【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん

文字の大きさ
55 / 104

第55話 魔物は狩れなくなった。

しおりを挟む

「行ってきます」

「「「いってらっしゃい(ですわ)」」」

宿に泊まった次の日の朝。

俺は話した通り1人で出かけた。

綾子も塔子も俺のことが好きなのは解っている。

フルールは奴隷だ。

俺が働いて食べさせていく。

神代家の人間としては当たり前の事だ。

神社だけあって、結構厳しい家訓があり。

例え神社を継がなくても、その辺りをしっかりしないと親族からお小言を言われる。

俺の歳の離れた従兄は18歳の時に16歳の子を孕ませ、できちゃった婚をしたが、叔父さん、叔母さんが言ったのは『責任をとるなら良い』だった。

18歳の従兄は直ぐに仕事を探し、昼間は大工見習い、夜は水商売のダブルワークを始めた。

18歳から24歳まで、働いて『結婚相手』には一切働かせなかった。

最も、そこ迄、していたのに、結婚相手の不倫が原因で離婚した時には可哀想で見ていられなかった。

叔母さんが言っていた。

『神代家の男は付き合った相手の中で『1番になる』別れた彼女は何時か思い知る事になる』と。

従兄は俺から見てもイケメンで性格が良く俺から見ても素晴らしい人間としか思えなかった。

大昔の事だが貴族や華族、武家を始め『名家』の人間が神代からの婿や嫁を望んだ。

神代家の人間には何かがあるのかも知れない。

実際に別れた彼女はすぐに不倫相手と別れ…従兄の素晴らしさを知る事になる。

復縁しないと解かるとストーカーに成った。

その後の事は…知らない。

だが、親族がいう神代家という家名。

此処は異世界。

それでも俺は神代家の家訓は守っていこう。

そう思う。

◆◆◆

『困った、実に困った』

今日は初日だし、常時討伐依頼をこなそうと思っていた。

討伐の殆どは『常時依頼』が多い。

これは特にギルドに、ことわりを入れなくても受けられる依頼だ。

この間の演習の時にゴブリンは問題が無かった。

恐らくだがゴブリンやオーク位なら知能が低いから、意思疎通が取れない。

魔族側との同盟に問題無く狩っても良い筈だ。

そう思っていたが…これが間違いだった。


森でゴブリンに会った。

何となく様子が可笑しいから、名乗りを上げてみた。

「我が名は理人」

そこ迄言った所で、いきなりゴブリンが両手をあげて動かない。

明かに『降参です』そんな感じに俺には思えた。

敵意が無いようだから様子を見ていると『ついて来い』そう言っている様に思えた。

そのままついて行くと。

「貴方が、邪神様の言う理人さんですね。はじめまして」

「はじめまして、その体格にその姿はもしや、ゴブリンキングですか」

上位種の存在を忘れていた。

ゴブリンにだってロードやキングも居る。

つまり『理知的な存在』も居る。

「そうです!貴方の言う通り、私はゴブリンキング。そして周りにいるのはロードにジェネラルになります」

「やはりそうでしたか」

「苦労しましたよ!如何にキング種の言う事でもなかなかゴブリンは理解しない。ですがもうご安心下さい。我らキング種がしっかりと管理していますので『野良』でもない限り、もう貴方と敵対する者はおりません。 今頃オークも同じ様にキング種が説得していると思います。オーガになるとあれでも知能がかなり高いので説明なく理解が出来ます」

つまり、この時点で俺はもうほとんどの魔物を狩れなくなった。

そういう事だ。

困ったな。

これで、俺はお金を稼ぐ手段が無くなった。

暫く考え事をしているとゴブリンキングはゴブリンに大量のお金の入った袋を持って来させた。

「これは?」

「異世界人の殆どは冒険者です。魔物が狩れなければお金に困るでしょうからと邪神様から渡す様に言われました。我々は人の金等使わないので『必要のない物』ですから、全部差し上げましょう」

これは凄く大金だ。

色々なお金が混ざっているから金額は解らないが、大金なのは一目で解る。

「ありがとう」

お礼位はいうべきだ。

大金をくれたのだからな。

「どういたしまして、食事でも一緒にとも考えましたが『ゴブリンの食事』は人間には不味いらしいですからな…そうだ性欲の方を満たしますか? 苗床の女が8人居ますから自由に使って貰って構いませんよ」

「いえ、遠慮します」

人間としてなら此処で戦って女性を救うのが正しい。

だが、最早ゴブリンたちは味方なのだ。

友好的でお金迄渡すゴブリンを殺す事は俺には出来ない。

見たら気が変わるかも知れないから『見ない』

ただ、心から『ごめんなさい』と被害者の女性に謝るだけだ。

「そうですか、残念です。理人様はこれから先、異世界人と戦う可能性が高い方です。敵の敵は味方。もし困った事があればいつでも訪ねて下さい」

「有難うございます…教えて欲しいのですが邪神様に関係ない魔物はいますか?」

「全ての魔族は邪神様を崇拝しています…理解できない馬鹿はいますが…もし狩りたいのなら、魔物ではありませんが『竜』は邪神様とは関係ないので狩っても問題はないと思います。」

たしかワイバーンは討伐対象だったな。

「ワイバーンは」

「亜流、竜ですね」

どうやら俺は…ほとんどの魔物を狩れなくなってしまった。

狩るならいきなりワイバーン…果たして俺に狩れるのだろうか?

取り敢えずゴブリンキングからもらったお金をアイテム収納に放り込むと俺は再度お礼を言って、ゴブリンの巣穴を立ち去った。




しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

処理中です...