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脱兎
しおりを挟む考えこんでいたアタシは、その顔が30センチまで近づいて名前を呼ばれるまで気がつかなかった。
「……何してるの……未也」
我にかえって、ぱちぱちと瞬きすると、呆れたような遥香の顔があった。
「ああ…うん……休憩?」
すっと目の前に、紙コップの紅茶が差し出されるので受け取る。
遥香は自分の紙コップに口をつけながら、アタシの隣にあった椅子に座り、とんとんと叩いて呼んだ。
「……何か…悩んでいるの……」
隣に座りながら、さっきのことをどう処理していいか考えていた。
「うん…今はまだ考えがまとまらない。でも遥香、聞いてね」
きっとアタシは縋り付くような目をしていたと思う。ここが会社でなかったら…今が就業時間でなかったらアタシは遥香に縋り付いていた。
そんなアタシに、にっこりと遥香が微笑む。
「……ええ。いつでも……」
ただ遥香は笑ってくれただけなのに、アタシは誰よりも強い味方を持てたことがわかった。
そして、少しだけ楽に息が出来るようになっていた。
「よーしっ!アタシ、頑張ってくるね」
少し冷めた紅茶をくいっと飲み干すと、紙コップをダストボックスに落とした。
「遥香、ごちそうさま。また後でね」
視界の隅で、こらえきれなくなった遥香が笑っているのが見えた。
今は、きちんと仕事をしたい。高遠さんのことは、プライベートでゆっくり考えよう。
アタシは頭を切り替えて、今日の仕事の手順を考えた。
仕事終わりに、脱兎のように走ってコンビニに向かう。
見たいのは高遠さんの載っている、写真週刊誌なので、店に入るなり本棚を目指す。
きょろきょろと辺りを見渡し、知り合いがいないことを確認する。いつも利用する駅から会社までのルートを外れたコンビニだもの大丈夫!
深呼吸をして気持ちを静めてから、週刊誌を手に取る。
探していたページは他の芸能人より多少大きめで、写真も三枚あった。一枚はお店に入っていく二人の後ろ姿。もう一枚は、お店の前で待つサングラス姿の女性。三枚目に店から出て、二人で歩きだす所だった。
はああ……
聞いた話と、実際に見たのでは違うけど、こうやって写真に記録されていると、やっぱり落ち込む。
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