Intrusion Countermeasure:protective wall

kawa.kei

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第140話

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 装備は狙撃銃。 前の試合まで使っていたエネルギー式ではなく実体弾のみのタイプだ。
 恐らくフカヤを仕留めるのに使ってしまったのだろう。 ヨシナリの機体は油断なくビルの陰から陰へと抜かりなく移動し、確実に距離を詰めてくる。

 ――が、既に捕捉している以上、勝ち筋は見えた。

 センドウはヨシナリの機体を注視しつつ行動を予測する。
 既に彼女の機体が居るビル――前回と同様に一部を破壊して内部に陣取っている――を中心にいくつか罠を仕掛けているのでどれかに引っかかれば勝ちは確定だ。 後は罠に追い込めばいい。

 ビルの陰から飛び出したヨシナリの機体に向けて発砲。 エネルギー式の狙撃銃は小さな反動を機体に伝え、光の弾丸は獲物に喰らいつかんと牙を剥くがヨシナリは察知したのか即座に反応してビルの陰に戻る。
 
 ――いい反応だ。

 前回は完全に頭を押さえて身動きを取れなくしていたのでヨシナリの動きを実際に見るのは初めてだったが、狙撃に対する警戒は怠っておらずどのタイミングで狙われるのかをよく理解している。
 だが、それだけだ。 センドウは狙撃手としてこれまで何人ものプレイヤーを撃ち抜いてきた。

 中には躱すのが上手い者も多くいたが、大抵の相手はしっかりと仕留めている。
 躱すのが上手い程度で自分から逃げられるといった考えは甘い。
 躱すのなら躱せない状況に持って行くだけだ。 ルートを変えてヨシナリが移動を開始。
 
 こちらを狙おうとしていたので撃つ前に先制を取って射撃。
 ヨシナリは慌てて引っ込みつつも移動。 その繰り返しだ。
 確実に距離は詰まっているが、ここまでは予定通り。 しっかりと罠を仕掛けたポイントに追い込んでいる。 後ビル二つ分の距離で罠を仕掛けた場所だ。

 拘束系のトラップは前回見せたので今回はシンプルに地雷。
 一定距離に何かが近づくと爆発するタイプなので殺傷力はやや低いが、動きを止めるだけなら充分だ。
 狙撃銃を構え、深く大きく呼吸。 本気で仕留めるのは地雷に引っかかった瞬間だ。
 
 そうなった瞬間にコックピット部分を撃ち抜いて終わり。 それより早く仕留められるのなら問題はないが精々、十数秒の違いだ。 確実に仕留められるポイントだけは外さなければそれでいい。
 あまり余裕がある状況でもないのでさっさと仕留めてツガル達の援護に回らないと不味い。

 焦りは少しあったが、確実に仕留める事を念頭に置く。
 雑念は捨てて今は目の前の標的のみに意識の全てを傾ける。  
 撃ち込む。 ヨシナリは躱しつつも前へ。 そろそろ位置を特定される頃だろう。 
 
 ビルの裏側からそっと飛び降りて仕掛けた罠の近くへ。 
 センドウの狙撃が途切れたのを隙と捉えたのか撃ち返す気配。
 小さく上を見るとさっきまでセンドウの居た位置を正確に撃ち抜いていた。

 やはり狙撃のセンスは悪くない。 だが、狙撃手との戦闘経験はそこまで多くないのだろう。
 相手が移動する事に対する判断が甘い。 ビルの陰に入り無駄のない動作で狙撃銃を構える。
 位置を考えるなら通るならここ。 やや広い道路ではあるが、さっきまで自分が居た位置を狙う場合は死角となる。 規則正しく呼吸し、意識を集中。 この距離なら外しようがない。

 一撃で仕留める。 先の方で何かが動く気配。 来た。
 ビルの陰から機影が見える。 引き金に指をかけ、じっとその時を待つ。
 地雷はビルの陰から出てすぐだ。 踏まなくても近寄れば起爆するので、飛び出したら即座に爆発するのでそこを撃ち抜く。 さぁ、来い。

 影が動く。 よし、動いた!
 センドウは引き金に指をかけたと同時に機体を大きな衝撃が襲う。 
 
 「――え?」

 自身に何が起こったのか理解する前にセンドウの機体は爆散。 彼女は退場となった。
 


 「――確か狩人は自分が狩られる事を常に意識しなければならないだったか? とんだブーメランだったな」

 ヨシナリは構えていた狙撃銃をすっと持ち上げる。 場所はさっきまでセンドウが陣取っていた狙撃ポイント。 ヨシナリを狙ってビルから降り、無防備に晒している背中を撃ち抜いた。
 ちらりと視線を近くのビルに向けると一機のトルーパーがよじ登って来る。
 
 布ですっぽりと覆った異様な見た目だったが、その機体にヨシナリは小さく手を振って見せると謎の機体は形状を変えて四つ足へ。 その後、体を震わせると布が外れて姿が露わになる。
 アルフレッドだ。 彼の機体は元々キマイラループスタイプのフレームを使用した機体なので当然、人型になれる。 滅多に取らない形状なのでそれを利用させてもらった。

 センドウ達はアルフレッドがユウヤのサポートについている可能性と滅多に人型を取らない点から、あのような囮に使う可能性を完全に失念していたのだ。 成功する可能性は割と高いとヨシナリは思っていた。 最初はじっくりとセンドウの動きを観察。 彼女がどの程度本気でアルフレッドを狙っているかを判断する為だ。 ラーガストへの対処もある上、フカヤがやられた以上、警戒しつつもヨシナリをさっさと仕留めたいはず。 ヨシナリの思った通り、明らかに誘導するような攻撃でアルフレッドを追い込んでいたので、完全に釣れたと確信。 後は確実に決めに行く所を狙って仕留めに行けばいい。

 前回、散々嬲り者にしてくれた借りは返せたので、凄まじく気分が良かった。
 すっきりはしたがまだ標的は残っている。 ツガルだ。
 ここであいつを仕留めれば前回の借りは完全に返せたと言っていい。 

 敗北がなかった事になる訳ではないが、少なくとも自分は決してあの連中に劣っていないと証明はできる。 さてとヨシナリは狙撃銃を空へと向けると残りはツガルともう一機だけとなっていた。
 
 ――いや、ラーガスト強すぎだろ。

 どうなってるんだよと思いつつ、彼の相手に目を向ける。 ツガル達は全力で逃げを打っているからこそ今まで生き残っているが、まともに戦っていたらとっくに全滅だっただろう。 見ている間にもう一機が追い付かれでブレードで両断されて爆散。
 ヨシナリは内心で溜息を吐いた。 これは無理だなと諦めたからだ。

 すっと空のツガルに狙いを付けて一発。 ツガルは咄嗟に回避する。
 やはり反応がいいが、ラーガスト相手にそんな隙を晒せば致命的だ。
 あっと言う間にさっきの機体と同様に追いつかれて両断、撃破となった。 

 「取り合えず片付いたか。 後はどうなるのやら」

 そう呟き、視線を戦場の中央へと向ける。 
 そこでは激しい戦闘の物と思われる衝撃が断続的に響いていた。
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