近世ファンタジー世界を戦い抜け!

海原 白夜

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番外 ニューティア合衆国

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 ニューティア合衆国。それは経緯はどうあれ、植民地者たちが築き上げた彼らの、彼らによる、彼らのための…つまりは逃れざるを得なかったか、或いはそこで栄達をすることを望んだ者たちの植民地帝国であった。
 …初期の餓死しそうな植民者たちに食料を恵んだ現地民に対して、生きること
 ができるようになったら欲望の果てに彼らに銃弾を以て返礼品と成し、そうして差別の果てに居留地に追い立てる。或いは感染病にかからせて大勢殺したり、今はしていないがメキシコ帝国の国土の三分の二を一方的に戦争をけしかけて奪い取るような白人たちに与えられた新しい楽園ニューフロンティアだと彼らは憚り、それを疑うことは一切ないような、なんとも《模範的植民地帝国》の体現者である。

 その素晴らしい精神性フロンティアスピリットと、合衆国のための天命マニフェスト・ディスティニーを存分に発揮し、彼ら彼女らは今日も忙しく開拓に勤しむ…はずだった。


「何!?現地部族があの忌々しい連合王国の王冠の下に下った…だと!?」

 暫く、広大な山脈で覆われた大地の開拓に苦戦している間にスー部族、セフィル部族などの様々な部族が次々と連合王国の口車に乗せられ、彼ら曰く…保護条約を締結した。表向きは、現地の有力部族たちを文明化するための使命を負ったなどと美辞麗句を述べている。
 ――本音は合衆国の壁とすること…それだけのためだったのだろう。

 実際に現地の植民地者たちは…極少数ではあるがマスケット銃を持った英国兵と遭遇。脅された後に自らの居留地すでに略奪済みの場所にすごすごと戻ることしかできなかったのである。

「忌々しい海賊ドレイクの連中め!我らの主張モンロー主義をまるっきり無視しやがった!」
 このフロンティア大陸のことはフロンティア大陸の雄である我らが決めるべき…合衆国の国民が求め、政府が実現しようとしていた試みを連合王国は鼻で笑うように無視しやがったのである!
 あの忌々しい海賊野郎め!そんなに我らの躍進が気に入らんのか!?

 ニューティア合衆国大統領はダン!とパール・ハウスに備え付けられた白く塗られた上品な机を殴りつけた。

 なお、連合王国からしたら当然の警戒である。フランス王国財政が火の車の内政状況よりも遥かに稚拙な経済政策をしていたブランタリア王国政府から、多額の金を出したとはいえ土地の広さを考えたらあり得ない額で大陸中部を売り渡したのだ。
 世界の調停者バランサーを気取る連合王国の紳士ブリカス或いはビオカスからすれば、当然それは気に入らない。邪魔するしかないのである。
 モンローだかなんだか知ったことか!広大な大西洋に守られているフロンティア大陸、合衆国が大陸の覇者となるのを徹底的に防がなければならない!というのが連合王国の本音であり続けているのだから。

 今は大したことがない。軍さえもマトモに整っていない銃を持った民兵の集まりなど、連合王国が本気になれば一蹴できる…かもしれない規模がある。
 しかし、連中が大陸の半分を統べるような帝国となってしまえば?それは連合王国の脅威となって翻るだろう。連中が育つようなことを断じて許してはならない!それが連合王国の偽りない本心であり、戦略であった。

 カナディアン植民地を全力で植民し…その過程で致し方なく原住民と連携しなければいけなくなったが…メシコ帝国と保護協定を交わし、連合王国の王冠の守護下に置き、カレフォルニア領を連合王国特別植民地と成した。
 今や、連合王国が喧伝する大陸西部への進出は不可能になった…そのことを理解する大統領は歯噛みするしかできなかった。

―――
――



 ビオ―連合王国特別植民地 カレフォルニア総督邸

 一面荒野…というわけでは決していないが、それでもポツポツと連合王国の移民たちがセッセとこしらえている小さな街を見下ろす、連合王国にしては実に慎ましい…小さなお屋敷程度しかない総督邸…に座っている一人の男が、心底楽しそうにケラケラと笑っていた。

「愉快愉快、実に愉快!我ら大英帝国・・・・の復讐がついに成し遂げられたのだから!」
 左遷先でしかないはずの総督領で笑っている総督に対して、全く愉快と言いようがないほどに笑っている副官や、総督邸に詰めている職員たちは皆笑っていた。

 大英帝国パクス・ブリタニアを失ったことを、彼ら紳士は決して忘れず、その恨みを晴らす好機を今一度転生の機会でうみだし、決定的な成果と果実を手に入れることができたのだ。
 連合王国が凋落した理由は様々あるが、その一つに合衆国の膨張を見逃し続けてしまったということがあったのは否定できない。だからこそ、我らは独自のネットワークを構築し、連中の西海岸進出を断固として拒むために様々な妥協をし、政治的能力をフルで発揮し、こうして此処に座り、勤労に勤しむことができているのだから。

「女王陛下に万歳、連合王国に万歳!」
「連合王国に万歳!!」
 彼らは密かに運んできていた、しかし数少ない貴重で高貴なヴィーンのワインのボトルと、連合王国謹製のビールの瓶を開けると、それを共に分かち合っていた。

 彼らは一様に愛国者であり、そして常に連合王国のために尽くしている忠義者達であった。
 たとえ、歴史につづられることがなくとも其処には百年後の帝国のことを考えてその身を捧げ、未来の連合王国のために捧げる確かなる親愛があったのだから。

 当初は荒野に無駄な金を割くな!と散々にバッシングされた彼等であったが、後の帝国連邦コモンウェルスの一員たるカレフォルニア王国・・の臣民たちは、彼ら植民者たちのことを愛し、敬礼するようになり…一方で合衆国ではフロンティアを奪った悪者であると喧伝するようになる。

 彼らの努力は、転生者たちの小さな変化はうねり狂い、確かに大きな流れの変化として歴史に刻まれ…本来ならばそうなる歴史を確かに動かし続けたのであった。

 しかし、それで連合王国と合衆国の間に埋まらない溝が生まれてしまったことと、経済敵対的チート領域国家を敵視するあまり地政学的欧州の大国大敵を…第一次世界大戦で数百万人の紳士たちが逝く未来に生まれる怪物国家ライヒ帝国の誕生を見過ごしてしまったことは、彼らの一生の悔恨となるのだが…それもまた、仕方のない話である。


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