうな?」

セイラスタンが口元を釣り上げ、ルーインを見る。

だがセイラスタンの眼差しは狂気に満ちていた。

対してルーインは違和感を抱いていた。

「族長……あなたは何を持っているのですか?先ほどスライム族の娘から取り上げたものと思われますが……」

セイラスタンの片手には、小動物がつかまれていた。

「それにそのペンダントは?」

彼の首からぶら下がっているペンダントは明らかに守り人の証そのものであった。

セイラスタンは手に持っている小動物を見ると、

「おぉ、そうか。忘れていた。これはな……」

そう言って、セイラスタンは手にしていたルクピーを無造作に突き出した。

「精霊だ」

いたって静かな口調であった。

だが、その衝撃は目の前の三人には計り知れないものであった。

「せ、精霊だと?」

バルナックが声を張り上げる。

「まさか……私の作った精霊発見装置を使ったのか?」

バルナックを一瞥するとセイラスタンが鼻で笑った。

「お前の装置など何の役にも立たなかった。あれはただのガラクタだ」

その言葉にショックを受けるバルナック。

「な、なんだと……」

バルナックの拳を強く握る手が小刻みに震える。

「お前に頼まれてから……最高傑作を作ると誓ってから200年。何も役に立たなかったというのか?」

その様子にセイラスタンは、

「はっはっは。あれが傑作だと?傑作とは……」

と、大声で笑い、剣を足元に突き刺すと、懐から青光りするものを取り出した。

「このグラントの魔石のことを言うのだ。まだ気づかないのか?お前の発明などグラントには遠く及ばない」

その言葉を聞くとバルナックの震えが止まる。

そして――

「私を侮辱するな……セイラスタン」

と言うと、バルナックが衣の内から小さな装置――高起魔力装置を取り出す。

バルナックは俯いたまま、しばし動かなかった。

やがて、両手でそれを掴み、セイラスタンへ向け睨みつけるバルナック。

「落ち着け!バルナック」

ドルマが彼を制止しようとする。

ルーインも続く。

「そうだぞ!相手を考えろ!お前では歯が立たん!」

バルナックが睨みつける目の前の男――かつてミオルネに並ぶとまで言われた戦士。

だが、バルナックの眼からは憎しみの炎が消えなかった。

「こ、小僧から離れろ……さもなくば、撃つ」

セイラスタンはニヤリと笑い、ゆっくりと魔石をしまう。

そして何事もなかったかのように、再び剣を取った。

一瞬の静寂――

先に動いたのはバルナックであった。

カチッ。

バルナックは、高起魔力装置のスイッチを押すと同時に

「”焔玉”」

とスキルを唱えた。

次の瞬間、炎の一塊がセイラスタンに襲いかかる。

だが――

ドカーンッ!

セイラスタンが剣でその攻撃を軽く弾き飛ばすと、それが後方の岸壁へぶつかり砕け散ったのだった。

攻撃を弾かれて慌てて次の装置を取り出そうとした、その時には――

すでに、セイラスタンの剣はバルナックの脇腹を貫いていた。
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