Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第625話

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 発射に合わせてエーテルで身を守ろうとしたのだが、その必要はなかったようだ。
 何故ならヨシナリ達の真下に付く形でカカラがレーザーの射線に割り込んだからだ。

 「はっはぁ! いいぞお前ら! ここで突っ込むとは血が滾るぞ!」

 地面スレスレを飛んで文字通り盾になったのだが、堅牢な彼の機体の守りも至近距離から放たれた無数のレーザーを完全に防ぐ事は難しく。 フィールドを貫通し、機体の内部まで融解させる。
 
 「カカラさん!」
 「構うな! 俺のサガルマータはこの程度では沈まん!」

 推進装置にダメージを受けたカカラは機体を変形させて両足で地面を削りながら強引に着地。 
 敵機はドローンを生み出そうとしていたがアトルムとクルックスを抜いて片端から叩き落す。
 背後ではアリスとグロウモスが地面を舐めるようにレーザーで薙ぎ払っている。

 恐らく地中のドローンを破壊しているのだろう。 
 回避を選択した機体は敵機の追撃を避ける為か、地面への攻撃を始めていた。
 本来ならそのまま連射して地の利を得るつもりだったのだろうが、態勢を立て直す前に一気に押し切る。

 ベリアルが正面から突っ込んだのに合わせてヨシナリ、ユウヤは左右へ散った。
 もう、言葉を交わすまでもなく、三人は自らの役割を理解していたからだ。
 敵機がドローンを精製するがヨシナリが即座にアトルムとクルックスを連射して手数を減らす。

 その間にベリアルが肉薄。 得意のラッシュを叩きこむ。
 爪による左右のコンビネーション。 紙一重で躱される。
 短距離転移での死角へと移動からのブレードによる一閃、機体を斜めに傾けての回避。

 正直、目の当たりにしていても信じられなかった。 ベリアルのラッシュをこうも簡単に躱す存在を。
 明らかに攻撃の流れを読み切っている挙動にベリアル本人も悔し気に唸る。
 単騎ではまず勝てない相手と断言できる強敵だ。 

 ――だが、今のヨシナリ達は独りではない。

 敵機の回避に合わせてユウヤが散弾砲を叩きこみ、ドローンが出現と同時に砕け散る。
 ドローンを一度に精製できる数は20前後。 クールタイムは10秒前後。
 大型になるとやや遅く、小型はやや速い。

 この距離ならヨシナリとユウヤで全て処理できる。 所要時間は約8秒。
 つまり、約2秒だけ相手の守りを無効化できるのだ。

 ただ、例外が一つ。 腕に連結しているドローンだ。
 あれは機体の腕に軸を合わせた状態で出現させられるようで、直接当てなければ妨害できない。
 切り離す事で追加を精製する事も可能なので二基は確実に精製を許す事となってしまう。

 それともう一点。 ドローンの精製速度だ。 
 サイズが大きければ大きいほどに出現から起動までのタイムラグがある。
 敵機はヨシナリ達の動きを止める意味でも出の早い軽量のドローンを大量に生産しなければならない。

 その結果、破壊を容易としているのだが、たったの2秒を捻り出す為に二人は全力を振り絞っている事。
 
 ――このままでは勝てない。

 時間をかければこちらが削り殺される。 状況の打開には覚悟が必要だ。
 味方は間に合わない。 ここまでくれば勝敗を論ずるのはもはや無意味だ。
 くだらない計算を投げ捨て、目の前の敵を粉砕する事に全てを傾ける。 

 「ベリアル、ユウヤ、次で決めに行く」
 「ふ、面白い。 この死線を越える事で我が闇は更なる領域へと至れるだろう」
 「上等だ。 ――ぶっ潰してやる」

 ベリアルのラッシュに慣れたのか敵機は無駄のない動作で躱し、腕のレーザーで反撃。
 その間にヨシナリは出現したドローンを打ち落とす。 
 バースト射撃ではなく単発で数を減らす。 集中しろ。

 最低でも三秒以上は確保する。 その為に一瞬でも早くドローンを処理するのだ。
 アトルムとクルックスを連射、一つ、二つ、三つ、四つ。
 ユウヤが散弾砲で二つを破壊し、電磁鞭で更に二つを破壊。

 七、八、九、弾が切れたので実弾からエネルギーに切り替える。
 十。 これで半分だが、残りはユウヤが全て破壊している。
 ここまでで七秒。 完璧、次まで三秒もある。

 この時間を最大限に活用するにはワンアクションで仕留める必要があった。 
 敵の回避傾向も掴めている。 
 基本的にあの敵機を操っている者は効率的な戦い方を意識していた。

 最小の動作での回避、攻撃。 ドローンの操作。
 どれを取っても高い合理性が垣間見える。
 
 これだけの人数差の不利を覆す為には必要だったという事もあるが、本質的に無駄を嫌う傾向にある。
 それ以上にヨシナリ達相手だとこれで充分と判断されている可能性もあるが、挙動から侮りの類は感じられない。 つまり、思考から挙動の先読みは出来る。

 ベリアルがここで機体を分身させて左右で挟む。 
 背後を無視して正面の本体にレーザーを撃ち込むがベリアルは上体を横に傾けて回避。
 挙動から本体と分身を即座に見分けたのだろうか? 

 センサーシステムで看破した可能性もあるが、見極めるまでが早すぎる。
 敵機はレーザーを照射したまま銃口を持ち上げて振るわれたユウヤの電磁鞭を切断。 
 ワンアクションであの二人の攻撃を同時に捌くのは凄まじい。 
 
 だが、これで二手。 勝負をかけるのはここだ。
 ヨシナリは推進装置を全開にして突撃。 
 リミッターを解除したホロスコープの加速はこれまでの比ではない。

 流石に想定外だったのか大きな動きで躱そうとしていたが、動きが止まる。
 理由は回避先を狙ったグロウモスのレーザーだ。 
 リカバリは一瞬だったが、それだけあれば充分だった。

 しがみつくように敵機を抱えて地面に叩きつける。 

 ――入った!

 「やっと捕まえたぞ!」

 武器を抜いている暇はない。 エーテルで保護した拳を振り上げてその頭部に向けて振り下ろす。
 腕の動きを封じる関係で抱きしめるように上半身を抱えてしまったのでコックピット部分を狙えない。
 判断をミスったと思ってしまったが、ここまで来るともうやるしかない。
 
 拳が命中する直前に敵機の腹部装甲の一部が展開。 明らかに砲口だ。
 エーテルの鎧の強度を上げて防御。 無傷では済まないが、殴り抜くぐらいの時間は稼げるはずだ。

 レーザーがホロスコープの胸部を撃ち抜き、敵機の頭部に叩きつけた拳が突き刺さった。
 動力部に損傷。 爆発まで秒読みだ。

 ――クソ、またこれに頼る羽目になるのか。

 迷ったのは刹那。
 ヨシナリは自機の損傷を冷静に判断し、道連れにする事を決めた。
 
 「全員、離れろぉ!」

 味方に警告を飛ばした後、駄目押しだと言わんばかりにパンドラの出力を最大にする。
 膨大なエネルギーがホロスコープの全身に行き渡り――臨界に達した。

 次の瞬間、巨大な爆発がフィールドを揺るがした。
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