Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
120 / 786

第120話

しおりを挟む
 カナタとユウヤ。 
 あの二人は元々幼馴染のような関係らしく何かにつけて彼女はユウヤの世話を焼いている様だ。
 今回もその延長の痴話喧嘩に近い物であるのだろうというのがツガルの認識のようだが、ユウヤの様子を近くで見て来た身としては本当にそうなんだろうかと内心で首を傾げる。

 少なくともユウヤは明らかにカナタの事を嫌っていた。
 いや、嫌っているなんて生易しいものじゃない。 憎んでいると言っても過言ではないレベルだ。
 その辺りをツガル達は知っているのだろうか? ヨシナリも付き合いが長い訳ではないのでユウヤの事をなんでも知っているとまでは言えないが、少なくとも友人とはいえSランクのラーガストを巻き込んで見ず知らずのヨシナリの所まで来たのだ。 苦手な相手に対する処置にしては明らかに度が過ぎている。

 状況から察するにカナタはユウヤの事を好意的に見ているであろう事は間違いないが、ユウヤはカナタを酷く嫌っているのだろう。 
 そこでヨシナリは内心で首を傾げる。 何故ここまでの温度差が出るのだろうか?

 カナタもユウヤの態度を見れば自分の事をどう思っているかぐらいは察する事ができるはずだ。
 ――にもかかわらずにそれに気づいている様子はない。
 ちらりと視線を向けるとカナタが何やら口うるさく言ってユウヤが顔を逸らして聞き流している。

 ――これは俺の認識がおかしいのか?

 まさかとは思うがアレはお互い照れ隠し的な感じの奴で本音では思い合っている?
 さっぱりわからない。 ただ、この戦いでカナタを叩き潰せば鬱陶しい勧誘を封じる事ができるといった話もあったので混乱は深まる。
 
 「まぁ、そんな訳でウチのボスは今回賭けをしたんだ」
 「そっちが勝ったらユウヤさんは『栄光』に入る。 こっちが勝ったら勧誘を止めるって感じですか?」
 「あぁ、だからウチのボスは随分と気合を入れてる。 俺としてもAランクプレイヤーが仲間になるのはユニオン的にプラスだから歓迎だ」
 「なるほど」

 言いながらヨシナリはあぁこいつらとはあんまり合わないなと少し思ってしまった。
 人物ではなく戦力だけを見て数に入れる考えは好きではなかったからだ。 ユニオンというシステム上、頭数が居れば有利なのは間違いない。
 極端な話、ユニオンに介護して貰えば自身のランクに見合わない装備を得る事も可能だからだ。

 つまり引き入れる方は稼ぐ頭数が増え、入る方も恩恵が得られるのでどちらにとっても特になる仕組みといえる。 ただ、ヨシナリはそれを窮屈だと思った。
 それを良しとするプレイヤーは多いだろう。 単純に効率だけを考えるなら賢いともいえる。

 ――ただ、それは楽しいのだろうか?

 楽しみ方は十人十色。 人それぞれ、ユニオンというコミュニティの歯車となる事に喜びを見出す者はいるかもしれないし、それを否定する気は欠片もない。
 ただ、ヨシナリにはその生き方は合わないだけの話だ。 何故、ゲームでそこまで使わなくていい気を使わなければならないのだろうか? 疑問は尽きない。

 ヨシナリは楽しむ為にゲームをしているのであって他人との不要な摩擦で自身を研磨したいとは思っていなかった。 だから、マルメルやふわわのような合う奴とだけ組んでいたい。
 その方が気楽で、何より楽しいからだ。 だからカナタのユニオン入りを強制するようなやり方は好きではなかった。 二人の問題ではあるので深入りする気はないが、負けてやるつもりもない。

 ――それに――

 「話は分かりました。 当たったらお手柔らかに頼みますよ」

 ヨシナリは意識してにこやかにそう口にした。

 ――こいつらには借りがある。
 アバターの裏では獰猛な表情を浮かべて本音を隠す。
 やられっぱなしは性に合わない。 特にセンドウには何もさせて貰えなかったという屈辱を与えられたのでここらでその辺りの清算は済ませておきたかった。

 「おう、まぁ、お互い頑張ろーぜ!」

 去っていくツガルの背を見た後、ヨシナリは小さく手を振って思った。

 ――前と同じと思うなよ。 ぶっ潰してやる、と。

 チームメイトが強すぎるので自力で勝つまでは本当の意味での勝利ではないが、イベント戦、予戦と潜り抜けて掴んだ物を活かせているかの試金石には良い相手だ。 自分なりの勝利を手に入れてやる。
 そう強く思いヨシナリは拳を握った。
 

 残ったチームは二百。 
 そのチームが潰し合うトーナメント戦となる。 あの熾烈な潰し合いを生き残った者達だ。
 どこも強いチームなのは間違いないのだが――

 「四回も勝たなきゃならねぇのか面倒だな」
 「あのクソ女。 ぶち殺す」

 チームメイトの二人はもう勝つ前提で話を進めているのでヨシナリとしては割と大きな温度差を感じていた。 最初に当たるチームはユニオン名『カヴァリエーレ』ユニオンランクはⅢ。
 参加メンバーはAランクプレイヤーが一人にBランクが四人、Cランク五人。

 機体は当然のようにAランクは専用機にBは残らずエンジェルタイプ、Cはキマイラだ。
 こういうのって時間置くものじゃないのかなとも思っていたが、もうそのまま一回戦を始めるようだ。
 プレイヤー全員にこれより試合を開始するといったアナウンスが入り早々に機体に乗った状態でフィールドへ移動。 地形は荒野。

 何もない場所なので互いの地力が出る地形といえるだろう。 
 狙撃する場合は遮蔽物が全くないので最悪と言っていい。 加えて人数も少ないので隠れる場所のないここではただの的だ。 

 ――やるしかない、か。

 ここはビビる所じゃない。 相手は数も多い格上。
 予戦で微かに掴んだ何かと格上の戦いを見て得た物を形にするいい機会だ。
 機体の配置は分かり易い。 数十キロ挟んで向かい合う形。

 心の準備をする時間が欲しかったが、さっさと始めろと言わんばかりにカウントダウンが始まる。
 
 「あのー、作戦とかってあります?」
 「適当にやれ」
 「皆殺し」
 
 ラーガストは無責任に、そしてユウヤは明らかに機嫌悪くそう返した。
 カウントゼロ。 その場に居た全ての機体が一斉に動き出した。
 エイコサテトラは推力を全開にして真っすぐに突っ込み、アルフレッドは光学迷彩を使用したのかすっとその姿を消し、プルガトリオ地面を踏み砕く勢いで走り出した。

 ヨシナリはその背を追うように背のブースターを噴かす。 
 相手も応じるように散会。 距離はそこまで離れていないので即座に互いを射程に捉え――
 
 戦いが始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【なろう490万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて490万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき90万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...