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第4話 魔王の掌
しおりを挟む黒門を抜けた瞬間の冷たさは、喉の奥に霜を置いていった。世界が裏返る手触りのまま視界が暗く滲み、私は息の仕方を忘れて、そのまま沈んだ。
目覚めたとき、まず耳に入ったのは遠い水音だった。ぽたり、ぽたり――屋内のはずなのに、星が溶けて落ちているような音。瞼を上げると、夜色の天蓋が視界いっぱいに広がっていた。濃い群青。布の裏には銀糸の刺繍で極小の星座が縫い込まれ、呼吸に合わせて光が微かに揺れる。枕は冷たくなく、羽毛の底にゆっくり沈む。掛け布は驚くほど軽く、体温を吸ってから返すまでの間に、小さな波が立つ。
横を向くと、寝台の四柱には黒曜石がはめ込まれ、柱の根元では薄い霧が渦を巻いていた。窓――と呼ぶには歪な、空の裂け目のような開口部の向こうでは、星が逆さに流れている。天が床になり、海が空になった世界。静かにめまいがする。
「御目覚めでございますね」
声がした。低くよく通るのに、耳の裏で静かに伏せられる声。振り向くと、部屋の入り口にひとりの男が立っていた。年齢は読みづらい。灰色の髪を後ろで束ね、燕尾のように裾の分かれた黒の礼服。手には白手袋。微笑に牙の影。角は見えないが、姿勢の完璧さと影の濃さが“人間ではない”と告げている。
「魔王城管家、ラザロと申します。以後、お見知りおきを」
彼は片手を胸に当て、踊るような角度で頭を垂れた。その所作は古い宮廷舞踏の正しさに満ちている。私は上半身を起こそうとして、筋肉が自分のものではないようにぎこちなく動くのを感じた。
「……ここは、どこ」
「ルヴェイン魔王城、北塔“夜の間”。殿下――いえ、“陛下”の私室隣、花嫁様の御前室でございます」
花嫁。胸の内側で、乾いた笑いが跳ねた。私の名前はいつから、そういう言葉の後に続く固有名詞になったのだろう。
ふわりと、香りが流れ込む。焚香だ。薔薇ではない、もっと温度の低い花。渡月花――夜にだけ開く花の、青白い匂い。香りを連れて、もうひとりが入ってくる。
「起きたのね。……綺麗な顔。泣いた跡がないのが特に好き」
女。黒紫の髪は巻いた夜風のように肩で揺れ、唇は熟れすぎる手前の葡萄の色。まつ毛の影が床に落ち、歩くたびに影まで艶を帯びる。身体の線は豊かで、布地は滑るように体に馴染み、指先の爪は細い刃のように光る。
「魔女セラ。城の術(わざ)と、殿下の気難しい気分を、わりと上手く扱うのが仕事。あなたの花嫁修行も、私が請け負うことになってる。大丈夫、噛まないわ。必要なら噛むけど」
「……帰る」
自分でも驚くほど、すぐに言葉が出た。
「私を、王都へ戻して。家へ。父と母のところへ」
ラザロの立ち姿が、ほんの少しだけ静まり返った。セラはため息をひとつ、肩から滑らせる。
「帰還を望むのね。望むことは止めない。けれど、その前に、現実をひとつ」
テーブル――黒い鏡面に星の微片が沈んでいる――の上に、セラが巻物を置く。厚手の羊皮紙。角は新しいのに、匂いが古い。“公的”の匂い。私は指を伸ばす。皮膚に、微かな聖油のぬめりが移った。
「判決書。人間界であなたに下された“決定”。国家反逆、禁術行使の共犯、王家の威信を損なう言説の流布――罪状は山ほど。ほら、ここ」
セラの爪が端を押さえ、ラザロが静かに開く。そこには鮮やかな赤と金の印章。王家の百合、教会の聖鍵。署名は流麗で、読み慣れた癖字。
アレクシス。
マルティン。
文字が目に入った瞬間、喉の奥にあった霜が音を立てて割れた。私は笑うか泣くか決められない顔で、口だけが開く。
「……早い」
「早さは支配の技術。石が飛ぶ前に“正しさ”を紙で固める。お見事な手並み。ね?」
セラの目が私の横顔をすべり、私はその視線から逃げずに受けた。
「これを見ても、帰る?」
「帰る先が、もうないって言いたいの?」
セラは肩を竦める。
「言いたいのは“選べ”よ、リュシア。逃げでも復讐でも、寝台で泣くだけでも、どれも生き方。けれど書類は嘘を固める。あれは刃物。素手で掴めば手を切る」
ラザロが口を開いた。
「わたくしどもは、あなた様の希望を最優先いたします。ただ、戻られた場合、即時の拘束が予測されます。王都の門は今、教会の兵が管理し、領主邸には差し押さえが入り、侍女の一部は……」
言葉が薄くなって切れた。続きを言わない、という優しさの形。
「アメリアは?」
自分でも狙っていない名前が飛び出した。
ラザロは一瞬だけ、視線を伏せた。
「生きております。拘留。場所は把握済み。……救出は、殿下の承認次第で」
胸の底で硬いものが鳴る。怒りは熱くない。私の怒りは冬だ。冷えれば冷えるほど、透明になる。
「“殿下”って、誰のこと?」
セラが微笑む。戸を叩く音も風もなく、空気の密度だけが変わった。夜がひと匙、室内に注がれる。
ラザロとセラが同時に一歩引く。
ヴァルトが入ってきた。
黒を纏っていても、彼は部屋の黒とは別の波長を持っている。彼が立つと、影の輪郭が整い、家具の位置が“そこにあるべき”位置に落ち着く。視線がこちらに向くとき、青い氷は刃ではなく、水面の輝きになる。私の顔を見た瞬間、彼の肩から目に見えない緊張がほどけるのがわかった。
「起きたか」
短く、だが柔らかい。
「勝手に連れてきたことは、謝らない」
続けて言葉を置く。
「ただ、説明はする」
私は寝台から足を下ろした。床は石のはずなのに、冷たくなかった。夜の獣の背中みたいな弾力。ヴァルトの視線が足首に触れ、すぐに私の顔へ戻る。視線の礼儀作法。救いの礼儀。
「帰りたい」
私は言った。
肩に置いた言葉の重さを、彼がどう受け止めるのか知りたかった。
彼は頷いた。
「無理に留めはしない」
そして、ほんのわずかに膝を折るみたいに視線を落とし、低く続けた。
「ただ、お前の魂が呼ぶ声に、俺は何百年も従ってきた」
その言葉は、丁寧に畳まれた毛布みたいに胸に置かれた。重くも軽くもない。温度だけがある。
「魂?」
「比喩が嫌なら、別の言い方もできる。……俺は長く生き過ぎて、同じ音を探していた。ある瞬間にしか鳴らない、不完全な和音。お前の中に、その欠片がある。はじめて聞いた夜から、俺はずっと耳を澄ましていた」
セラが肩で笑う。「詩人じみた言い方するじゃない、殿下」
ヴァルトは彼女を見もせず、淡々と続けた。
「俺の理由は俺のものだ。お前の理由は、お前が決める。書類を見たか」
私は頷く。羊皮紙の端に指を添えたまま、ほんの少し震えが戻る。
「アレクシスの署名がある」
「あるな」
「マルティンの印も」
「ある」
「……現実ね」
ヴァルトの表情は変わらないが、部屋の空気がわずかに低音で唸った。怒りが表面張力を保って、こぼれないときの音。
「帰れば、死ぬ」
私が言うと、ラザロが「推測ではありますが」と付け足す。セラは肩をすくめ、髪の端を指に巻きつけ、ほどく。
「死にに戻ることは、選択として間違いではないわ。人の生は、誇りに燃やす薪で暖まることもある。でも――」
セラは私に近づき、身を屈めた。香りが近くなる。瞳孔に夜が溶けている。
「あなた、今は寒いだけでしょう?」
その言い方が悔しくて、少し笑った。
「寒いわ。ひどく」
「だったら、まず火のそばに座るの。復讐の話は、それからでも遅くない」
ヴァルトが視線だけでラザロに合図し、ラザロは暖炉に手をかざす。火はもともと灯っていたはずなのに、次の瞬間、炎の奥に小さな夜が咲き、焔が一段深くなった。青の縁取り。熱は柔らかく、肌ではなく骨を温める。
「父と母は?」
私はラザロを見る。
「把握。監視。……手は打つ」
「魔王城から、人間界へ?」
セラが肩を竦める。「境界はあなたが思うより薄い。薄いけど、脆い。強く押せば破れる。破れたら困る。だから、殿下が針で縫うようにやる」
ヴァルトは短く同意した。
「救い上げることはできる。だが、今は“お前”だ。お前の体調と、決意」
決意。
私は寝台の端に座り、掌を見た。麻縄の痕が薄く赤く、五線譜のように残っている。指先でその線をなぞると、体のどこかが音を思い出して震えた。
「もし留まったら、私は……何になるの?」
自分でも、子どものような問いだと思う。
ヴァルトは少しだけ首を傾げた。
「お前は、お前だ」
即答。
「役職が必要なら“魔王妃”だが、名札に過ぎない。お前の名は、それより先にある」
セラが笑う。「最初にあなたに必要なのは、睡眠と食事。次に風呂。最後に鏡。鏡の中の自分を“悪女”以外の言葉で呼べるようにする。それから、教えてあげる、踊り方、言葉の刃の研ぎ方、魔界のルール、人の心の満たし方、空腹の危険性」
「空腹の危険性?」
「心が、ね。空っぽの時は、もっとも危ない。間違ったものを詰め込みやすいから」
ラザロが銀の蓋を外す音がした。香りが深くなる。温かいスープ。星の粉を溶いたように、表面が微かに光る。パンは黒い麦で焼かれ、皮が薄くぱりりと割れる。私は匙を取った。手が震えて、匙が皿の縁を小さく叩く。ヴァルトの視線がそこに留まり、次の瞬間、スープの器が私の前から彼の手に移った。
「……自分でできる」
「今は渡せ」
否定ではなく、保留の響き。私は渋々、丸めた膝の上で手を温め、彼が匙を満たすのを見た。ヴァルトの手は大きいのに、動きは静かだ。唇に触れる温度を読み、匙を傾ける角度で味の流れを変える。ひと匙。二匙。骨が温まっていく。
「子ども扱いは好きじゃない」
「俺も嫌いだ」
「じゃあ、どうして」
「今は“冷えた生き物”として扱っている。熱が戻れば、扱いは変える」
理屈が通っているのが腹立たしくて、けれど納得もする。私は三匙目を自分で受け取り、喉を通す。体が少しずつ“現世”に戻ってくる気がする。星の流れる窓が、さっきより鮮やかだ。
「……私は、どうしてあなたに抱えられているの」
今さらの問い。
ヴァルトは答えず、かわりにこちらを見る。瞳の底で、古い氷が光る。
「俺は、お前の速度を知りたい」
「速度?」
「そう。お前が怒る速度、泣く速度、笑う速度、信じる速度。速度に合わないと、壊す」
速度。私の速度。王都ではいつも、誰かの速度で生きていた。鐘、儀式、礼法、祈り。私の呼吸は、いつも少しだけ遅れていた。
「……少し、遅いの」
「知っている」
「知ってるの?」
「お前は、最初の一歩を遅らせる。だが、踏み出したら止まらない」
胸のどこかが熱くなった。ああ、怒っている。笑っている。泣いている。どれも正しい。温かい液体が目の裏ににじみ、私はそれを手の甲で拭った。セラがさりげなく、絹の布を差し出す。受け取る。鼻をすする音が、部屋の夜に意外とよく響いた。
「……留まるわ」
私は言った。言葉は軽くなかった。重さはあるのに、沈まない。“置く”というより“立てる”。標識みたいに。
「ただし、条件がある」
ヴァルトの眉が僅かに動く。
「言え」
「父と母、侍女たち。救い出すこと。アメリアは必ず。裁判の偽りを暴く準備。私が選び直すための……材料を集める。それを手伝って」
「当然だ」
即答。迷いのない声は、骨に呑み込まれるくらい真っ直ぐだ。
「それともうひとつ」
「まだあるのか」
「私を、飾りにしないこと。あなたの“花嫁”として立つなら、私の足で立つ」
ヴァルトは、目だけで微笑んだ。
「飾りは嫌いだ。お前が立つなら、俺は隣で風を殺す」
セラが小さく手を叩く。「交渉成立。じゃ、まずは風呂。服を燃やす? それとも洗う?」
「燃やす?」
「嫌な夜の匂いがついてる。燃やして、新しい夜を着るの。儀式は象徴。象徴は効く」
私は少し考えてから、頷いた。
「燃やして。……あの楽譜は残して」
「了解。ラザロ?」
「承知いたしました」
ラザロはどこからともなくあの小さな包みを取り出し、丁寧に布で包み直した。彼の手の動きは、弔いにも祝祭にも似ている。どちらにも使える所作。
部屋の奥から、湯の気配。星の粉が湯面で弾け、音楽のない音楽が鳴る。私は立ち上がり、足を床に置く。震えはもう、ほとんどない。
ヴァルトが、ほんの一瞬だけ迷う動きをしてから、言った。
「リュシア」
名前を呼ばれる。音としてはじめて彼の口から落ちるそれは、驚くほど私の形をしていた。
「すぐに強くならなくていい。骨が火で炙られたばかりだ。冷まして、油を差して、また歩け」
私は振り向かずに、呟いた。
「あなたの掌は、思ったより……あたたかかった」
沈黙。やがて、低い笑い。
「仕様外だ」
セラが笑いを飲み込んで扉を開き、蒸気が流れ込む。
「さ、花嫁様。新しい夜の温度を、覚えましょう」
私は一歩、踏み出す。
背後で、ヴァルトの気配が軽く揺れ、しかし追ってこない。距離を知り、踏み込みを待つ気配。
私の速度で、私の足で。
夜の城は、私の呼吸に合わせて微かに呼吸し、星は逆さに流れながら、見たことのない地図を描いていた。
その地図の最初の一点に、私は静かに指を置く。
悪女と呼ばれた指先に、別の名を与えるために。
温かい湯気の向こうで、新しい曲が始まる気配がした。
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第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
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