異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
91 / 98
第四章 森の精霊

第91話 三つの装置

しおりを挟む
(……下からの攻撃、だと?)

セイラスタンは足を止めた。

光の矢で貫通した脚からは血が噴き出している。

周囲を見回すも、仕掛けの痕跡も第三者の気配もない。

「……妙だな」

低く呟くと、傷ついた脚にヒールをかける。

肉が塞がる感触を確かめながら、再び前を見る。

(やはり小僧が放ったのか?)

剣を握る力が、わずかに強まった。

「油断は禁物か……」

そう言って、セイラスタンは再び地を蹴った。

今度は様子を見ながら追い詰めていくセイラスタンだったが、それでもジルクとの距離はどんどん縮まっていく。



(さすがに立ち直りが早いな……)

ジルクは、冷静に考えながら走っていた。

(でも、追いつく速度が前より遅い。一発目としては上出来だ)

ジルクがポケットから残りの二つの高起魔力装置を取り出す。

(あと、二発か……)

そう言って、手の中にある高起魔力装置の一つを人差し指と親指で掴み上げる。

(さっきは地面に落としたから気づかれなかった。でも次は、威力を上げるには目の前に投げるしかない……)

つばを飲み込むジルク。

(確実に、バレる)



セイラスタンも、ジルクとの距離を縮めつつ、思考を巡らしていた。

「時間稼ぎが目的なら、私が接近した瞬間に次が来る。仕掛けがアイテムなら、発動の“間”がある。先ほど程度の攻撃、恐れるほどではないか。ならば……」

一拍置いて、低く言い放つ。

「正面から叩き潰すまでだ」

そして、セイラスタンのスピードが上がっていく。

ジルクは、その変化に気づいた。

(来るなら来い!次は最大限の出力を放ってみせる!)

迫りくるセイラスタン。

迎え撃つ覚悟のジルク。

追う者と追われる者――その一瞬の読み合いが、火花を散らしていた。

そして、その時が来た。

「小僧、これで終わりだ!」

セイラスタンがジルクとの距離を詰め、剣を振りかざす。

すると――

ビュッ!

ジルクが後ろを振り返らず、二つ目の高起魔力装置をセイラスタンの前に投げ込む。

反射的に、剣を振るうセイラスタン。

しかしその時だった――

ゴォォォーーーッ!

「なに!?」

セイラスタンが遥か後方へ吹き飛ばされていた。

ジルクが放った二発目。

それは、高起魔力装置によって瞬間的に増幅された指向性の豪風だったのだ。

飛ばされた先でセイラスタンは、剣を地面に突き刺し、これ以上飛ばされないように踏みとどまっていた。

「バルナックの装置だったか……やるな。小僧。そうでなければ面白くない」

ほくそ笑むセイラスタンは、徐々に豪風が収まってくると、再びジルクを目がけて走り出した。



そのころ、エルシアの森とドルムの里の中央付近では――



「族長は、いったい何を考えている……!」

外を歩くルーインは、苛立ちを隠そうともせず、一人、声を上げていた。

やがて、魔素供給装置のある広場が視界に入る。

そこで、珍しい光景を目にした。

――バルナックと、ドルマが話している。

あの二人が、揃って何を……?

そう思った瞬間、ルーインは無意識のうちに足を向けていた。



「とにかく、グラントは年老いた」

バルナックが苛立ちを隠さず、ドルマに言い放つ。

「今のうちの後継を育てておけ!ジルクなんか、悪くない」

「あぁ、わかったよ」

ドルマは腕を組み、首を傾げる。

「だが、あんたがそんなことをわざわざ言いに来るとはな……」

「う、うるさい。深い意味はない!」

バルナックがごまかすように言い放つと、ドルマに背中を向けて立ち去ろうとした。

そこへ――

「バルナック、グラントが持ってきた魔石は本当に人工のものか?」

ルーインが歩きながら声をかけてきた。

「まったく……今日は、グラントの話ばかり出るな!」

バルナックがうんざりした顔で吐き捨てた。

「あぁ、そうだ。あれはグラントが作ったやつで間違いない。もっとも……」

少し顔を伏して言いよどむバルナックだったが、

「昔のグラント作なら私でも見破れなかったはずだ……」

と、頭を上げて力なく言った。

その表情には、老いた者が見せる、どこか寂しげであきらめに似た色が浮かんでいた。



ドドドドッ!

セイラスタンがものすごいスピードでジルクに迫って来た。

「はやいっ!もうあんなに近づいてきている!」

さすがに焦るジルクが思わず声を上げた。

(あともう少しだ。あの角まで逃げきれれば……)

歯を食いしばるジルクの少し先が曲がり角になっている。

(あと一つ……なんとかなる!)

ジルクは、高起魔力装置を強く握りしめた。

その時だった――

「小僧ぉぉっ!もう終わりだ!それとも――まだ何か隠しているつもりか?」

「くそっ!追いつかれるぞ」

そう吐き捨てながら、ジルクは前方に顔を向け、状況を確認していた。

すると、角の少し手前に太い蔓《つる》が目に留まった。

(一か八かだ……)

そう言って笑みを浮かべるジルクが大声で叫んだ。

「あぁ、もう一つ持っている!これであんたを鎮めてみせる!」

(小僧め……本当か、それとも罠か?考えられるのは三パターン。装置が底を尽きている場合、本当に残り一個の場合、そしてもっと装置を持っている場合……)

意外な反応にしばし思考するセイラスタン。

一方、ジルクはこの間に蔓へもう一歩というところまで来ていた。

そう、ジルクはセイラスタンに考えさせることで、しばしの猶予を稼いだのだった。

(ただ、もし私を一撃で仕留めるつもりならさっきやっていたはずだ。だとすると、決定打はないと考えるのが正しい。であれば、装置を仮に複数持っていたとしても問題ない。むしろ装置がなかった場合、警戒をして前に出ないのが愚策。それに、このスピードで走り続けたらあの角を曲がりきれないはず。ならば……)

そう思い至った瞬間――セイラスタンは、さらに速度を上げた。

(速度を上げてきた。けど、あと少し。このままいくぞ!)

セイラスタンが予想通りの動きを見せ、ジルクの気が少し緩んだ時であった――

ガツッ!

「あっ!?」

先の角の方に気を回しすぎて視界が追いついていなかった。

地面を見る余裕すらないまま、剥き出しの木の根に足を取られ、ジルクの体が大きく前へと傾いた。

そしてちょうどその時、

「今度こそ終わりだ!小僧ぉぉーっ!」

と、セイラスタンがジルクに追いつき、剣を振り上げていた。

(やるしかない!)

想定より少し早かった――だがジルクに躊躇している暇はなかった。

彼の手に握りしめていた装置が発動した。

それと同時に、ジルクの姿がセイラスタンの視界から消えたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。 ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。 「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」 いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。 魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル? いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。  そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。

処理中です...