悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ

椿谷あずる

文字の大きさ
8 / 16

8 急募、癒し系求む!

 
 次の日。

 全身の細胞が「帰りたい」と叫ぶなか、俺はなんとか登校した。

 いや、昨日のイベントは楽しかった。笑ったし、泣いた(精神的に)。でもね、しんどい。全力で突っ込んだツケが、全身の筋肉痛になって返ってきた感じ。今日は何が起こっても突っ込まないようにしよう。

 「ふわ~あ……」

 願わくば、今日は平穏な一日を。

 何事もなく、平和に、穏やかに、かわいい癒し系お姉さんとのイベントを消化させてほしい。頼むから誰も乱入してこないで。ていうか、誰も話しかけないでくれ。
 幸いなことに今日は、イベントを求めて、自ら屋上や図書館に行く必要はない。向こうからやってくる予定だ。それだけが救いである。

 卯月ホノカ先生。
 今日から二週間ほど、うちのクラスにやって来る予定のふわふわ天然系美人な教育実習生。俺の癒し枠であり、ギャルゲールート的にも隠れファンの多いヒロインの一人。放っておけないオーラ全開で、「先生、その教科書、俺のです」みたいな展開から始まる青春ラブが待っている。待ってるはずだったんだ。

 ……机に座るまでは、そう信じてた。

「やあやあ、お疲れのようだね? 青春に疲れた若人よ!」

 ――聞きなれない声が降ってきた。しかも頭上から。

「は……?」

 顔を上げた俺の視界に、赤髪の美形が立っていた。

 いやもう、なんか、いろいろ言いたい。
 白衣。赤髪ロング。当然イケメンな中性的フェイスに長すぎるまつ毛。なにこの世界、まつ毛長いのがデフォなの?

「初めまして。僕は白霧シオン。今日からこの学校に赴任した、臨時講師だよ。よろしくね、タツミくん」

 ……初対面で名前呼びとは一体。つーか、なんでナチュラルに俺の名前知ってんだよ。あとちょっと距離近いな。

「え? 先生?」

 ちょっと椅子を引いて距離を取りながら疑問の目を向ける。
 シオンと名乗るその先生は、この流れで明らかにいらないであろう謎のウィンクと共に言葉を続けた。

「教育実習の子が急に来られなくなっちゃってね。その代打ってわけさ。よろしくね」

 ――さようなら、俺の癒し。さようなら、ホノカ先生。

 昨日からこれで何人目だよ。
 攻略本のルートガイドがもう詐欺なレベルで偽りを提示してくる。俺が実際目にしたヒロイン、二人くらいしかいないんだけど。それ以外で出てくるのは全部、美形の男。『恋トモ』ってギャルゲーだったよな? ギャルいないゲーじゃなくて。

 ここまでくると、フラグじゃなくて呪いでは?

「ふふ。どうしたんだい、その顔。まるで詐欺にでもあったみたいな顔だね?」
「いやー……実際、詐欺られた気分ですね」
「ははは。面白いね、君! 気に入ったよ!!」
「……どういたしまして」

 テンションの落差が激しすぎる。というかやっぱり相手の距離が近い。教師なら、もうちょっとパーソナルスペースという概念を取り戻してほしいものである。

「ところで、シオン先生の担当は?」

 隣でレンが、まるで実況解説のように挟んできた。お前、いつからいた。

「生物と倫理だよ」
「だそうだ、タツミ」
「別に俺、その情報いらないけど」

 ……だめだ。ツッコミ疲れで、もう明日あたり失声症になりそう。

 可能ならば、このまま保健室に転生させてほしいと思った。
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

推しの運命を変えるため、モブの俺は嫌われ役を演じた

月冬
BL
乙女ゲームの世界に転生した俺は、ただのモブキャラ。 推しキャラのレオンは、本来なら主人公と結ばれる攻略対象だった。 だから距離を置くつもりだったのに―― 気づけば、孤独だった彼の隣にいた。 「モブは選ばれない」 そう思っていたのに、 なぜかシナリオがどんどん壊れていく。 これは、 推しの未来を知るモブが、運命を変えてしまう物語。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください