公爵家を追い出された地味令嬢、辺境のドラゴンに嫁ぎます!

タマ マコト

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第9話 辺境の村へ

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吹雪は夜のうちに走り去り、朝は嘘みたいに静かだった。砦の上空は薄い青に透け、山の稜線が紙の切り絵みたいにくっきり立っている。ローザは窓辺の覆い布をめくり、芽の寝息を確かめてから外へ出た。土は冷たいが、指に触れる弾力は昨日よりたしかだ。

「行くぞ」

 回廊の影からカイゼルが現れた。灰の上衣、銀の瞳。肩に薄い毛皮を一枚ひっかけ、手には細い巻物。

「村の跡……じゃない、村そのもの?」

「“跡”と“もの”の中間だ。冬越しの最中で、手が足りん。見に行くなら、今のうちだ」

「私も働ける?」

「期待はしない。が、邪魔はするな」

「期待されない方が、案外がんばれるの」

「面倒な花嫁だ」

「仮の、ね」

 鉄の従者が二体ついてきた。護衛なのか荷役なのか、目的を問うても答えはない。ただ一定の距離で雪を分け、道の凹凸を先に踏んでならす。砦の門を抜けると、空気が一段階鋭くなり、肺の奥が目を覚ます。山肌を斜めに降りる細道は、夜のうちに吹き溜まりができていた。カイゼルが前を行き、ローザはその歩幅に合わせる。足跡が二列、無言の会話みたいに続く。

 谷に下るほど、風は弱まり、かわりに人の匂いが混じり出す。煙、獣脂、干した草、火の灰。やがて見えてきたのは、岩に貼りつくように立った小さな家々。木と石を積んだ壁、歪んだ屋根。中央に広場。凍った井戸。手桶の縁に古い布が巻かれ、手に触れる場所だけは磨かれている。

「グレイリッジの麓、ハーラ村だ」

 カイゼルは立ち止まり、低く告げた。広場にいた男たちの目がこちらを掠め、すぐさま逸れる。女たちは腕に抱いた子の頬を覆い、戸口の影へ消える。祈りの囁き声が風に混じる。竜は災い、竜は守り、竜は遠い。どの言葉も、同じ口から生まれる。

 最初に近づいてきたのは、樫のように固い背中の老人だった。井戸の脇に立ち、杖で氷を軽く叩いてから、体をこちらに向ける。目は細いが、細さの奥に火がある。

「領主様のお出ましか。冬に降りてくるとは珍しい」

「珍しさは好物だろう、ミルド」

 カイゼルはわずかに顎を動かして挨拶を返す。

「客を連れてきた」

 老人――ミルドはローザを頭から靴先まで見て、視線を戻した。

「王都の色。ここではよく目立つ」

「色を変えるのが早い土地だと聞きました」

 ローザが言うと、ミルドはふっと鼻で笑った。

「口が回る娘だ」

「手はもっと回ります。土があれば」

 短い応酬の間に、子どもが一人、指をくわえて近づいてきた。肩までの髪、擦り切れたマント。ローザが腰を落とすと、子どもは一歩だけ後ろへ跳ね、でも目だけはこちらを見ている。

「名前、教えてくれる?」

「……テオ」

「テオ。きれいな名前ね。寒くない?」

 テオは首を横に振ってから、ちらりとカイゼルを見上げ、また目を逸らした。彼の背で母親らしき女性が睫毛を震わせ、祈りの形に手を組む。

「わたしはローザ。王都から来たけど、ここに根を下ろしたくて」

「根?」

「うん。土に挨拶する根。風の入口っていう小さな庭を、砦に作りかけてるの」

 テオは意味が分かったのか分からないのか、鼻をすするだけだったが、その鼻すする音に、近くの家から咳の音が応えた。浅くて、早い。冬特有の喉のうなり。ローザは反射的に立ち上がり、ミルドの方を見た。

「薬草、小屋はありますか?」

「春になれば畑の端に。冬は倉に少し。何をする」

「ハーブで喉を楽にする飲み物が作れるはず。タイム、セージ、乾いたリンゴの皮があれば」

「タイムは祈りの束に使う」

 と背後から別の女が言った。

「病に使うとは」

「祈りと薬は仲がいいの。両方、温度を上げるから」

 村人たちの視線が一斉にカイゼルへ流れる。彼が何も言わないと見るや、ミルドは杖で地面を二度付き、顎で倉を示した。

「ついて来い。娘、手を洗えるか」

「もちろん」

 倉の中は冷たく乾いていて、壁際に束ねられた草と、丁寧に包まれた布袋が積まれていた。ローザは手をすすぎ、指の水気を払ってから、束を一本ずつ鼻に近づける。香りは嘘をつかない。タイムは薄いが生きている。セージは灰の匂いを吸っている。リンゴは皮が少ない。かわりに蜂蜜が少し。十分だ。

 外に出ると、カイゼルがいつの間にか大鍋と水を用意していた。鉄の従者が火床を組み、手際よく火を起こす。火の上に鍋が乗り、やがて小さく湯が踊る。ローザは草をちぎって落とし、蜂蜜を木匙でひとすくい。湯気に甘さが混ざると、村人の肩の力が少しだけ落ちたのが分かった。

「一口ずつ。熱すぎないように」

 最初の椀をテオに渡し、次に咳の聞こえた家の女へ。彼女の指はひどく冷え切っていて、椀の熱を逃がす間もなく抱き締める。口をつけ、喉の奥で小さく息を漏らす。

「……温かい」

「タイムは勇気。セージは救い。名前は灯り。冬はすぐ暗くなるから、灯りを足すの」

「言葉が上手ね」

「言葉だけじゃなく、効きますように」

 次々に椀が渡り、縁についた蜜が唇の端に光る。子どもが「甘い」と笑って、背後で母親の眉間がやっとほどけた。ローザは鍋の火を見張りながら、空になった椀を受け取っては温水で軽くすすぎ、また配る。作業は単純で、終わりがある。終わりのある作業は、恐れを小さくする。

「領主様」

 ミルドがカイゼルに向き直った。

「娘は“庭を作る”と言う。冬の庭など笑い話だが、笑いは火種にもなる」

「火は見る者のものだ」

 カイゼルは静かに返した。

「わたしの砦に、風の入口がある。春までに、畝をひと筋増やす」

「領主様の手で?」

「手を出すと壊す。娘に任せる」

 周囲にざわめきが走る。竜が“任せる”と言った。それは祝詞にも呪いにもならない、ただの事実。だが、事実は地面を少しだけ柔らかくする。

「井戸の石が欠けてる」

 ローザがふと口にした。井戸の縁、手を置く位置に亀裂。指先で触れると、寒さで膨らんだ石がいまにも剝がれそうに浮いている。

「ここを布で巻いて、上から木を噛ませた方がいい。手が切れるから」

「冬の間、気を付けてはいたが、子どもが手を出す」

 とテオの母が言う。

「布、余ってる?」

「寝具に使うのがやっと」

「砦から持ってくる」

 カイゼルが短く言った。鉄の従者が即座に動き、荷のひとつを解く。古い毛布の端、麻紐、薄板。ローザはそれを受け取り、膝をついて巻き始める。毛布の端はほつれているが、手に優しい。麻紐を堅結びにし、薄板で押さえる。作業の間、カイゼルは何も言わない。ただ、彼女の指が迷う前に影を動かして風除けを作る。その無言の配慮を、村人は“厳しさ”と同じ棚にそっとしまった。まだ“優しさ”には出来ない。けれど、棚は近い。

「領主様、祈り場へ」

 ミルドが顎で指した。村の端、雪に半ば埋もれた石の輪。中央に灰。古い灰は神話のように冷えている。

「こんな日に?」

「こんな日だからだ。人は怖い時ほど言葉を重ね、竜は怖い時ほど言葉を減らす。中ほどで落ち合わねば」

 カイゼルはわずかに眉を動かし、輪に近づいた。ローザはその背を追う。輪の周りには何本かの木の柱。上部に布が結ばれ、風向きを示している。ローザが見上げると、布の揺れは弱く、霜のきらめきだけが音の代わりに震えていた。

「この輪は、昔、雨を呼ぶ合図に使った」

 ミルドが輪の外側から言った。

「竜に捧げる穀。人に返る雨。今は穀がない。雨は……たぶん、上に止まっている」

「止めてない」

 カイゼルの返しは短い。

「ただ、約束と通り道が壊れた」

「通り道?」

 ローザが問うと、ミルドが杖で空を差した。

「言葉の道だよ、お嬢ちゃん。昔は竜に話しかける言い回しが、家ごと、畑ごと、井戸ごとにあった。今は王都の言葉ばかりで、山の言葉が薄くなった。薄くなると言葉は滑り、届かない」

「わたし、山の言葉、知らない」

「なら、畑の言葉を話せ」

 ミルドは言い、杖で地面をとん、と叩いた。

「手を汚し、手で話せ。春は、手の側に付く」

 ローザは輪の縁に膝をついて、灰を指で崩した。灰の層の下に、焼け残った小石があって、指にざらりとした感覚を与える。火があった場所は、熱が残る。熱は嘘をつかない。彼女は掌を灰に押し付け、額をわずかに下げた。祈りと作業の中間。中間でよい。

 そのとき、広場の向こうから怒声が上がった。

「竜の妻だと? 祟りを連れてきたのか!」

 声の主は若い男だった。頬はこけ、目は熱に濡れている。腕には小さな子。子の額は赤く、呼吸が浅い。寒気と咳と、恐れが混じる目の光。

「やめろ、ゲル」

 ミルドが止める。

「口を慎め」

「慎めるか! 妹が寝込んでるんだ。竜のせいだ。山のせいだ。王都の噂は本当だった。竜は人を喰う。まず心から」

 カイゼルの周りの空気が一瞬で冷えた。銀の瞳がわずかに細くなる。ローザは間に入った。立つ、ではなく、膝の位置のまま掌を見せる。

「子を、見せてもらえる?」

「触るな!」

「触れずに見る。見るだけ」

 ゲルは迷い、子の咳が決断を押した。ローザは距離を保ったまま、子の唇の色、指先の冷え、胸の上下を確かめる。熱はある。喉の音は荒いが、肺は浅くはない。今、必要なのは熱と、湿り気。

「水を」

 ローザが言うと、テオの母が桶を持って駆けてきた。彼女は布を絞り、ローザに渡す。ローザはそれを鍋の湯気で温め、ゲルに渡した。

「子の首元に当てて。熱が怖がらないように、温かい水で薄く湿らせた布を替えていく。蜂蜜を薄く舐めさせて。咳は悪者じゃない。出したいものを出しているだけ。止めないで」

「……本当にそれで」

「全部は救えない。でも、今夜を越える助けになる。朝、霧が上がる頃、もう一度来る。薬草を畑に仕込む準備も始めたい」

「畑?」

「薬草園。春の前に土を柔らかくしておけば、芽は早い」

 ゲルはなおも疑いの目を向けていたが、子が布の温かさに力を抜くのを見ると、歯を食いしばって頷いた。

「……やってみる」

 カイゼルは何も言わなかった。ただ、ローザの横顔を一度だけ見て、目線を谷に投げた。その目線は「牙」と「居」の中間。硬さと、居場所の温度が、少しの間だけ混ざる。

「場所を借りたい」

 ローザは広場の片隅、雪から顔を出している黒土の地を指した。

「ここに小さな畝を。タイム、セージ、カモミール。春の前に根を休ませる場所を作る」

「好きにしろ」

 ミルドが言い、そして付け加えた。

「好きにするなら、責任を持て」

「二度目だ、それ」

 カイゼルがぼそりと漏らし、ミルドはにやりと笑った。

「大事なことは二度言う」

 鉄の従者が板と簡易の鍬を運び、ローザは手袋を締め直した。雪をどけ、土の表層を起こし、石を拾い、手で砕いた。手の中で土が音を変える。凍土の硬い音から、空気の混じる音へ。村の子らが近寄り、足元で丸石を集めて小さな囲いを作り出す。テオが一番真剣だ。指が赤くなるのも忘れて、石を選ぶ目が生きている。

「上手」

「これ、庭?」

「うん。“庭の端っこ”。端っこから真ん中は、あとからやって来る」

 畝が一本、雪の真っ白の上に黒い線として現れる。誰かが「冬なのに……」と呟き、別の誰かが「冬だからだ」と返す。言葉は風に乗り、風は山に当たり、形を少し変えて戻ってくる。戻ってきた言葉に、ほんのわずか、温度が増している。

 日が傾く。鍋の底が見え、咳の音はさっきより湿りを得た。ローザは最後の椀をミルドに差し出し、息を整える。手は泥と蜜の匂いでいっぱいだ。嫌いじゃない。王都の香水よりずっと、まっすぐに胸に落ちる。

「戻るぞ」

 カイゼルが言う。日が落ちてからの谷道は危ない。ローザは頷き、手を洗ってから一人一人に会釈した。テオが裾を引っ張る。

「また来る?」

「来る。明日も、明後日も。芽が出るまで、その先も」

「じゃ、石、もっと集める」

「頼もしい庭師」

 ゲルはまだ硬い顔だったが、子の額に布を当て直しながら、短く礼をした。ミルドは杖で地面を一度叩き、「畑の言葉、悪くない」と言った。祈りの輪の布が、夕風でわずかに揺れる。揺れの音は小さく、でも確かだ。

 砦への登り道、空気は再び鋭くなる。ローザは歩きながら、掌をこすり合わせた。冷えは骨に来る。しかし骨は、火と、作業と、誰かの呼吸で温まる。

「……見ていたな」

 沈黙の途中で、カイゼルが言った。

「何を?」

「人の目の動き。怖れと、祈りと、疑い。お前は正面からは受けず、斜めで受けた」

「斜めの方が、体が倒れにくいの。真正面で受け止められる日は、いつか来る」

「来るのか」

「来させる」

 彼は笑わない。笑わないが、笑わないことが少しだけ柔らかい。稜線の向こう、空の色が藍に深まる。砦の灯が一つ、二つ、点る。風の入口の覆い布が、彼らを待つように影を揺らしていた。

「明日は、畝をもう一本」

「冬に畝ばかり増やしても、種が足りん」

「種はある。王都から連れてきた“挨拶”。そして……」

「そして?」

「今日もらった“返事”。温かい椀のあとに返ってきた、あの目の光。あれは、春より少し早い」

 カイゼルは歩みを緩め、砦の門前で空を見上げた。銀の瞳が、夜になる前の色を一瞬だけ映す。彼は低く言った。

「――見張るのは、居場所のためだけではないらしい」

 門が開く。鉄の従者が無言で道を開け、風がふたりの間を通り抜ける。冷たいが、さっきより刺さらない。ローザは胸の奥で芽の寝息を思い出し、掌を握った。掌の中では、今日の土と蜂蜜と、いくつかの名前が、静かに混ざっている。

 辺境の村は、祈るように息をしている。竜の砦は、見張るように息をしている。二つの呼吸の間に、小さな庭の入口が開いた。そこを往復する歩幅が、やがて「道」と呼ばれるようになる。その始まりの一日が、雪を踏む靴裏に薄く刻まれた。
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