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第77話 テラスのペンダント
しおりを挟む「今度はこれを信者に渡そうと思う」
俺は太陽のデザインの入ったペンダントを3人に見せた。
「ただのペンダントに見えるけど理人くん」
「私にもそう見えるわ」
「でも理人様の事ですから、ただのペンダントじゃ無いのですわね」
いや、これはただのペンダントだ。
但し、特別な意味を持たせる。
「これはテラスのペンダントだよ」
「「「テラスのペンダント!」」」
魔族相手に、いちいち名乗りをあげるのも大変なのでその改善策の為に考えたのがこの『テラスのペンダント』だ。簡単に言えばこれを持っていれば魔族が俺だと認識して襲って来ない。
最初はそれだけを考えていたが、その時に妙案が浮かんだ。
『これを身に着けていたら魔族や魔物に襲われない』
そういう事になればどうなるか。
益々、入信者が増えるのでは無いか。
そう考えた。
そこで、テラス様にお願いして邪神様、魔王に連絡して貰った。
その結果、実現した品がこれだ。
「なんと、このペンダントを身に着けた者は、自分から攻撃を仕掛けない限り、魔族から襲われなくなるという優れものなんだ、どうだ凄いだろう!」
まぁこれには何の効力も無い。
ただのメダルがついたネックレスだけどな。
「そんな素晴らしい物があるなんて知りませんでしたわ」
「すごいですね、それで理人くん、そのペンダントには魔法でも掛かっているの?」
「テラス様の力でも宿っているのかしら」
本当にただのペンダントだ。
ただ、裏で邪神とテラス様で話をして『襲わない』約束がされているだけだ。
俺は、その事を3人に説明した。
今現在、テラス教団の信者にならない者の多くは高位冒険者等の『稼ぐ手段』を持っている者だ。
他にも騎士等のうちプライドの高い者も多く居る。
だからこそ、これが出回ったらどうなるか?
まず商人や貴族からの護衛依頼は無くなる。
今現在、テラス教団には元山賊や元盗賊も多く居る。
人を襲って捕まったら縛り首みたいな生活より安定して収入のある生活の方が良いに決まっている。
その為近隣に盗賊は居ない。
帝国はテラス教団の為に急速に潤ってきた為、帝王や貴族の大半が信者になった。
『テラス教団の信者同志しか付き合えない』というのが功を奏したようだ。
決まりを作った時に、慌てた帝王から連絡があり、入信の旨の報告があった。
その時に『免罪符』の発行も正式に許可を得た。
テラス教団に入れば過去の罪も許されるとあって犯罪者の多くが、こぞって入信してきた。
何を言いたいのかと言うと今現在、北の大地周辺には盗賊はほぼ居ない。
話を戻すが…
人による被害が無い状態で魔族や魔獣の影響が無くなればどうなるか?
高位冒険者の価値が低下する。
護衛依頼も無くなり、魔獣や魔族討伐自体の意味がなくなれば、残りは安い依頼ばかりしかない。
下水道掃除や、採取依頼ばかりになる。
それでも、まだやり続けた人間が居たとしても、テラス信者は困っても助けないから生活が苦しくなる筈だ。
「まさか、邪神様や魔王と話がついているとは思いませんでしたわ」
「それじゃ、理人くん、実質、もう魔王の問題はかたづいた、そういう事なの?」
「…いつの間に凄いわね」
「そんな事無いよ!ここ迄すると、恐らく邪魔がそろそろ入って来そうだしね」
此処からが大変だ。
本当の敵との戦いが始まる。
「「「邪魔」」」
「そう、多分帝国における、最後の敵と戦わないといけないかも知れない」
騎士の多くはもうテラス教団に入信している。
仕事をしながら、来たり来なかったりだが、事実上衛兵も含め落ちたと思って間違いない。
王や貴族、大商人ももう落ちたも同然だ。
ここからが大変だ。
厄介なのは聖属性の物や本物の女神信者だ。
やたらプライドが高くお金で靡かない。
本当の意味での『女神教徒』達。
そいつらをどうにかしなければ完全に掌握したとは言えない。
俺がテラス様を信じている様に、そいつらも女神イシュタスを信じている。
そして宗教者ともなれば、それに命を懸けた人間も多くいるはずだ。
彼等をどうにかした時、ようやく帝国が落ちたと言える。
終わったら、聖教国に王国、まだまだ敵は多いし、まだ先は長いな。
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