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第二章 甘い生活
第23話 【閑話】大樹SIDE 涙
しおりを挟む心から麗華が消えて行く。
僕は麗華が好きだった。
僕の名前は北条大樹。
これでも結構カッコ良くモテる。
元居た学園の男子では一番カッコ良かった。
殆どの女の子が僕に憧れていた。
恐らく言い過ぎでは無い筈だ。
どんな女の子に言い寄られても、僕は浮気などしない。
僕には心から愛する女の子が居るからだ。
その女の子の名前は南条麗華。
南条財閥の一人娘で初めて見た時、まるで女神の様に見えたんだ。
凄く綺麗だった。
だが、南条麗華を好きになると言うのは茨の道なんだ。
普通の女の子と友達になるような簡単な物じゃない。
彼女は世界的に有名な南条財閥の一人娘。
普通の男じゃ付き合うなんて夢また夢。
彼女と付き合う為にどれ程の努力をしたか…
嫌いな勉強も頑張り、体も頑張って鍛え上げ、マナーすらもしっかり叩き込んだ。
幸いうちは家柄は良かった…
努力が実り、麗華の両親からつきあう許しが出た時には嬉しくて涙が出たのを覚えている。
大好きだった麗華。
付き合う事が許されても、指一つ触れられない麗華。
それでも、付き合えるだけ幸せだった。
ただ、二人で一緒に居られて、手を繋ぐだけの恋。
それでも『恋人』と呼ばれるだけで幸せだったんだ。
異世界に来て、聖人になり、麗華が勇者になった。
『麗華を支えない』と、そう思う反面、此処には南条財閥が無い。
だから、もう誰にも干渉されないで『麗華を愛せる』
此処まで頑張ったんだキス位は良いよな。
王女からの求愛すら拒んで見せた。
『生涯大切にする』その誓いは絶対に破らない。
麗華…愛している…
◆◆◆
触られるだけで汚らわしい。
僕は、いや、俺はなんであんな奴を大切だなんて思っていたんだ?
解らない。
勇者だから、一緒に旅をしなくちゃいけない。
俺は…あんな中に居たくない。
豚みたいに大きく膨れ上がった胸。
見ているだけで気持ち悪くなる。
麗華だけじゃない…他の女も同じだ。
声を聞くだけで、臭いをかぐだけで嫌な気持ちになる。
麗華も他の女も気持ち悪い。
俺はこんな奴らに好かれて、何を浮かれていたんだ。
麗華なんて豚みたいな奴に好かれる為になんで努力なんてしたんだ。
気持ち悪い…キモイ…見ているだけで耐えられない麗華。
だけど、だけど…何故、麗華を見ていると涙が出るのだろう。
触りたくない嫌悪しかない…麗華。
それなのに、俺の心には穴が空いたような隙間がある。
此処には何が埋まっていたのだろう。
今の俺には解らない。
俺は不幸だ…大嫌いな麗華や女たちと旅をしないといけない。
気が狂う程悍ましい生活が待っている。
だからなのか、最近は何かを考える度に涙がでる。
◆◆◆
涙が止まった。
あと数日で俺は麗華や同級生と旅をしなくてはいけない。
なんで俺がこんな貧乏くじを引かないとならないんだ。
麗華が死ねば旅は終わる。
麗華…死んでくれないかな。
そうすれば、俺も他の男の様に引き篭もれるのに…
◆◆◆
大樹は結局、麗華と共に旅には出なかった。
『無理に行かせるのであれば自害する』と訴え…そのまま引き篭もった。
麗華たちはクラスの女子に女性のヒーラー数人を加えたメンバーで魔王討伐の旅に出る事となる。
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