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変化
しおりを挟むCM撮影から一ヶ月が過ぎて、今日からテレビでオンエアされることになっていた。
会社的には商品の売り出しを兼ねて、報道陣を招いた制作発表会が行われることになっている。
尾上さんは朝からで会場入りして報道陣に対応していたけれど、アタシは会社で普段どおりの仕事をこなしていた。
尾上さんに無理を言えば、また連れていってもらうことも出来たけれど、それはいけない気がしていた。
カタカタとキーボードを叩いていると、服のポケットで携帯が震えた。
着信は尾上さんだった。どうしたんだろう…取材陣の対応で忙しいはずなのに私用電話なんてらしくない。
つい眉間に力が入る。迷いは一瞬で、席を立ち廊下に出た所で通話ボタンを押す。
「渡辺です、どうしたんですか」
ざわめく会場の熱気の向こうから、叫ぶような尾上さんの声が届く。
「渡辺、いいからワイドショーをつけろ」
「え…どうしたんですか?」
「俺が説明するより早い。いいなワンセグがあるだろう?」
「……わかりました。すみませんが切りますね」
もやもやと胸が燻りだす。CM制作発表会にいるのは尾上さんだけじゃない。もちろん高遠さんだっている。
急いで休憩室まで行って、アンテナを伸ばしてチャンネルを合わせる。
一瞬の間をおいて画面が変わる。
画面には高遠さんがアップで映し出されていて、質問を受けている所だった。
「高遠さんはCMの撮影は初めてですが、撮影現場はどうでしたか?」
質問者をきちんと見て、にこやかに高遠さんが答える。
「CM撮影は初めてでしたが、スポンサーも広告代理店の方もスタッフも皆いい方ばかりで楽しく撮影させていただきました」
画面から伝わるなごやかな雰囲気に、ほっと胸を撫で下ろす。高遠さんに何かあった訳ではないみたいだ。
画面の高遠さんを見ているとつい頬がゆるんでしまう。撮影現場に行ったこと、話したことを何度も繰り返し思い出してきたけれど、高遠さんの口から聞くことができるのはまた嬉しいことだった。
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