65 / 80
夕焼け
しおりを挟む「本当、情けない。食事しただけなのに話題づくりに雑誌に載せられたことも、せっかくの製作発表なのに商品についてちっとも言及できなかったことも、自分の不甲斐なさに一番頭に来てる
だからあなたにも気をつけて欲しかったんだ
俺に関わると大変なことになる。なんで橘さんはそれをわかってくれないんだ!」
「よーくわかってると思いますよ。だって高遠さんは物凄く傷ついてるから、そばにいてもらえないかって言われたんですよ。
本当なら、橘さんが来たかったんだと思います。マネージャーさんを来させることも出来たはずです。
アタシにしたのは、仕事に関係ない人間なら、高遠さんも落ち着くだろうって配慮です」
高遠さんはアタシを見た。アタシも高遠さんをじっと見ていた。
「橘さんからの伝言です。悔しかったら、誰にも文句を言われないだけの仕事をしてこいって。ねじ伏せてこい、そう言ってました」
ゆらゆらと見つめあっていることで、伝えきれない言葉も伝わればいいのに。
「俺だけ子供みたいだ…」
ぽつりと高遠さんがこぼす。
「そんなことないですよ。高遠さんにとっては、とても大事な事だったんです。だから怒ったし、悔しい思いでいるんでしょう?
仕事にプライドがなかったらそう思いませんよ」
高遠さんとアタシのブランコは揺れている。勢いのよかった高遠さんのブランコはだんだんとゆっくりになりつつあった。
その揺れが高遠さんの気持ちと同じで、穏やかになっていったらいいのに。
「俺は自分以外の何者かに自分の人生をめちゃくちゃにされそうだって思ってた。
人のことを利用したり、足を引っ張ったり、絶えず駆け引きがされていて、気をつけていても簡単に足をすくわれてしまう。
芸能人は、話題づくりが必要かもしれないけど、無理にそんなことをしたくないんだ。
……それをわかって欲しい」
いつの間にか高遠さんとアタシのブランコの速さは同じになっていて、アタシ達は並んでブランコをこいでいた。
「俺はね大学在学中から劇団に足を突っ込んでて、大学の劇団と今の劇団を梯子してた。その頃は箱も小さくてね、小劇団だったよ。大学でも練習してたけど、ここでもよく練習してたんだ。
嫌なことがあった時もここに来て、我を忘れて稽古に励んだりした場所なんだ。そんなこと橘さんにはモロばれだったね」
そう言って高遠さんは笑った。高遠さんを取り巻く状況はなにも変わらないのかもしれないけれど、その声には迷いなどなかった。
アタシ達が並んでこいでいるブランコの前には、真っ赤な夕焼けが広がっていた。
空を焼き尽くすその朱は鮮やかで、たなびく雲の蒼がとてもキレイだった。
1
あなたにおすすめの小説
愛情に気づかない鈍感な私
はなおくら
恋愛
幼少の頃、まだ5歳にも満たない私たちは政略結婚という形で夫婦になった。初めて顔を合わせた時、嬉し恥ずかしながら笑い合い、私たちは友達になった。大きくなるにつれて、夫婦が友人同士というのにも違和感を覚えた私は、成人を迎えるその日離婚をするつもりでいた。だけど、彼は私の考えを聞いた瞬間豹変した。
2人のあなたに愛されて ~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
けいこ
恋愛
「柚葉ちゃん。僕と付き合ってほしい。ずっと君のことが好きだったんだ」
片思いだった若きイケメン社長からの突然の告白。
嘘みたいに深い愛情を注がれ、毎日ドキドキの日々を過ごしてる。
「僕の奥さんは柚葉しかいない。どんなことがあっても、一生君を幸せにするから。嘘じゃないよ。絶対に君を離さない」
結婚も決まって幸せ過ぎる私の目の前に現れたのは、もう1人のあなた。
大好きな彼の双子の弟。
第一印象は最悪――
なのに、信じられない裏切りによって天国から地獄に突き落とされた私を、あなたは不器用に包み込んでくれる。
愛情、裏切り、偽装恋愛、同居……そして、結婚。
あんなに穏やかだったはずの日常が、突然、嵐に巻き込まれたかのように目まぐるしく動き出す――
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
愛想笑いの課長は甘い俺様
吉生伊織
恋愛
社畜と罵られる
坂井 菜緒
×
愛想笑いが得意の俺様課長
堤 将暉
**********
「社畜の坂井さんはこんな仕事もできないのかなぁ~?」
「へぇ、社畜でも反抗心あるんだ」
あることがきっかけで社畜と罵られる日々。
私以外には愛想笑いをするのに、私には厳しい。
そんな課長を避けたいのに甘やかしてくるのはどうして?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる