64 / 77
第三章 この世界の不条理
第64話 同級生とのお別れ
しおりを挟む「なにこれ?どう見てもラブホテルじゃない?」
「はははっ否定はしない」
考えてみれば、ラブホテルに住み込んでいるような状態を同級生の女の子に見られるのは少し恥ずかしいな。
「理人、どうかしたのか? 早く入ってアポイント取らないと、待たせる事になるよ」
「お兄ちゃん、早く入ろう」
「ちょっと待って私達も…」
「勇者麗華様、此処は男性保護施設なので男性とパートナーになっていない方は入れません、此処でお待ちください!」
ギギギッという音が聞こえた気がする。
同級生の首が俺の方に向く。
麗華さんを含む同級生に睨まれている気がする。
「はははっ、そう言う事だから直ぐに話をしてくるから」
この施設を前に今の話『やっているんだろう』
そう思うのが当たり前だよな。
そりゃ、白い目で見られても仕方ないよな。
皆が魔王討伐のきつい戦いをしているなか、俺だけほぼ『やっていた』だけだからな…
視線が怖いから、サッサと呼びに行こう。
◆◆◆
なんだかなぁ。
男性保護施設…ほぼ、ラブホの建物の大広間に女王に王女、公爵…そして魔王が居る。
皆、凄い人物なのに、此処で見るとコスプレ会場に見えるのは何故だろうか…まぁラブホの一室みたいな場所だからだな。
「よくぞ戻られました、勇者麗華とそのパーティの皆さま、旅の途中ですが、この度、魔族との和平が決まりました…今迄、辛い旅ご苦労様でした…特に成果はございませんでしたが、この世界の我儘の為に皆さまを振り回しました…望む褒賞には出来るだけ応えますので何でも言って下さいね」
こうして見ているとマリアンヌが女王だってのが…あっ小声でシャルナが話している…う~んなんだかな…
「あの、元の世界に戻れるのでしょうか?」
「それは可能です! 元の世界に戻す事は出来ますが、この世界から何もそちらの世界に持ち込む事は出来ません…その代り、貴方達が居なくなった時間帯とほぼ同じ時間帯に戻す事も可能です…男性もお望みなら理人様以外は全員戻します…少し時間は掛かりますが、男性の方の女嫌いも治る筈です」
「そうですか…その少しとはどの位の時間が掛かるのでしょうか?」
「おおよそ3週間ほどだと思います」
「逆に、この世界に残った場合はどの様待遇になるのでしょうか?」
「子爵の地位と領地、領地は代官に納めさせて、ある程度、遊んで暮らせる生活は約束しますよ!ですが、男性との恋愛は諦めて下さい! その理由は解かりますよね」
「そうですか…その二択から選べば良いのですね…案外良心的なのですね」
この世界に来てから、彼女達は何か活躍したという事は聞いて無い。
サキュバさんの話では四天王どころか幹部との交戦もなかった。
そう考えたら高待遇と言えるかも知れない。
恋愛が出来ない。
それを除けばだけど…
「それでどう致しますか? 好きな方をお選び下さい…ですが、送還の魔法は私達だけでなく魔族側の力を借りる必要があるのです。今現在、魔王であるサキュバ殿がおりますが、何時までも滞在してくれとは言えません、申し訳ございませんが明日までに結論を出して下さい」
これは嘘だ…サキュバさんは此処に入り浸っているから、それは無いな。
「結論を急がないといけないのは解りましたが、誠意ある対応、解りました、明日までには必ず結論を出します」
「解りました…なお、今回の送還で帰らなかった方は二度とは元の世界に帰る事は出来ません! これは決して意地悪では無く法則による物です…その点はご容赦下さいね」
「解りました、皆、こう言う話だけど良いかな?」
「まぁ、文句ないわね」
「仕方ないか」
「「「「「「「「「「うん」」」」」」」」」」」
どうやら麗華さんが中心になって話をする事で決まっていたようだな。
「それでは、皆さま、今日の宿はとりましたから、そちらに移動下さい」
まぁ此処は男性保護施設だから、そうなるよな。
「それじゃ、理人またね…」
麗華さんは意味深な言葉を残して他のクラスメイトと共に去っていった。
◆◆◆
「嫌だぁぁぁぁーー俺は引き篭もりたいんだぁぁぁーーー」
「女が、女がいる…部屋に、部屋に返してくれー」
「たっくん…そんな…私が解らないの」
「そんな悲しい顔しないの…あと少しの我慢だから」
「そうだよね…」
これ戻ったあと大丈夫かな…
戻った後3週間この状態が続くんだよな。
結局、麗華さんを除く女の同級生全員が帰還を望んだ。
男の同級生は「正常な判断が出来ないから」と強制送還になった。
「それじゃ、皆さま魔方陣の中に入って下さい」
そのサキュバさんの声でクラスの皆が魔方陣に入った。
男はミノムシ状態で放り込まれていた。
「それじゃぁね、理人くん」
「さようなら…」
それ程仲が良かった訳じゃない。
だけど、同じ国に生まれて同じ学校に通っていただけ…それなのに…何故か、凄く寂しく感じた。
魔方陣は光り輝き…同級生たちは光となり消えた。
そう言えば…
「麗華さん、帰らなくて良かったの?」
「ええっどうせ帰っても南条財閥の籠の鳥、なに一つ自由は無いですから此処の生活の方がまだましですから」
「大樹の方は良いの?」
「ええっ、私この世界に来て、すぐに夜這いをかけました…ですが鬼のような形相で拒まれて…大樹が悪くない、この世界が悪い…それは解るのですが、あの顔にあの声、思い出すだけで腹が立ちまして、どうしても許せそうもありませんからね」
「そう?」
「それに、南条の帝王教育があればこの世界でもやれる気がします…爵位に領地が貰えるなら頑張ってみますわ」
凄いな、自分の力で頑張るのか…
やっぱり麗華さんはカッコ良いな。
「そう言えば、此処に入るには理人と『友達』にならないと駄目なのよね?」
「そうだね」
「それじゃ理人、友達になってくれない?」
「麗華さん、意味解っている」
「あはははっ、別に理人とそういう関係になりたい訳じゃ無いよ…今はね、ただ『資格』が無いと此処に入れないでしょう、この世界で数少ない同郷の仲間に会えないなんて不便じゃない?だからよ!」
「あっ、そういう事なら、登録しよう」
「うん」
こうして麗華さん以外、全ての同級生が日本へと帰っていった。
30
あなたにおすすめの小説
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる