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8 急募、癒し系求む!
次の日。
全身の細胞が「帰りたい」と叫ぶなか、俺はなんとか登校した。
いや、昨日のイベントは楽しかった。笑ったし、泣いた(精神的に)。でもね、しんどい。全力で突っ込んだツケが、全身の筋肉痛になって返ってきた感じ。今日は何が起こっても突っ込まないようにしよう。
「ふわ~あ……」
願わくば、今日は平穏な一日を。
何事もなく、平和に、穏やかに、かわいい癒し系お姉さんとのイベントを消化させてほしい。頼むから誰も乱入してこないで。ていうか、誰も話しかけないでくれ。
幸いなことに今日は、イベントを求めて、自ら屋上や図書館に行く必要はない。向こうからやってくる予定だ。それだけが救いである。
卯月ホノカ先生。
今日から二週間ほど、うちのクラスにやって来る予定のふわふわ天然系美人な教育実習生。俺の癒し枠であり、ギャルゲールート的にも隠れファンの多いヒロインの一人。放っておけないオーラ全開で、「先生、その教科書、俺のです」みたいな展開から始まる青春ラブが待っている。待ってるはずだったんだ。
……机に座るまでは、そう信じてた。
「やあやあ、お疲れのようだね? 青春に疲れた若人よ!」
――聞きなれない声が降ってきた。しかも頭上から。
「は……?」
顔を上げた俺の視界に、赤髪の美形が立っていた。
いやもう、なんか、いろいろ言いたい。
白衣。赤髪ロング。当然イケメンな中性的フェイスに長すぎるまつ毛。なにこの世界、まつ毛長いのがデフォなの?
「初めまして。僕は白霧シオン。今日からこの学校に赴任した、臨時講師だよ。よろしくね、タツミくん」
……初対面で名前呼びとは一体。つーか、なんでナチュラルに俺の名前知ってんだよ。あとちょっと距離近いな。
「え? 先生?」
ちょっと椅子を引いて距離を取りながら疑問の目を向ける。
シオンと名乗るその先生は、この流れで明らかにいらないであろう謎のウィンクと共に言葉を続けた。
「教育実習の子が急に来られなくなっちゃってね。その代打ってわけさ。よろしくね」
――さようなら、俺の癒し。さようなら、ホノカ先生。
昨日からこれで何人目だよ。
攻略本のルートガイドがもう詐欺なレベルで偽りを提示してくる。俺が実際目にしたヒロイン、二人くらいしかいないんだけど。それ以外で出てくるのは全部、美形の男。『恋トモ』ってギャルゲーだったよな? ギャルいないゲーじゃなくて。
ここまでくると、フラグじゃなくて呪いでは?
「ふふ。どうしたんだい、その顔。まるで詐欺にでもあったみたいな顔だね?」
「いやー……実際、詐欺られた気分ですね」
「ははは。面白いね、君! 気に入ったよ!!」
「……どういたしまして」
テンションの落差が激しすぎる。というかやっぱり相手の距離が近い。教師なら、もうちょっとパーソナルスペースという概念を取り戻してほしいものである。
「ところで、シオン先生の担当は?」
隣でレンが、まるで実況解説のように挟んできた。お前、いつからいた。
「生物と倫理だよ」
「だそうだ、タツミ」
「別に俺、その情報いらないけど」
……だめだ。ツッコミ疲れで、もう明日あたり失声症になりそう。
可能ならば、このまま保健室に転生させてほしいと思った。
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