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報道
しおりを挟む「今回は特別に四つのバージョンがあるそうですね」
マイクを持つ記者が興味深そうに質問をしてくる。
「始めはひとつだけでしたが、広告代理店の方のリクエストに応えてアドリブをさせていただきました。冗談だと思っていたのですが、スポンサーからも許可がでて全部のバージョンを放送してもらえることになりました……正直、自分でも驚いています」
はにかむように笑うので、胸がきゅうっと締めつけられる。
きっとテレビの前にいる女性はみんなその笑顔にやられてしまうだろう。
「今日発売の写真週刊誌の記事についてのコメントお願いします」
「倉持里沙さんとの関係をお願いします」
畳み掛けるような質問が飛ぶ。アタシの心臓がドキンと大きく跳ねた。
画面を持つ手がかたかたと震えてしまい、画像が一瞬固まる。
あっという間に、報道陣の質問はCMから高遠さんのプライベートにすりかわってしまう。
これが、言いたかったんだ…尾上さんは……
人づてに聞くより、高遠さん本人の言葉を聞けるように配慮してくれたんだ……
アタシが高遠さんに会いたいというのは一方的なもので、高遠さんはどう考えているのかなんて知らないもの。
どんな答えだって、仕方ないよ……
画面の中の高遠さんの顔が真面目なものになる。
「倉持さんとは、ドラマの共演者としてのお付き合いしかありません。たまたま次のシーンの出番までの待ち時間に食事をご一緒しただけです」
はっきりとした口調で、しっかりと記者を見据えて話をしている
「倉持さんサイドは、よいお友達とのコメントを寄せていますが、そのことについて何かありますか?」
「こちらも友達という事で問題ありません」
確かに食事しただけの写真なら、それ以上のことはなかったのかもしれない。
恋愛関係にあるという決定的な写真ではない…
それでも、もやもやとしたものが胸でくすぶっている。
結局、制作発表会というものは商品よりもタレントのゴシップにくらいついて書かれるものらしい。
明日のスポーツ新聞に、この話は取り上げられるだろう。高遠さんにとっては、注目の新人の初ゴシップだととらえられているはずだ。
考える時の癖で、唇にあてた指を噛み砕いてしまいたいという誘惑にくらくらする。
偶然だけど、アタシは彼女を高遠さんの舞台の客席で見ていた。
舞台のチケットを贈ったり、食事をともにすることは普通のことなんだろうか。
芸能界を知らないアタシにはよくわからないことだ。
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