Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第138話

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 戦闘開始と同時にフカヤは素早く移動を開始していた。
 目的はヨシナリの処理。 前回、簡単に仕留める事が出来ていたので今回もそう難しくはないだろう。
 ヨシナリのポジションは狙撃手。 大きく動き回らず、一方的に狙う事を信条としている人種だ。
 
 そんな相手はフカヤにとってはカモ以外の何物でもない。
 これまでもその手の敵は簡単に狩ってきた。 狙撃手の処理は非常に簡単で集中し始めたタイミングで仕掛ければいい。 狙撃銃を構え、標的を撃ち抜かんと意識の全てを照準の向こうへと傾けたその瞬間。
 
 それが狙撃手最大の隙にしてフカヤの一撃が必ず入る勝ち確の時間だ。
 光学迷彩を用いて機体の姿を隠し、腕に着いたアンカーを近くのビルに撃ち込んで跳躍。
 彼の機体は音も痕跡すら敵機のセンサーに感じさせずビルからビルへと飛び移る。

 正確な居場所は分かっていないが、移動している間にセンドウが焙り出してくれるのでそこを狙えばいい。
 ちらりと空を見ると噂のSランクがツガル達と交戦を開始した。 この戦いは時間との勝負だ。
 空中とは別でフィールドの中央付近で巨大な衝撃音。 カナタがユウヤとの戦闘を開始した音だ。

 フカヤの役目はさっさとヨシナリを始末し、ラーガストの暗殺を狙う。
 ほぼ確実に失敗するだろうが、見えない敵を意識させる事で集中を散らす事ができる。
 まともにやって勝てないのなら実力以外の部分で差を埋めるしかない。

 正面から実力で叩き潰せるのなら爽快だろう。 フカヤもそんな戦い方ができるのならやってみたい。
 そういった意味ではラーガストというプレイヤーはフカヤの理想を体現しているといえる。
 どんな戦いも正面から敵を圧倒して立ち塞がる全てを叩き潰す。 そのやり方で勝ち続ける事ができるラーガストの事を心の底から羨ましいと思い、それができない自分と比べて劣等感が身を焦がす。

 彼を見れば見るほどにその気持ちは強くなるが内心で首を振ってその考えを追い払う。
 他人は他人、自分は自分だ。 フカヤというプレイヤーには正面から敵と切り結ぶ才はないが、死角から敵を狩り取る才はあった。 それだけの話だ。

 だから、無理にできない事をしようとせずに自分の強みを活かして勝負していけばいい。
 特に今回はチームでの戦闘なのだ。 自身の感情は捨てて勝利のみを求めるべく行動する。
 今はこれで充分だ。 不意に重たい銃声が響く。

 センドウの狙撃だ。 どうやら早々にヨシナリを見つけたらしい。
 フカヤは素早くレーダーで戦場の状況を確認。 ラーガストは空中、ユウヤもカナタと交戦中で大きく動いていない。 例のアルフレッドという支援機がいるはずだが、レーダーに映らないので居場所は不明。

 恐らくはユウヤの支援に回っているはずだ。 このイベント中、ヨシナリの支援に回っているのでその可能性も充分にあるがユウヤの機体は見た所、索敵などをアルフレッドに頼っている傾向にある。
 その為、今回のような負けられない戦いの場合は手放さない可能性が高い。

 つまり、ヨシナリは単騎で狙撃の機会を狙っている。
 前回、手の内を晒しているので奇襲を警戒はしているだろうが、警戒ばかりしている訳には行かない以上は必ず隙はできる。 これはフカヤとヨシナリのある種の我慢比べだ。
 
 狙われるリスクを呑んで敵を仕留める事に専心するか、自身を守る為に周囲を警戒するか。
 それとも何らかの策を練っている? 可能性として高いのは罠。
 センドウが多用している事もあって罠にはそれなりに詳しい。 仕掛ける時のセオリーは頭に入っている。 これは彼女に何度も言われた事だが、狩る側は狩られるといった意識が抜け落ち易いので奇襲に対しての意識が逆に低くなると。 その為、罠に対する警戒も甘くなる。

 フカヤはその辺りを徹底的に叩き込まれただけあって警戒は怠らない。
 センドウの撃ちこんだ辺りに近づくと少し先に見えるビルからエネルギー弾が飛ぶ。
 見つけた。 エネルギー弾は銃声が出ないので比較的、見つかり難いと思われがちだが、発射の際はかなりの光が漏れるので昼間でも割と目立つ。

 弾が飛んでいった高さからビルの中にいる。 なら仕留めるポイントは近くのビル――比較的、背の低いものの屋上が好ましい。 手頃なビルが二つヨシナリがいるであろうビルの斜め前にある。
 フカヤにとって最高の位置だがどうにも胡散臭い。 罠を仕掛けるにもいい位置だからだ。

 開始と同時に移動したので凝った仕掛け方はされていないが引っかかると位置がバレてしまう。
 
 ――まずは罠の有無を確認する所からか。

 上るのは正面から見て左のビル。 器用によじ登り、屋上へ。
 センサーを起動。 迷彩機能との兼ね合いでジェネレーターに負担がかかる装備は併用しないようにしているが少しぐらいは問題ない。 機体の知覚が広がり、目の前に赤外線のトラップが存在する事を示す赤い線。 やはり仕掛けられていた。 

 センドウの真似をしているのだろうが、上っ面だけの模倣は稚拙さすら感じる。
 やはり大した事のない相手だ。 さっさと仕留めて次を――

 「――え?」

 フカヤは不意にそんな間抜けな声を漏らしてしまう。 
 何故ならいつの間にか自身の機体の胸から刃が生えていたからだ。 

 「この前はどうも」

 反応する前に刃が捩じられてコックピット部分が完全に破壊されフカヤの機体は完全に機能を停止した。
 
  
 ――全く同じ手で来やがって、舐めるのも大概にしておけよ。
 
 ヨシナリは胸中でそう呟き、崩れ落ちたフカヤの機体を冷たく一瞥。
 やり口は一回見ているし、これまでの試合での立ち回りも穴が開くほどに見て来た。
 特にフカヤには一度、直接やられたので絶対に返り討ちにしてやろうと心に決めていたのだ。

 ラーガストへの対処に人数を割きたいなら必ず送り込んで来ると思っていた。 
 ちらりとビルを振り返るとそこには三脚で支えられたアノマリーと遠隔発射システムがある。
 以前にふわわに使ったのと同じ手だが、見事に引っかかってくれたようだ。

 罠は仕掛ける時間がなかったので赤外線が出るだけの囮で引っかかっても何も起こらない。
 警戒心が強そうだったので安心させてやれば御覧の通りあっさりと食いついた。
 要は敵の思考を読み切ったと満足させてやればあっさり警戒を解くと考えたのだ。 今回もヨシナリの仕掛けた囮の罠を仕掛けて安心したのを見計らって背後から一突き。

 隠密仕様で装甲も薄いのでエネルギー式のナイフ一本で終わりだ。

 「取り合えず一人」

 ヨシナリは次を仕留めるべく移動を開始した。
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