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「平凡なオレ」
しおりを挟む古河大矢。(こがだいや)19歳。
大学1年。学科は文学科。
特になりたいものがないからとりあえず大学に入ろうと、選んだ学科。ちなみに活字本は苦手でもっぱら漫画しか読まない。
大学に通う他にバイトを週3。あとは友達に誘われてサークルに入ってる。
家から通ってるからお金の心配はないけど、服とか遊ぶお金は必要。
毎日平凡な学生生活。
それって大事。んで、気に入ってるオレの人生。
なりたいものが見つからなかったら大学卒業後に入れそうな企業に就職して、転職したいなーとか思わない限りそこで定年退職するまで働く予定。
彼女ができて結婚できればしたいと思う。けど、このまま一生独身ならそれも悪くない。
期待しすぎず、しなさすぎず。死ぬ直前でオレの人生って思い出しても平凡すぎて何もなかったなーなんて思いながらあの世に逝く。
うん、悪くない。
「やべ。髪セットしすぎた。電車乗り遅れる」
鏡に映る自分の顔と髪型をもう一度確認してから洗面所を出る。
イケメンではないけど、ブサイクというわけでもない。
特徴のない、いわゆるどこにでもいるよーなモブ顔。なオレ。身長は170とそこそこでこれまた平均的。年齢イコール彼女いない歴。
それがどうした。今の世の中、恋愛がなくたって楽しいことはたくさんあるんだよ。
玄関口で靴に履き替えようとしたら、リビングから妹の桃花(ももか)の悲鳴が聞こえてきた。
なに? またゴキ〇リでも出た?
やれやれとため息をこぼしながらリビングへ向かう。
うちは両親共働きだ。朝の8時前には母さんも仕事に出ていない。
オレは授業によっては早かったり遅かったり。桃花は高2でもうそろそろ家を出る時間だ。
「おい、桃花。ゴッキーに構ってないでさっさと学校行けよ」
呆れながらドアノブをつかんでリビングの中に入ると、青白い光が部屋中を、桃花を照らす。
「は?! なんだこれ?!」
視線を桃花の足元に移すと、床に丸い円が描かれていて青白く光っている。
こ、これはいわゆる魔法陣ってやつ?!(漫画とかアニメで見たことある)
なんでうちのリビングに?!
驚きすぎて固まっていると、桃花が泣きそうな声で、
「お兄ちゃん助けて!!」
「は?!」
「体が、足がくっついてて動けないの!」
「はぁーー?!!!」
魔法陣ってあれだよな? どっか知らない世界とかに連れて行かれるやつだよな? ていうか、なんでそんなもんがうちのリビングの床にあるんだよ!!
頭ん中がパニックすぎてどうすればいいかわかんねー。とか思っていたら、急に魔法陣からぬっと手首が出てきた。
「お兄ちゃん!!」
恐怖で必死に叫ぶ桃花の声にオレの何かがぷっつり切れた。
魔法陣から引き剝がそうと、ドンッと力強く桃花を突き飛ばし、床へと吹っ飛ばす。
代わりにオレが魔法陣の中に入ってしまい、突然現れた手首にガシッと右足を捕まれ強い力で魔法陣の中へと引きずりこまれる。
身体を起こしながら青ざめた顔で「お兄ちゃん!!」と叫ぶ桃花の顔を最後にオレの意識が途切れた。
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