悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ

椿谷あずる

文字の大きさ
9 / 16

9 カメと臨時講師と俺の受難

しおりを挟む

 それから……。

 銀髪白衣の濃厚キャラこと、臨時講師のシオン先生は、校内のあちこちで神出鬼没に出没し、生徒たちとキャッキャウフフしていた。
 中庭で女子とタルトの焼き加減の重要性について語っていると思えば、廊下で男子の悩み相談に首を突っ込んでいるなどしていた。ついでに昼休みには、家庭科室の前で簡単なスイーツを作って生徒に振舞い、家庭科の先生にめっちゃ怒られていた。アホなのか?

 そしてなぜ俺がそれを知っているかといえば、偶然にも何度も都合よくそういった現場に遭遇しているからである。なんでだよ。呪いか。

 その状況をレンが納得したように解説する。
 心なしか楽しそうに見えるのは気のせいか。

「ふむ、タツミは今日から超一級フラグ建築士と名乗るといい」
「そんな設計資格は持ってねえよ」
「気になる相手のことは、視界によく入るというが……」
「どう考えても奇行のせいだろ」

 『気になる』の意味が違うんだよ。

「どうせまた巻き込まれるんだろうな」
「お前がフラグを立てようとするな」

 でもその可能性が否定できない。
 よし決めた。今日こそ誰とも関わらない、空気のように過ごす。気配を消し、忍者のように隠密に。

 ……そのはずだった。

「タツミくんっ! 放課後ちょっとお手伝いをお願いしていいかな?」

 ……見つかった。
 はい、ロックオン。

 丁重にお断りしようと思った。
 けれど周りのクラスメイトたちが、当然手伝うだろうという信頼の視線を向けてくる。中には親指を立てるやつまでいた。ゲームでよくある、『逃げる』の選択肢に『逃げられない』と返ってくるような絶望。
 これもこの教師が積み上げた人望の賜物か。

「……はあい」

 断れない空気に逆らえず、俺は諦めて放課後を待った。

 
===

 
 放課後になって呼び出されたのは、校内の理科室だった。
 薬品の匂いが漂う怪しい空気。授業もやっていない今は、しんとして妙に薄気味悪い。ホラー映画だったら最初に消えそうだ。もう帰ろうか?

「ああ、来てくれてありがとう、タツミくん。ちょっと人手が欲しくてね」

 シオン先生が、手袋をはめながら爽やかに微笑む。
 水槽には一匹のカメがぽっかりと口を開けて、のほほんと空を見上げていた。

「カメ……」
「このカメさんの水槽を掃除するんだけど、作業中に脱走しないよう見張っていて欲しいんだ」

 脱走。果たしてカメに人間を振り切れるほどの脚力はあるのだろうか……。
 俺、別にいらないんじゃないかな?
 そう思いながら、水槽からカメを取り出す。カメはのそりと俺の手に擦り寄ってきた。俺の意思を無視して、ちゃかりと居場所を確保したつもりらしい。図々しいやつ。

 でも、その動きが妙にゆるゆるで、俺は地味に癒されてしまった。

「ふふ、やっぱりカメさんもタツミくんを気に入ったようだね」

 そう言いながら先生が微笑んだ。

「僕の見る目に狂いはなかった」
「どんな目ですか」

 そんな絶妙ジャンルの見る目は聞いたことがない。

「いやー、タツミくんは動物に好かれるタイプだと思ったんだよ」
「そうでも無いと思いますけど?」
「いやいや、初対面なのにこんなに懐いてる。カメさんも、僕もね」
「えっ」

 いや、カメはともかく先生は勝手に懐かないでくれ。

「動物に好かれるタイプっていうのは、人間にも好かれるものだよ」
「女の子に好かれるなら大歓迎なんですけどねー」

 ……と、そんなことを言っていたら、いつの間にかカメが俺のボタンにかじりついていた。

「うわっ、やめろ。喉に詰まらせたらどうするの。ペッしなさい、ペッ!」
「ははは、嫉妬してるのかもね」

 一人ウケてるシオン先生。
 脱走したいのは、カメじゃなくて俺の方なのかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—

なの
BL
事故に巻き込まれ、雪深い森で倒れていた青年・ユナ。 命の危険に晒されていた彼を救ったのは、白銀の毛並みを持つ美しい人狼・ゼルだった。 ゼルは誰よりも優しくて、そして――独占欲がとにかく強い。 気がつけばユナは、もふもふの里へ連れていかれる。 そこでは人狼だけでなく、獣人や精霊、もふもふとした種族たちが仲良く暮らしており、ユナは珍しい「人間」として大歓迎される。 しかし、ゼルだけは露骨にユナを奪われまいとし、 「触るな」「見るな」「近づくな」と嫉妬を隠そうとしない。 もふもふに抱きしめられる日々。 嫉妬と優しさに包まれながら、ユナは少しずつ居場所を取り戻していく――。

処理中です...