『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ

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4>>> 耳を疑うヒロイン 

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 自分を見つめて動きを止めてしまったルーニーにミシディアが気づき戸惑いの表情を浮かべた。

「あら? どうしましたの? もしかして、“悪役令嬢”らしくありませんでした?」

 オロオロとして見せるミシディアにルーニーはカラカラに乾いた喉から絞り出すように声を出した。

「な、にを……言って……」

 るの……、最後はもう音にすらならなかった。ルーニーの頭が理解することを拒んでいる。でも理解したくなくても、ルーニーは引き攣る喉でハッハッと息をして、目の前に居る、楽しげに笑っている得体の知れない存在を見つめた。

「あ、ンタが……指示した……?」

 ルーニーに押し寄せる絶望など気付かないのか、、ミシディアはルーニーを不思議そうに見返して小首を傾げた。

「わ、ワタシを……こんな、目に、あ……あわせ……た、のは……」

「? わたくしですわ?」

 サラリと言われた言葉にルーニーの目は驚愕に見開かれた。
 しかしミシディアはそれすらも不思議そうに見返して首を反対側に倒して不思議がった。

わたくしに『しろ』って言ったのですよ?
 “悪役令嬢”。
 あら? もしかしてやっぱり何か間違っちゃいました?」

 そこで初めてミシディアは少しだけ焦った表情を作った。失敗に気付いた顔ではあったが、それはとても軽く、『卵焼きの塩と砂糖を間違えてしまった』くらいの焦り顔だった。
 とても人を襲わせた人間がしていい表情ではなかった。

「ふ、……ふざけないでよっ!!!!」

 堪らずルーニーの口から非難の声が上がる。叫んだせいで喉が少し切れたのかルーニーの口の奥で少し鉄の味が広がったが、ルーニーはそんなことすら気づかずにミシディアを睨んだ。

「あら?」

 叫ばれて驚いたミシディアが少女のように口元に手を当てて驚いた顔をする。
 それすらもルーニーの感情を逆撫でする。怒りからルーニーの唇は震え、自然と目には涙が上がってきた。怒りの震えは全身を巡り、ルーニーはベッドのシーツを限界まで握り締めた。

「あ、アンタっっ!?! アンタっ!! 何考えてんのよっ!?! わたっ、ワタシ死にかけたんだからっ!? 殺されかけたんだから?! 滅茶苦茶にっ……っ、滅茶苦茶にされたんだからっ!?! それをっ?!? な、何考えてんのよっ!?!!」

 叫びながらルーニーは泣いていた。無意識にミシディアへと投げた枕はミシディアに当たることもなく下に落ちた。目の前の女が自分をこんな目に合わせたのだと思うと何か言いたかった。
 だが、ルーニーにすらも何をどう言えばいいのか分からなかった。だって、ルーニーにも分かっていた。
 ミシディアに切っ掛けを作ったのは、他の誰でもない、自分なのだと。
 しかし……

「こんなっ……っ、こんなことやれなんて言う訳ないじゃない!!! バカじゃないのっ!?!?!」

 悲痛に叫ばれたルーニーの言葉にミシディアは困ったように返事をする。

「わたくしもそう思ったんですけれど、態々『悪役をやれ』なんて言いに来る方ですもの。

 そういう“被虐趣味”をお持ちなのかなって思いましたのよ?」

 そうなのでしょう? などと言いたそうな顔で自分を見てくるミシディアにルーニーは絶望を感じた。
 この女は何を言ってるんだ??
 被虐趣味?? そんな訳ないだろう??

「あ、アンタ、乙女ゲームをなんだと思ってるのよ!?!!」

「そこは本当に申し訳ないと思っておりますのよ? 前世ではそういうことには本当に興味がなくて“乙女ゲーム”がなんなのか全く知らないのですわ」

 苦笑するミシディアにルーニーの方がもう訳がわからなくなる。怒りが大き過ぎてどうしたらいいのか分からない。
 大きくかぶりを振ってルーニーはミシディアを責める。

「学園が舞台なんだから登場人物は学生だけに決まってるでしょ?! 何、人を雇ってるのよ?!? アンタ自身がどうにかするに決まってるじゃない?! 悪役なんだからっ!?! 乙女ゲームは恋愛ゲームよ!?! ヒロインが恋愛するの!? そのヒロインを痛めつけて何の意味があるのよ?!?!」

「あら? 恋愛? が居るんじゃありませんの?」

 カランとしたミシディアの態度にルーニーはただただ体を掻き毟りたくなる衝動にかられる。怒りでどうにかなりそうだった。

「ヒーローは居るわよ!!! 私と恋してくれるひとたちがっ!!!」

 それを聞いてミシディアの目が輝いた。

「まぁ! それはやっぱり騎士の方? それとも魔法が得意な殿方かしら? それとも影の仕事をする人かしら?
 わたくしの家を敵に回す方ですものね! さぞ魅力的で素晴らしく、そしてお強い方なのでしょうね!!」

「……は?」

 ウキウキしながらそんなことを言い出したミシディアに、ルーニーは意味が分からずに唖然として無意識に小さな言葉が口から漏れた。

 この女は、何を、イッテイルンダ??
 
 
 
 
        
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