Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

文字の大きさ
139 / 865

第139話

 ピクリとセンドウの僅かな動揺が機体に伝わる。
 何故ならヨシナリの始末に向かわせたフカヤが返り討ちに遭ったからだ。
 前回は碌な抵抗もないまま撃破に成功したので、味方と完全に切り離した状態なら警戒していたとしてもどうにでもなると判断していたのだが甘かったようだ。

 フカヤがやられた以上はヨシナリを抑えるのは自分の役目となる。
 位置は――掴めていない。 最大望遠でヨシナリが居るであろう場所を見てみると銃しかなかった。
 恐らくは遠隔で引き金を引く仕掛けを施しているのだろう。 居ると見せかけてフカヤを釣り出して逆に仕留めた。 前回の模擬戦からそこまで時間は経っていないにもかかわらずこの対応力。

 どうやら自分はヨシナリの事を過小評価していたようだ。
 センドウは少しだけ反省して意識を集中。 この戦場でこそこそと動き回っているであろう敵機を探す。
 彼女の機体はセンサー類――特に索敵に関してはちょっとしたものだと自負している。
 
 その為、隠れていたとしても何かしらの痕跡さえあれば見つける事は可能だ。
 ちらりと空の戦場へ視線を向けると味方の数が最初の七機から四機にまで減っている。
 ツガルがかなり頑張ってはいるが、完全に時間を稼ぐ事を念頭に置いた戦い方でこれだ。

 全滅は時間の問題と言わざるを得ない。 最初はイワモトが味方を庇いつつといった戦い方を想定していたのだが、そのイワモトが早々に落とされたので破綻したようだ。
 エンジェルタイプは既に全滅。 生き残っているのはキマイラタイプのみ。

 ツガル達も既にBランクに昇格しているので乗り換えは可能ではあったのだが、あえてキマイラタイプで挑んだのには理由があった。 エンジェルタイプは速く、小回りが利くが完全上位互換のエイコサテトラと勝負すれば間違いなく技量だけでなく純粋な性能差で圧倒される。

 それをどうになする為のキマイラタイプでの出撃だ。
 総合的な性能では下位ではあるが、直線加速ではキマイラタイプはエンジェルタイプを凌駕する。
 その強みを以って彼等は最強相手に逃げ回っているという訳だ。

 だからと言ってそれがいつまでも通用する訳がない。
 自分達の役目はカナタが憂いなく戦えるようにする事。 勝てれば最上だが、最悪カナタがユウヤを倒しさえすれば試合自体は負けてもいい。 この大会の目的はAランクプレイヤーユウヤの確保にあるからだ。

 ユウヤ。 プレイヤーとしての実力は非の打ち所がないといえるだろう。
 複雑な機構を積んだ癖のある武器を器用に使いこなし、あらゆる状況に対する柔軟な対応力。
 彼が味方に居る場合、チームとしての総合力は大きく引き上げられるだろう。

 ――ただ、ユウヤが協力的であった場合といった但し書きは付くが。

 センドウの見立てではユウヤは個人主義――要は集団での行動を不得手としているのでチームに組み込んだ所で機能するのかは正直、怪しいと思っていた。
 これは彼女の持論でもあったが突出した個人は士気を上げるのには有用だが、こと集団戦において味方と連動しない場合はチームにとってのノイズでしかない。

 与えられた役割を十全にこなし、役割に徹する事こそが集団戦の鍵だと思っているので本音を言えばユウヤを入れる事に彼女は内心では反対していた。 強い事は認めるが味方にはあまり欲しくない。
 それがセンドウのユウヤに対する考えだった。 表向きの理由はそうだが、表に出さない本音としては密かに妹のように思っているカナタにあそこまで冷たくするユウヤにいい感情を抱けないというのもあったので、二重の意味で彼女はこの戦いにあまり乗り気はしなかったのだ。
 
 だからと言って負けてしまってもいいとも思えない所が悩ましい。
 カナタはどうにもユウヤという人物に酷くご執心だ。 幼馴染が好きなだけなら甘酸っぱい青春の一幕とでも思えばいい。 問題はそれが執着心と呼べるレベルまで拗らせている点だ。

 そう、執着心。 明らかにカナタはユウヤと対等なパートナー関係を築きたいというよりは彼を自分の手元、目の届く範囲に常に入れておきたいといった様子が見て取れる。
 センドウから見てもそれは健全な関係とは言えないが、普段は他人の意見を真面目に聞くカナタがこれに関しては頑なに譲らないのだ。 過去にやんわりと言おうとした事もあったが、反応が読めなさすぎて触れる事を躊躇われて今に至っている。

 ここまで酷くなる前に何か言うべきだっただろうか?
 そんな後悔にも似た疑問はあるが、恐らくは反発されて終わりだろう。
 真に友人、仲間を名乗るなら言うべきだろうといった考えもなくはないが、彼女との関係が拗れる可能性を考えると気軽に実行しようといった気持ちにはなれなかったのだ。
 
 「……はぁ」

 小さく溜息。
 上手く行っても失敗しても一波乱起きるのは確定なので先の事を考えると気持ちが重い。
 嫌な戦いだった。 場合によっては勝った時の方が酷い結果になりかねないのだ。
 あのユウヤが強制的に配下に置かれて笑える訳がない。 そんなストレスを抱えた人間を傍に置く事になるのも気が重い。 だからと言って負けた場合、ユウヤに干渉できなくなったカナタがどんな反応をするのかもあまり想像したくなかった。

 ――どちらにしてもやるしかないのだ。

 不意にセンドウの機体によって拡張された視覚が動く何かを捉えた。
 見つけた。 推進装置を使わずに移動していたので発見が遅れてしまったが、一度見つけてしまえばもう逃がさない。 ヨシナリの機体は目を凝らさないと視認できないようになっていた。

 その理由は全身をすっぽりと覆う布にあった。 周囲の色に合わせている事で視覚的にも見辛いが、様々な探知を妨げる機能を備えた迷彩装備だ。 姿を消すという点では完全ではないが、センサー類から消えるという点においては非常に優れている。 問題としては強度が皆無な点。

 何かに引っ掛けて破ってしまうと途端に効果を失う。
 加えて布越しに何かを見る事は出来ないので主に狙撃手が一歩も動かずに隠れる際には重宝するがそうでないなら邪魔になるというのがセンドウの評価だった。

 罠を仕掛けたりと細かく動き回る彼女のスタイルとは合わないので持ってはいるが使ってはいない装備だった。 ただ、仕様に関しては頭に入っているので何の問題もない。
 待っているだけだと余計な事を考えてしまうので今は戦闘に没頭しよう。

 センドウはそう考え、照準の向こう側に意識を傾けた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ホスト異世界へ行く

REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」 え?勇者? 「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」 ☆★☆★☆ 同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ! 国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!? しかも元の世界へは帰れないと来た。 よし、分かった。 じゃあ俺はおっさんのヒモになる! 銀髪銀目の異世界ホスト。 勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。 この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。 人誑しで情緒不安定。 モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。 そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ! ※注意※ パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。 可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑

局地戦闘機 飛電の栄光と終焉

みにみ
歴史・時代
十四試局戦 後の三菱雷電J2Mとして知られるこの戦闘機は爆撃機用の火星エンジンを搭載したため胴体直径の増加、前方視界不良などが続いたいわば少し残念な機体である この十四試局戦計画に地方の無名メーカーが参加、雷電を超える高性能機が誕生し、零戦の後継として太平洋戦線を駆ける これは設計者、搭乗員の熱く短い6年間を描いた物語だ

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

スーパーのビニール袋で竜を保護した

チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。 見つけ次第、討伐――のはずだった。 だが俺の前に現れたのは、 震える子竜と、役立たず扱いされたスキル―― 「スーパーのビニール袋」。 剣でも炎でもない。 シャカシャカ鳴る、ただの袋。 なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。 討伐か、保護か。 世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。 これは―― ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

森のカフェしっぽっぽ

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
五十代後半の初老――サトルが営むのは、就労支援B型事業所を兼ねた猫カフェ「森のカフェしっぽっぽ」。 一階には利用者が作った木工小物や布雑貨が並び、 猫たち(イチ・きな・トラ・チビ・そして極度の臆病猫ジル)が自由気ままに接客(?)をしている。 しかしこの店には、誰も知らない“もう一つの顔”があった。 地下の倉庫兼店舗は異世界と繋がっている。 ただし、異世界人は地球には来られない。 行き来できるのはサトルだけ。 向こう側には|蜥蜴人族≪リザードマン≫の商人、 頑固な|鉱人族≪ドワーフ≫の職人、 静かな|森人族≪エルフ≫たちがいて、 サトルは彼らから“ちょっとだけ現実を楽にする品”を仕入れている。 仕事に疲れた会社員。 将来に迷う若者。 自信をなくした人。 サトルは客の空気を読み、異世界の商品をさりげなく勧める。 そして、棚の影で震えるジル。 怖がりで、音にびくつき、すぐ隠れる。 それでも店からは逃げない。 その姿が、なぜか人の心を少しだけ軽くする。 これは―― 福祉と商売と猫と異世界が、ゆるく混ざり合う物語。 震えながらでも前に立つ者が、 今日も小さく世界をつなぐ。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。